2016年の不動産投資事情を大予想

都市銀行や地方銀行などの金融機関が日銀の当座預金に預金をすると、その残高に応じて0.1%が徴収される「マイナス金利」。金融機関の資金が企業や家計向けの融資に振り向けられることを期待して、日銀が2016年1月29日に導入を決定し、2月16日に実施されました。
現在の株式市場、為替市場は乱高下を繰り返すボラティリティの高い状態にあります。不安定な市場が不動産投資に与える影響も気になるところです。
本記事では2016年の不動産投資の展望を予測しながら、マイナス金利が不動産投資に与える影響についても考えてみたいと思います。

2016年 − 中古マンションの人気は転換点を迎える

不動産業者間の物件登録システム(レインズ)が、1月21日に発表した首都圏における2015年1月~12月の不動産市場の動向によれば、中古マンション、戸建てともに成約件数・価格は前年を上回りました。
また、中古マンションの成約平方メートル単価も2013 年1~3 月期から12 四半期連続で前年同期を上回っていることが分かりました。
首都圏の中古マンションに人気が集まっている背景には、新築物件をマーケットに供給できないという事情が関係していると考えられます。
労務費・建築資材・地価のトリプル高で、新築物件の価格は上昇せざるを得ない状態にありますが、個人の購買力がついてこないため強気な価格設定ができず、新築物件が品薄になっているのです。
とは言え、需要が高いとされる中古マンションの価格にも微妙な変化が表れています。
先のレインズの資料を見てみると、2014年4~6月期から、成約物件の価格が新規に登録された物件の価格を上回る状態が続いていましたが、2015年7~9月からはこの状態が反転して成約物件の価格が頭打ちとなり、中古マンションの価格上昇にも終焉の兆しが出始めているようなのです。
成約数は減ってはいないものの、新規登録の物件がそれを上回る勢いで増加しているため、在庫数は増加の一途をたどっています。
ただし、中古マンションの価格上昇は、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区の一等地や武蔵小杉など、街に付加価値があるエリアに限られているため、今後購入する場合は資産価値が落ちにくく利回りが低すぎない、割安感のある物件を見定める必要がありそうです。

気になる2016年の不動産市況は?

気になる2016年の不動産市況は?
ここからは、金融市場の動向も含め、2016年の不動産市況を考えてみたいと思います。日銀が2月16日から実施している「マイナス金利」ですが、不動産投資にはどのような影響が考えられるのでしょうか?
マイナス金利が発表された後、債券市場では2月9日に長期金利の指標となる10年物国債の市場利回りが一時、マイナスを記録しました。長期金利は、住宅ローンの金利に大きな影響を与える指標です。
実際にメガバンクなどでは固定金利や変動金利の引き下げを行っており、3月には各銀行の住宅ローン金利は過去最低を更新すると見られています。

気になる地銀、信金の不動産投資への融資姿勢

では、マイナス金利は不動産投資にどう働くでしょうか? 結論を先にお伝えすると、マイナス金利は、不動産投資家にとって、資金調達環境の改善に働く可能性が非常に高いです。
個人の不動産投資家が注目すべき点は、マイナス金利政策の実施で、地銀や信金の不動産投資の融資姿勢や、貸出金利の水準に変化があるかどうかという点でしょう。2月末現在ではそういう現象が確認できていないので断定することはできませんが、大胆に推測してみたいと思います。
都銀に比べ自己資金比率や優良な貸出先企業が少ない地銀や信金は、マイナス金利によって、経営が圧迫されます。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の試算によれば、マイナス金利によって地銀の業務純益は、2016年度に15%減ると推計されています。大手の都銀でも8%減るとされますが、その2倍です。
都銀以上に、シビアに貸付先や運用先の選定、変更が求められているのです。これにより、担保が取れる(回収が見込める)融資先の不動産投資に対する貸付が進むようにも思いますが、すでに「過熱感」のある分野なので、そう簡単に進む訳でもなさそうです。
実際、2015年11月末には、金融庁が地銀や信金に対して、適切なリスク管理がされているかどうかのヒアリングを行い、不動産をはじめとする融資などの監視の強化に乗り出したという報道が出ています。
もともと地銀・信金の不動産業向け融資が増加した背景には、2015年1月から実施された相続税の増税が影響しています。
通信社のWEBサイトでは、「借入金で不動産を購入すれば資産家は相続税を抑えられるため、地方の県庁所在市を中心に『相続税対策で賃貸用のアパートやマンションを建設するニーズが増えている』(有力地銀)という。
また、日銀の大規模金融緩和で超低金利が続く中、利ざやを稼げる有望な貸出先が少ないことも、地銀を不動産向け融資に走らせる要因になっている。」と報じられました。(2015年11月28日 時事通信ドットコム 「不動産向け融資、バブル期並み=金融庁、地銀の監視強化」より)

地銀、信金で不動産投資に積極的になる可能性も

地銀、信金で不動産投資に積極的になる可能性も
こうした金融庁の監視の強化に、どれだけ地銀や信金が従うかという面もあると思います。
前述の通り、日銀のマイナス金利導入後の長期金利の低下で大手行をはじめ住宅ローンは引き下げられる方向に働いており、その一方で一部の信金では、マイナス金利後にあえて預金金利を引き上げ、預金者の獲得に乗り出したところもあります。
2015年の相続税の増税で、アパートローンへの融資が加速した経緯やマイナス金利後の地銀の動きを見ると、やはり、地銀、信金、ネットバンクなどでは、不動産投資への融資姿勢を積極化させるところも出てくるでしょう。
また、貸付金利を引き下げるかどうかも気になりますが、アパートローンへの融資の場合、対象物件や投資家の属性による個別性が高く、住宅ローンの適用金利のように一律に低い金利が設定されるわけではないので、過度に期待をすべきではないでしょう。
さらなる金融緩和で増えた資金の一部が、地方都市の優良エリアの不動産市場に流れ込み、局所的な地価上昇につながる可能性も考えられます。不動産投資を検討されている方は、その点にも注意する必要があります。
首都圏と地方の市場ごとに多少の価格の上下はあるにせよ、2016年の不動産市場は全体的としては、現状維持か一部では上昇基調を維持する見通しです。中には、「今が売り時」という判断をする不動産投資家もいるでしょうから、売り買いが交錯する場面もあるでしょう。
マイナス金利の導入後は、一部の地銀、信金、ネットバンクなどが、不動産に対して積極的な姿勢で融資する可能性があります。不動産投資を始める方や資産組み替えを検討されている方にとっては、資金調達の環境が改善される年となる可能性が非常に高いと思われます。