黒字で倒産? 不動産投資で注意すべきデットクロスを解説

アパート経営において、家賃収入は不動産所得となります。そのため毎年確定申告を行い、所得税を支払う必要があります。したがって、所得税を支払えるだけのキャッシュの用意が必要となります。
そのため、アパート経営では利益が出ていても、キャッシュが不足して倒産することがあります。いわゆる「黒字倒産」です。アパート経営において黒字倒産が起きる要因の一つに「デットクロス」という事象があります。
今回は、このデットクロスについて詳しく解説していきます。

デットクロスとは

アパート経営におけるデットクロスとは、借入金の返済額が減価償却を上回るようになった状態のことをいいます。アパート購入後の当初は減価償却費が大きく、キャッシュに余裕があります。しかし年数が経つにつれて減価償却ができる額が減少し、資金繰りに窮することになります。
では、このデットクロスはどうして起きるのでしょうか。その要因には、減価償却費と借入金の返済方式の二つが深く関わっているのです。

1. 減価償却費

1. 減価償却費
まず要因の一つは、固定資産(アパートの建物部分と付属設備の部分)の減価償却費の計算方法です。
減価償却費の計算方法には、定額法と定率法の2つの方法があります。
定額法とは、耐用年数の期間中、毎年同一額を減価償却する方法で、定率法とは毎年一定率を減価償却する方法です。
・定額法:固定資産の取得価額 × 定額法の償却率
・定率法:固定資産の未償却残高 × 定率法の償却率
※償却率は、固定資産の耐用年数によって決定します。
※未償却残高とは、固定資産の取得価額から減価償却の累計額(取得してから保有時点までの合計)を差し引いた金額です。

通常、アパートの建物部分は定額法、付属設備の部分は定率法を採用して計算します。例えば、建物部分が1,000万円で定額法の償却率が0.2とした場合、毎年1,000万円×0.2=200万円が減価償却費という経費に計上されます。
また、付属設備が100万円で定率法の償却率が0.5とした場合、1年目は、100万円×0.5=50万円、2年目は、(100万円-50万円)×0.5=25万円、3年目は、(100万円-(50万円+25万円))×0.5=12万5千円と、初期は減価償却費が多く、年数を経過するにつれて少なくなっていきます。
付属設備部分の減価償却費が年々減少することで、計上できる経費は減少し、その一方で利益は増えるので、結果的に所得税が増加するのです。

2. 借入金の返済形式

デットクロスが起きるもう一つの要因は、借入金の返済形式にあります。
通常、アパート物件を購入する際は銀行から借り入れを行います。この借入金の返済形式は「元利均等返済方式」を採ることが多いです。元利均等返済方式は、月々の返済額が一定になるように元金と利息の割合を調整する方式で、借入当初は利息の返済割合が大きくなります。この利息部分は経費として計上できるのです。
このため年数が経過して返済が進むと、利息の割合は少なくなります。利息は、元金の残金に一定の利率を掛けて計算されるからです。利息返済額が減りその割合が少なくなると、今度は元金の返済割合が増加します。元金は経費計上できません
経費にできない元金返済部分が増加して、経費にできる減価償却費よりも金額が大きくなった時、デットクロスが発生します。

キャッシュを残す対策

キャッシュを残す対策
アパート経営を行っている限り、デットクロスは一番気をつけなければならない事象です。そのため、アパート経営をされる方には、長期的な利益とキャッシュフローのシミュレーションを行うことをお勧めいたします。
特別なことがない限り、毎年家賃収入が入るでしょう。しかし、経費は毎年変化します。支出には、必要経費にできるものとできないものがあります。また減価償却費とローンの利息は毎年変わり、当然ですがキャッシュと利益は同じではありません。そう考えると、想像以上にキャッシュは手元に残らないものなのです。
キャッシュを残すためには、納める所得税額を少しでも減らすことが効果的です。そのために必要経費をより多く計上するのが近道でしょう。また、所得税の控除制度も有効活用しましょう。例えば、家族を専従者にして専従者控除受けたり、あるいは、青色申告の特別控除を受けたりすることです。

まとめ

アパート経営を行ううえで気をつけることは、減価償却費の計算方法や借入金の返済方法です。いずれ経費となる利息額よりも元金返済部分が多くなりキャッシュがどんどん減るような状態になること、減価償却費は経費にできますが借入金の元金返済部分は経費にできないことを意識しなくてはなりません。
デットクロスという事象が起きる可能性があることをあらかじめ想定しておきましょう。そして、利益とキャッシュフローのシミュレーションを行い、「黒字倒産」が起きないように対策を練っておくことが大切です。