アベノミクス後の不動産投資の見通しとは?

「金融」「財政」「成長戦略」を経済政策の柱とする「アベノミクス」を2012年12月末から推し進めてきた安倍政権。2015年9月にはアベノミクスの第2ステージとして、GDP(国内総生産)600兆円を目指す「強い経済」、待機児童ゼロや出生率を1.8まで回復させる「子育て支援」、介護離職ゼロなどを目標とする「社会保障」の3つを掲げ、「新3本の矢」と呼ぶべき新たな経済政策を打ち出しています。
今回は、これまでアベノミクスが及ぼした不動産市場への影響を振り返るとともに、アベノミクス後の不動産投資の環境について、その見通しをお伝えします。

アベノミクス効果、不動産市場を活発化

2016年1月29日、中国経済の減速懸念や原油安を背景に、日本銀行は日本の金融政策史上初めてとなるマイナス金利の導入を決定しました。その影響を受け、週明け2月1日の日経平均の終値は、前週末よりも346円93銭高い1万7,865円23銭、また、外国為替市場の円相場は円安方向に振れて1ドル121円台で推移しました。
ところが、2月9日には長期金利の指標となる新発10年物国債の市場利回りが一時マイナス0.035%まで低下となりました。また、2月16日からマイナス金利が実施されると、株安・円高が大幅に進み、2月19日の東京市場の終値は日経平均株価が1万5,967円17銭と、導入発表後の最高値(2月1日)から2,000円近くも下落、また円相場は112円台と、わずか3週間で10円も円高が進むなど、不安定な相場が続いています。
2016年に入ってからの株価急落と急速な円高から、このところは景気減速がささやかれ、アベノミクス効果の薄れを指摘する声もあります。昨年までの日本経済は、明らかに円安・株高・低金利の状態が続き、日銀の金融緩和策によって生まれた資金が不動産市場に流入したことで、不動産投資額が大幅に増加したことは間違いないでしょう。
総合不動産サービス大手のJLLが昨年11月末に発表した「アベノミクスによる日本不動産市場への影響 検証レポート分析」でも、アベノミクスによる大胆な金融政策が行われた2012年末以降、国内の不動産価格はすべてのセクターで堅調に上昇、不動産取引額も急速に増加したと記されています。

企業の設備投資拡大でオフィス市場の投資は今後も活況を維持

企業の設備投資拡大でオフィス市場の投資は今後も活況を維持
先述したJLLの分析レポートでは、オフィスの賃料と利回りの推移についても触れています。
2012年以降、優良ビルの需要が増加した結果、オフィス市場の空室率は3%程度に下がりました。またオフィスの賃料と売買価格も上昇を続け、2015年にはAグレードオフィス(東京都心5区に所在し、面積・建物の高さ・築年数などが一定水準を満たす優良オフィスビル)の賃料は12%、売買価格は41%も上昇。平均利回りは3.8%から3.1%に縮小したことが明らかになりました。つまり、投資マネーが流入し、物件価格が上昇してしまって、割高感が増している状況です。
アベノミクスによる構造改革と規制緩和は、まだまだ不十分です。私たちが実体経済の成長を感じられるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうだとする専門家もいます。それでも実施以降は輸出企業を中心に企業収益が過去最高を記録するなど、景気は回復局面にあると言えるでしょう。
都心部では用地取得が難しいこともあり、物件の供給不足という懸念材料はありますが、企業の設備投資増加やアベノミクスによる継続的な金融緩和政策を背景に、オフィス市場の投資は今後も拡大していくのではないでしょうか。それに伴い、オフィスの賃料も引き続き緩やかに上昇すると考えられます。

ホテル、物流施設などで引き続き投資需要の高まり

ホテル、物流施設などで引き続き投資需要の高まり
一方、オフィス以外の不動産市場はどうでしょうか。
JLLの分析レポートによれば、日本の商業用不動産の投資総額はアベノミクス実施以降拡大の一途をたどっており、2014年には総額4兆7,000億円を記録したと記されています。市場規模は2011年と比べると3倍以上になっています。
日本を訪れる外国人観光客の「爆買い」効果もあり、東京の銀座や表参道の店舗の賃料はアベノミクスが導入されたこの3年間で18%上昇、売買価格にいたっては60%も上昇したことが分かりました。
また、ホテルは訪日客やビジネスマンによる需要増加により、稼働率と1部屋当たりの収入が上昇。投資家の関心を集めたことで、ホテル資産取引件数は右肩上がりの状態です。東京五輪と観光立国政策の進展が見込めることから、引き続きホテルセクターは高い投資需要が期待できます。
この他にも、日本の人口構成の変化を背景に都心部の賃貸住宅、高齢者用施設、地方のショッピングセンター、物流施設も投資需要が見込める案件と言えます。物流施設はオフィスビルや商業施設に比べ上昇幅は小さいものの、物流業務を一括して請け負うサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)とインターネット通販の拡大により、アベノミクス実施以降、賃料は9%、売買価格は36%上昇していますので、今後とも十分な投資利益をもたらすでしょう。

2018年が焦点に! 金融緩和政策縮小のタイミングを見極めるべし

デフレから完全に脱却していない状態で消費税の3%増税に踏み切り、日銀を巻き込んだ異次元の金融緩和を続けるアベノミクスには賛否両論があります。しかし、それでも確かなことは、アベノミクスの実施以降、不動産市場は好調だということです。
安倍首相の任期中はアベノミクスの継続が確実視されています。安倍首相の任期は最長で2018年9月までです。また、日銀の黒田総裁の任期も2018年までです。そう考えると、少なくとも2018年までは政府主導の「低金利・円安・株高」という官製相場が続くと考えられます。
そこで問題となるのが、2018年以降の投資姿勢です。投資家はいつの時点で、この官製相場が崩れるのか、アベノミクスによる金融緩和終了のタイミングを見極める必要があります。
日本の財政赤字は1,300兆円を超え、事実上の日銀の国債購入による金融緩和もそろそろ限界に近づいています。いつまでもマイナス金利を続けるとは思えません。金融緩和もいずれは縮小に転じるでしょう。その時、株式市場や不動産市場に流入していた資金は減り、残念ながら、不動産の投資環境は悪化することになります。その時期を見誤ると、多大な損失を被る可能性がありますので、常に注意を払う必要があります。
ポスト安倍の経済政策が、不動産市場に有利なものになるかどうかは分かりません。しかし、2017年4月に予定されている消費税率10%と、それに伴う軽減税率の問題に安倍政権がどのような決着をつけるのかが、その後の経済・金融政策の行方を占う上で大変重要な指標となるはずです。投資家の方々は、こうした指標を見逃すことなく常にいくつかのシナリオを想定しながら、ご自身の投資計画を見直してその時に備えてください。