アパート経営でのキャッシュフローと注意点

アパート経営におけるキャッシュフローとは、実際に入ってきた家賃からローン返済や賃貸管理費、税金、火災保険料などの経費を差し引いて残る利益を意味します。これはアパート経営の世界でよく目にする「利回り」(表面利回り)とは大きく異なります。
利回りとは、年間の想定家賃収入を投資額で単純に割ったものです。現実の空室率や経費を反映したものではないため、実際のキャッシュフローとは大きくかけ離れてしまうのです。つまり、「利回り10%のアパートが5000万円で買えるなら、年間500万円のキャッシュフローが得られる」と勘違いしてしまうと、大変な損失を招くことにもなります。
ここでは、アパート経営におけるキャッシュフローがどういうものか、また経営上キャッシュフローを考える上での注意点を解説いたします。

利回りとキャッシュフローの違い

利回りにおける想定家賃収入の計算は、「募集家賃×部屋数」で算出されます。つまり、設定した家賃で1年間ずっと満室であった場合の“最大家賃”ということです。しかし実際には、募集した家賃で入居者が決まるとは限らず、多少の値引きがあるのは当然です。また、全室が一斉に満室になることはごく稀です。現実的には、退居後の部屋が一カ月から数カ月の間、空室になるのは避けられません。
また、全額自己資金で購入しない限り、ローンの返済が発生します。賃貸管理費や税金、火災保険料などの経費も差し引いて考えなければなりません。さらには、屋根や外壁の修繕費、エアコンや給湯器の更新費用なども積み立てておく必要があります。
このような経費をすべて差し引いて、残った利益がキャッシュフローです。これを「純利回り」と呼ぶ場合もあります。企業経営において売り上げよりも粗利益や純利益が重視されるように、アパート経営でもいかにキャッシュフローを増やすかが大事です。

税金の落とし穴

税金の落とし穴
次に、キャッシュフローを増やす上で意外な落とし穴になる、税金についての注意点を見てみましょう。アパート経営によって新たな収入が増えるわけですから、所得税も多くなります。しかし、アパート経営の場合、他の副業とは違った注意点があります。

1. ローンの元金返済分は「所得」になる

アパートローンの返済分は全額家賃収入から差し引かれるため経費と考えがちですが、税務上は違います。ローン返済分のうち利息は経費になりますが、元金返済分は経費になりません。借金を返済した分だけあなたの「財産」が増えていくわけですから、「所得」として捉えられるのです。
つまり、実際のキャッシュフローが100万円だったとしても、アパートローンの元金を200万円分返済していた場合、所得金額は300万円となり、100万円しか現金収入がなくても300万円の所得に基づいて所得税が算出されるわけです。

2. 滞納家賃も売り上げ

滞納家賃については、家賃が入ってこなくても「未収金」として売り上げに計上されるので注意してください。50万円の家賃が滞納になっている場合は、50万円の「債権」を持っていることになり、実際に手にした家賃以上の売り上げが計上されてしまうのです。

3. 毎年発生する税金

アパートを取得する際に、不動産取得税や印紙税、登録免許税などの税金や登記費用といった経費が発生するのは広く知られています。
しかし、経営を開始してから毎年発生する税金については、案外無頓着なオーナーが少なくありません。固定資産税や都市計画税、事業規模によっては個人事業税が掛かる場合もあるのです。これらを合計するとかなりの金額になるので、あらかじめ積み立てておかないと後で慌てることになります。
このように、アパート経営では予想以上に税金が掛かることを念頭に、キャッシュフローを正確に算出しておくことが大切です。

生活水準アップの落とし穴

生活水準アップの落とし穴
アパート経営をスタートすると、あなたの口座に毎月コンスタントにお金が振り込まれるようになります。そこからローン返済分や賃貸管理費が引かれると、毎月数万円のお金が手元に残るというケースが多いはずです。
この、数万円という金額が曲者で本当は税金や修繕費用の積み立てに回すべきなのですが、ついつい使ってしまいがちな金額なのです。気が付けば家計の一部に組み込まれてしまい、知らず知らずに生活レベルがアップしているという事態に陥るオーナーが意外と多いのです。
アパート経営のキャッシュフローが生活費に組み込まれてしまうと、アパート経営の余力がなくなってしまいます。まるで伸び切ったゴムのようなもので、空室や家賃の滞納、エアコンの故障などが発生しただけでたちまちゴムは切れ、経営に行き詰ってしまうことにもなりかねません。

キャッシュフローには手を付けない

このような事態を避けるためには、少なくとも最初の投資物件では「キャッシュフローには手を付けない」という心構えが重要です。初めからキャッシュフローなどないものと考え、家計とは別の口座で管理しておくのです。こうしておけば、予想外の税金に慌てたり、想定外の空室や修繕費に悩んだりすることもありません。
そして、キャッシュフローが十分に積み上がったら、第二のアパート投資を行い、ダブルのキャッシュフローを手にするのです。家計に充当するのは2棟目からと考えておけば間違いありません。

まとめ

毎月コンスタントにキャッシュを稼ぎ出してくれるアパート経営。しかし、これは企業で言えば売り上げ、あるいは粗利益でしかありません。
ローン返済の他にも、税金や修繕費用の積み立てといった経費が掛かってくるため、安易にキャッシュフローに手を付けてしまうと、自滅の恐れすらあるのです。初めてアパート経営に挑戦するなら、最初の物件のキャッシュフローには手を付けず、家計とは別の口座で管理するようにしましょう。