自宅併用型賃貸住宅から学ぶ相続対策

2015年1月に施行された改正相続税法を受けて、広い土地に建てられた古い住宅の場合、自宅の一部を賃貸にしようと建て替えを検討される方が増えているそうです。特に今、「自宅併用型賃貸住宅(または賃貸併用型住宅)」が注目されています。

自宅併用型賃貸住宅とは?

「自宅併用型賃貸住宅(以下併用型)」とは、物件の大部分が賃貸であるものの、一部を土地所有者(以下オーナー)の居住部分にするというものです。1階(最低層階)、もしくは最上階を自宅にするオーナーが多くみられます。
併用型のメリットは、もちろん「家賃収入があること」です。ただ単に自宅を建て替えるだけでは、当然ですが家賃収入はまったくありません。しかし、併用型ならば借主さえいれば定期的に家賃収入を得ることができます。
また、自宅併用型賃貸住宅を建てる場合、住宅の床面積が50平方メートル以上であり居住用部分が50%以上あれば、住宅ローンが組めることも大きなメリットと言えるでしょう。不動産投資ローンよりも、住宅ローンは金利が低く住宅ローン控除や青色申告の特別控除が受けられるなど、税制上様々な控除の対象となり家計のキャッシュフローを改善するというメリットがあります。

賃貸物件の「相続対策」としてのメリット

賃貸物件の「相続対策」としてのメリット
併用型に限らず、賃貸経営で発生する家賃は「相続対策」にもなり得ます。
不動産の名義を複数の相続人に分けて「共有」する方もいますが、専門家の立場からするとあまりお勧めできません。なぜならば、土地はともかくとして建物は修繕のタイミングや売却などは、その都度「判断」が必要になってきます。このときに所有者が複数存在すると意見が食い違うことがあり、「争続」に発展してしまうケースが多くみられるのです。
お勧めの方法としては、相続が発生する前から賃貸経営を長期間続けて現金を蓄えておき、生活費は別に積み立てておきます。いざ相続するときには、相続人Aには不動産の所有権を、相続人Bには賃貸経営で準備した現金を、とそれぞれ相続させます。つまり、不動産と現金で財産を均等配分とし、相続を円滑に終わらせるのです。
特に日本の地主さんは、「不動産はあるけれど、現金の準備がない」方が多いようです。賃貸経営は、長い目で見て、賢い相続対策になると言えるでしょう。

自宅併用型賃貸住宅のデメリット

自宅から併用型へと建て替える際、建築費は高額になります。アパート経営では、金融機関などから「アパートローン」を借りてアパートを建築し、毎月の家賃収入の中からローンを返済していきます。この時、家賃収入から返済額を引いた金額が、毎月手元に残る収入です。その一方で、居住用住宅の場合はアパート経営ほど家賃収入がありません。住宅ローンの返済は、常に家計からキャッシュが出ていくことを意味しています。初期投資が高くても、「不動産の資産運用」としては賃貸アパートよりも併用型のデメリットが強く感じられるかもしれません。

自宅併用型賃貸住宅と、一般的な賃貸アパートの違い

自宅併用型賃貸住宅と、一般的な賃貸アパートの違い
併用型と一般的な賃貸アパートを比較したとき、その他の違いは何でしょうか?
賃貸アパートの場合、物件管理を「管理会社」に頼むオーナーが多いでしょう。管理会社を入れると「オーナーのすることが無くなる」と思いがちですが、入居申請の可否や、建物の経年劣化による修繕など、オーナーの「すべきこと」はあるのです。
自宅と賃貸部分が一緒になっている併用型はとても便利で、賃貸部分の修繕が必要なときは、同時に自宅の修繕を兼ねる場合が多く、まさに一石二鳥です。
また、「居住者の顔が見える」点も併用型の魅力でしょう。管理会社に委託すると、「所有している物件にどんな人が住んでいるのか」が分かりません。しかし、併用型なら顔を合わせることも多く、おのずと繋がりができます。中にはオーナーと居住者というよりも、「家族」のような深い付き合いをしている方もいるようです。
「顔を合わせるのはちょっと…」という方は、玄関を別にしたり居住部分の玄関も賃貸物件の玄関も同じようにしたりして、どこがオーナーの自宅か分からなくする方法をお勧めします。これならば、お互い生活への干渉を気にせずに暮らすことが可能です。
併用型の場合、当然のことながら賃貸できる部屋数が減るので、一般的な賃貸アパートよりも家賃収入が減ります。不動産会社や建築会社は建て替えの際に、「利回り(年間家賃額/投資額)」を土地活用の目安として提示しますが、この利回りだけを見るとメリットが低く感じ「併用型は損だ」と考えるオーナーも多いようです。
しかし、併用型には、低い利回りの裏に隠されたメリットがあるのです。その代表的なものが固定資産税です。自宅と別に賃貸物件を所有している場合、それぞれに固定資産税が課されます。しかし併用型の場合は、自宅も賃貸部分も「一つの物件」として計算されるため、土地への固定資産税が軽減されます。ですので、利回りだけで単純に比較するのは、実は正確ではありません。

まとめ

現在、約820万戸にも上る空き家が大きな問題になっています。併せて大きな社会問題になっているのが、「実家の相続」です。いずれ実家のあった土地に「家を建てて移り住む」という選択肢を検討されている方も少なくないでしょう。そんな方は、ぜひ「自宅併用型賃貸住宅」について研究してみてください。良いアイデアが浮かぶかもしれません。