相続税対策に有効なアパート経営において注意すべき点はないの?

アパート経営は相続税対策で有効です。その理由は、相続税の資産評価において、他の資産で保有するよりも不動産で保有したほうが、課税額を低く抑えられるからです。
相続対象となる土地にアパートを建てれば家賃収入が得られる上に、「貸付事業用宅地」として課税評価額を減らし、納める税金を大幅に下げる事が可能です。
しかし、アパート経営は相続税対策で有効なことばかりではなく、注意しなければならない点もあります。今回は、そのような注意点について紹介します。

空室が続くと賃貸物件とみなされない?

冒頭で述べた通りアパート経営が相続税対策で有効なのは、更地や自宅ではなく賃貸不動産で保有すると、建物や土地に対する課税評価額を大幅に下げられるからです。そうしたことから、相続税対策としてアパート経営を始める人が増えています。
賃貸物件にすれば課税評価額を大きく下げることが可能なのですが、空室が一定期間続くと「賃貸していない」とみなされて、こうした減額措置が適用されなくなります。空室期間が続いている場合は注意が必要です。
国税庁は、この空室の考え方として、「アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、『継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる』部分に該当するかどうか」としています。その判断基準は下記通りです。
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか。
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか。
(3)空室の期間、他の用途に供されていないかどうか。
(4)空室の期間が課税時期の前後の例えば1カ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか。
上記の(4)の空室期間を、「1カ月程度である」としている点は、昨今の賃貸相場から見るとかなり厳しい条件だと思われるでしょう。しかし、実務上は単純に期間だけで判定されるわけではなく、「事実関係から総合的に判断」されることになります。
具体的には、
・空室が出た場合に、不動産会社に入居者募集の依頼をしている
・建物について定期的に補修するなど、賃貸をする意図が認められる
・周辺環境が、空室が発生してもすみやかに入居者が決定する状況でない場合
なども含めて判断されます。
ですので、賃貸物件であれば無条件に課税評価額が下がるのではなく、空室になった場合に埋めるための努力が図られるなど、きちんとアパート経営されていることが求められています。

最大の課題は入居率を上げること

最大の課題は入居率を上げること
安定収入を確保するにしても、相続税の課税評価額を下げるにしても、アパート経営の最大の課題は「空室率を下げる」ことに尽きます。
ですので、アパート経営による節税効果は、あくまでも副次的なメリットと考えて安定的に家賃収入を得る堅実な経営ができるかどうかという点が重要です。
投資するアパートを選定する時の最重要ポイントは立地です。郊外や地方で最寄り駅から徒歩15分以上という物件については慎重に検討しましょう。
今後人口が増えていく場所なのか、交通の利便性は改善されるのか、近隣の環境はどうなるのかなども同時に検討して、現在だけでなく将来のことも考えたうえで購入を検討しましょう。
アパート経営に不向きな場所に建設してしまうと、入居者の確保が厳しく相続税の節税効果を得られないばかりか、収支が赤字となり後々苦しむことにもなりかねません。
収益性の検討では、期待できる収益やキャッシュフローに対する借入金の返済割合、物件の稼働率、家賃の下落予想、金利変動などの要素を、総合的に見込んで収支計画を立てることが必要です。

「デットクロス」現象とは

もうひとつの注意点は、新築物件は建設後10~15年を経過した頃から、キャッシュフローが悪化する時期があることです。
これは、建設後10年程度で経費に計上できる減価償却費が減り、さらに借入金の返済のうち経費にできない「元金返済分」が経年とともに大きくなり、手元に残る現金よりも課税所得が多くなることがあるからです。このようにキャッシュフローが逆転してしまう転換点を「デットクロス」と呼びます。

要注意、 ローンの元金返済分は「所得」に含まれる

要注意、 ローンの元金返済分は「所得」に含まれる
補足しますと、アパートローンの返済分はすべて「経費」と考えられがちですが、税務上においては違います。ローン返済分のうち「利息」は経費になりますが、「元金返済分」は経費ではありません。借金を返済した分だけ「財産」が増えていくわけですから、「所得」と捉えられるのです。
つまり、実際のキャッシュフローが100万円だったとしても、アパートローンの元金を200万円分返済していた場合、所得金額は300万円となるのです。ですから、現金収入が100万円しかなかったとしても、所得金額は300万円と判断されて所得税が課税されますので注意してください。

まとめ

ある大家専門の税理士に、不動産投資で失敗している例を尋ねたところ、次のように語っていました。
「節税目的で賃貸経営を初め、黒字化やキャッシュフローの確保をなおざりにしている大家さんの場合、失敗していることが多い」
節税ばかりに重点を置くと、収支計画が甘く、コストを掛け過ぎるなどの放漫経営に陥ってしまう傾向にあるそうです。アパート経営の開始直後はキャッシュフローがプラスで安定していても、デットクロスの地点でマイナスに転じてしまう可能性があるのです。本末転倒にならないように注意しましょう。