Yahoo! とソニー不動産が提携 「おうちダイレクト」は脅威になるのか?

ヤフーとソニー不動産が業務提携を行い、両社が共同開発した不動産売買プラットフォーム「おうちダイレクト」のサービスが2015年11月から開始されました。
売主側は仲介手数料がかからず自ら売買価格を設定でき、買主側は売主側に直接質問できるなど、これまでになかった新しい特徴で、両社は「おうち革命、はじまる」というメッセージを打ち出しています。
この新サービスは、これまでの不動産業界のあり方を変える脅威となり得るのでしょうか。

中古住宅市場の活性化を目的とした新サービス

このおうちダイレクトのサービスに先立ち、ヤフーは2015年7月にソニー不動産に18億円の出資を行っています。おうちダイレクトについて、ヤフー側は自社で運営する「Yahoo!不動産」の新サービスとなるコンテンツを、資本・業務提携先であるソニー不動産とともに行うことにしたと説明しています。両社はともに「中古住宅市場の活性化」という目的を共有しており、今回の共同開発へとつながったとされます。
ちなみに、政府は2020年までに中古住宅市場の流通を倍増させるとしており、このサービスは、そうした国策の流れにも沿ったものといえるでしょう。
おうちダイレクトでは、東京都内に中古マンションを所有している売主が自身で物件の売却価格を決定して、無料でサイトに掲載することが可能です。買主側はその情報を無料で閲覧でき、気になった場合はサイトから「買いたいリクエスト」を送信、ソニー不動産の仲介で不動産取引を行うという手順になっています。
これまでの売却物件は、売主が不動産会社に査定を依頼し、その査定額を参考に価格を決めるのが一般的でしたが、おうちダイレクトでは高性能の不動産価格推定エンジンにより、所有物件の推定成約価格が分かるようになっています。

狙いは潜在的な売却需要の掘り起こし

狙いは潜在的な売却需要の掘り起こし
これまで日本の不動産仲介業では、売主と買主のそれぞれから仲介手数料をもらう、「両手取引」が珍しくありませんでした。
しかし、おうちダイレクトの場合、仲介手数料が発生するのは買主側のみです。おうちダイレクトでは、所有物件の説明や宣伝を売主側がサイト上で行うので、売主に対する不動産仲介業者の手間が大幅に少なくなります。従って、買主からの手数料だけでも大丈夫なのだそうです。
また、買主側も、売主側に物件の詳細について直接質問できるため、より詳しい情報に基づいた検討が可能です。ただし、物件の見学から契約までの不動産取引に関しては、ソニー不動産の専門コンサルタントが仲介に入り、買主側には仲介手数料がかかります。
売主にとって、仲介手数料無料というのは魅力的です。そのため、これまで物件の売却を積極的に検討してこなかった、いわゆる「潜在層」がこのサービスを利用する可能性があります。実は、ヤフーとソニー不動産がおうちダイレクトで狙っているのが、こうした「潜在的な物件の売却需要の掘り起こし」です。
これが実現できると、今まで他の不動産仲介サイトに掲載されていなかった物件が、おうちダイレクトには掲載されることになります。これまで市場に出てこなかった物件が、買主の前に現れるということです。また、買主が売主に直接質問できるという利点もあります。
サービス開始当初は、東京都心6区(千代田区、中央区、港区、江東区、品川区、渋谷区)の中古マンションのみの取り扱いでしたが、1月中旬からは売り出し可能エリアが東京23区に拡大、今後の発展が期待されています。

不動産業界内には危機感も

不動産業界内には危機感も
こうした取り組みに関して、既存の不動産業界からは反発をする動きもありました。
おうちダイレクトのサービスが発表される少し前のことですが、大手の不動産会社などが集まる業界団体である不動産流通経営協会(FRK)は、ヤフーがソニー不動産と提携したことで、「情報の中立性を損ねる」という理由から、ヤフーへの物件情報の提供停止を発表しました。
また、おうちダイレクトについて一部の不動産業界の関係者からは、「将来的にこのようなサービスが広がると、自分たちの仕事がなくなってしまうのではないか」と懸念する声も聞かれています。
しかし、このサービスが普及するためには、越えなければならない、いくつもの課題があります。まだ登録されているマンション数が少ないこと、おうちダイレクトの存在やサービスの利用方法が、まだまだ知られていないこと、売主が物件を登録しても売却に至るまでのハードルが高いことなどです。
不動産売買にはさまざまな交渉事や契約条件などがあり、その内容によって、当事者は有利になったり、不利になったりします。そのため、「お金と時間がかかっても従来のサービスの方が安心」と考えるユーザーも少なくありません。こうしたことから、従来の不動産売買市場を刷新するような「脅威」となるまでには、至っていない状況です。
しかし、課題山積とはいえ、おうちダイレクトがこれまでの業界になかった、画期的なサービスであることは間違いないでしょう。今回のサービスについて、「保守的だった日本の不動産業界に一石を投じることになるのでは」という好意的な見方もあります。

まとめ

おうちダイレクトのサービスはこれまでの不動産業界のあり方とは異なるもので、ユーザーにとってメリットもあり、新鮮なサービスと感じられるでしょう。しかし、サービス浸透までには課題も少なくありません。
また、このようなサービスが開始されたからといって、従来の不動産仲介サービスの必要がなくなるわけでもありません。おうちダイレクトのようなサービスと従前の不動産会社のサービスが競争し、最終的にサービスの多様化、質の向上、手数料削減が進むことが、今、一番期待されていることなのかもしれません。