経済指標の比較に見る、「土地神話」が信じられていた時代と現在との違い

不動産投資を既に行われている方はもちろん、現在、投資を検討中の方や自宅の購入を考えている方にとって、今後の不動産価格の動向は大変に関心の高いテーマかと思います。
もちろん、今後の不動産価格の動向を、完全に予測ができるような人はどこにもいません。私たちは皆、公的機関や金融機関などによる様々な調査結果や発表指数などを参考にして、予測することになります。
不動産価格の動向を調べる際に参考になるのが、一般財団法人日本不動産研究所が発表する「市街地価格指数」でしょう。これは全国の宅地価格を用途別に指数化して、どのように推移してきたのかがわかる指標です。
今回は、この指標における最新版の調査結果の内容とともに、いわゆる「土地神話」が信じられていたバブル期との比較も行いたいと思います。

市街地価格指数とは?

まず、「市街地価格指数」がどのような指標なのかをご説明しましょう。

・指標の概要

一般財団法人日本不動産研究所が、全国223都市を調査し、商業地・住宅地・工業地の用途別に宅地価格を指数で表した指標です。
年に2回、3月末と9月末に発表されます。宅地価格の推移を表す非常に優れた指標だと言えるでしょう。ただし、各地の地価の絶対水準を示すものではなく、都市ごとの比較はできません。
現在は平成12年3月末時点の指数を100としています。

・指標の入手方法

市街地価格指数については、誰でも調査することが可能です。
日本不動産研究所が販売する刊行物(税込510円)を購入するか、図書館などで閲覧することができます。また、日本不動産研究所の無料WEB会員に登録すれば、インターネットからでも調べることが可能です。
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直近の調査結果

直近の調査結果
ここで、同研究所の直近の調査結果である「第149回市街地価格指数(平成27年9月末現在) 」について概要をご説明しましょう。

1. 全国の地価動向

調査時点での景気は緩やかな回復基調が続いているため、都市部を中心に商業地の需要は堅調で、地価も上昇傾向が続いています。しかし、地方では人口減や高齢化のなどの影響もあり、下落幅は縮小しているものの地価下落が継続しています。
結果として全国の全用途平均では、前期比0.3%の下落となりました。しかし、前回の調査(2015年3月)では前期比0.4%の下落でしたので、下落幅は縮小しています。

2. 地方別の地価動向

関東地方は、前回調査の「横ばい」からプラスに転じています。また、他の地方は全体的に下落傾向が続いていますが、北陸新幹線開通の影響から北陸地方では新幹線停車駅周辺などで上昇する地域もありました。

3. 三大都市圏別の地価動向

三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)に限ると、基本的にほとんどの地域で地価は上昇しており、また、上昇幅も若干ですが広がっています。特に、近年の外国人観光客の増加により、繁華性の高まりが評価され、投資市場からの資金供給が増加したことなどが理由と考えられます。
例えば、最高地価を記録した「銀座四丁目交差点」付近では、地価は「6,400万円/平方メートル前後」とされており、これは訪日外国人による銀座での消費が特に活発で、好立地の路面店を中心に賃貸需要が強い状況が続いたためとされています。

4. 今後の見通し

全国的には、おおむね今回と同程度の地価動向が継続すると予想されています。三大都市圏などについては、高い投資ニーズが持続し今後も上昇傾向との予想ですが、既に投資利回りが圧縮されるレベルにあるため、上昇幅は縮小する可能性が高いとされています。

土地神話が信じられていた時代との比較

土地神話が信じられていた時代との比較
「市街地価格指数調査結果」では、過去30年間にわたる市街地価格指数の変遷も知ることができます。これによると、「全国」で見た市街地価格指数は1991~1992年にピークを迎え、その後大きく下落に転じて、現在まで下がり続けています。特に商業地に関しては、ピーク時の指数は190を超えていたのが、現在は40を少し超えるという程度です。
日本のバブル経済は、1980年代後半から1992年ごろまでが最盛期とされています。全国で見た市街地価格指数が1992年でピークアウトしていることから、バブル崩壊まで日本では、いわゆる「土地神話」が、いかに強く信じられていたかがうかがえます。
そもそも土地神話とは、「不動産は買えば必ず値上がりする」「不動産には絶対の価値がある」という合理的根拠のないものです。ところが、多くの人が疑いなく信じているという事態が、その時代は実際に土地の価格を押し上げていたのです。一種のバブル状態です。
バブルによって不動産価格は上がりました。土地が担保になれば、銀行は積極的に融資を行います。融資を受けた人は、その資金でさらに不動産投資を行います。これによって不動産はさらに値を上げます。しかし、値上がりした不動産の価格は、そもそも実需を反映しているわけではありませんから、やがて限界がきます。結果、バブルは崩壊し、売却益(キャピタルゲイン)を狙って購入した不動産の価格は暴落。積み上がった膨大な不良債権によって、銀行の経営は急激に悪化しました。日本は長期の不況、「失われた10年」に突入するのです。
では、現在の都市部を中心とした地価の上昇はバブルと言えるのでしょうか?
東京の都心部や大阪の中心部では、価格の上昇が「加熱」していると言えますが、2020年の東京オリンピック終了後に、地価の下落を予想する人は少なくありません。
現状の地価の高騰は全国的な動向ではありません。上述の新幹線停車駅周辺や外国人観光客の増加している銀座など、投資需要が高い三大都市圏の一部の土地に限られています。不動産価格の上昇は、売却益(キャピタルゲイン)を狙った投資よりも、家賃収入(インカムゲイン)を狙った長期投資に後押しされていると考えられます。
もちろん土地価格の動向に「絶対」はなく、不動産投資も「投資」である以上、損をするリスクは免れませんから、油断をして良いわけではありません。しかし、土地神話が信じられていた時代の地価高騰と、現在の地価高騰は同じではないと言って良いのではないでしょうか。