横浜市マンション傾斜問題は、なぜ起きてしまったのか?

2015年に住宅関連ニュースで話題となった出来事と言えば、横浜市のマンションで判明した施工不良による建物の傾斜とデータ偽装・改ざん問題ではないでしょうか。業界最大手の不動産会社がデベロッパーであったことや、下請け業者同士の責任のなすり合いなどが話題となり、連日のように報道されました。
いったいなぜ、このようなトラブルは起きてしまったのでしょうか。

元請け業者も自治体も見抜くことができなかった

今回の問題が判明したのは、4棟あるうちの1棟で、渡り廊下のつなぎ目に2cm程度のずれを発見した住民からの報告がきっかけでした。報告を受けて調査を行ったところ、52本あるうちの8本もの杭が支持層である固い地盤に届いていなかったこと、さらに45本の杭の強度が偽装されていることが分かり、ずれが起きていた棟は片側に2.4cmほど傾斜していることが判明しました。
通常、杭を打ち込む作業は、施工管理者がグラフ画面を確認しながら行います。杭が支持層まで到達すると、グラフの波型が右に振れるようになっているため、杭が支持層まで打ちこまれていない場合は、即座に分かるようになっているのです。
施工管理者であった2次下請け会社の男性社員は、そのグラフが書かれたデータを紛失したため、無断で別の棟のデータを使用したと話しています。しかし、紛失してもデータを改ざんする必要性はありません。十分に杭が打ちこまれていないことを隠すため、男性社員が故意に改ざんを行ったのではないかと言われています。
マンションの工事を請け負った元請け業者が設計や杭打ちの本数を指定し、2次下請け業者である旭化成建材に指示していました。そのため本来なら施工が指示通りに行われているかを、元請け会社が確認する必要があったのです。しかし、元請け会社は不正に気付かず、改ざんが行われていたことを見抜くことができませんでした。傾斜問題に関する記者会見の中で「管理が不十分だった」と話しています。
建設局では、建築基準法に基づいた建物の検査を行っていました。今回のマンションも、横浜市内の民間の検査機関が担当していました。建物が完成する前に中間検査も行いましたが、すでに杭が打ちこまれていたため、杭が支持層に達しているかどうかを確認することはできないようになっていました。また、市へは建築概要書を提出する必要がありますが、建物の概要を記載するものであるため、杭の打ち込み不足を把握することはできませんでした。
今回のケースは住民からの報告により判明しましたが、渡り廊下のつなぎ目の傾斜のような目に見える不具合が起こっていなかったとしたら、建物の傾斜もわずかなために気が付かず、問題が発覚していなかったかもしれません。

下請け業者に強いられた負担が背景に?

下請け業者に強いられた負担が背景に?
傾斜問題が起きたマンションの建設には、デベロッパー、元請けの建設会社、現場の進捗確認などを行っていた1次下請け業者、杭打ちを担当した2次下請け会社の4つの会社が関与していました。
デベロッパーにとって、マンション分譲事業ビジネスの利幅は薄く、業界最大手の企業であってもできる限りの利益を得るため、建設費を節約していたことが考えられます。その結果、下請け会社に負担を強いることにつながってしまったのではないでしょうか。
もちろん、杭の長さが足りないまま作業を進めることや、データの改ざんを行うことはあってはならないことですが、杭の追加発注を行うと工期が延びることになり、余分なコストも発生します。今回の基礎工事の工期は約60日間と、特に短い期間ではありませんでしたが、強く主張しにくい立場に置かれていた2次下請け業者が、杭の長さが足りないことに気が付いていたにも関わらず、1次下請け業者に言い出せなかったということも考えられます。
また、元請け会社は杭の施工の一部にしか立ち会っていませんでした。元請け・下請け業者同士で連携を取りながら工事を進めていくというよりも、「限られた予算内で完成予定に間に合わせる」ということが最優先されてしまい、今回の傾斜問題が起きてしまった可能性もあります。

まとめ

傾斜が判明したマンションの建て替えには、少なくとも3年以上の期間がかかると言われています。マンションには小さな子どもを含むファミリー層や年配の夫婦など、幅広い年代の人々が住んでいました。マンションが完成するまでは別の場所に移らざるを得ず、多くの人の生活に長期的な負担をかける結果となっています。
今後、同じような問題を起こさないためには、一つ一つの工程のチェックや、杭の打ち込みに元請け業者が立ち会うなど、元請け会社と下請け業者同士も連携を取ること必要になるでしょう。今回の傾斜問題を受けて、今後は現場での確認や監督方法についても法改正が行われる可能性があります。