米大統領候補、トランプ氏はいかにして不動産王になったのか

2015年6月に大統領選挙への出馬を表明したことでも話題となった実業家のドナルド・トランプ氏。2016年2月に行われたニューハンプシャー州予備選挙では、共和党員から高い支持を集め、候補者選びで勝利を収めました。
そんなトランプ氏は以前から世界屈指の不動産実業家として知られ、長者番付に何度も名を連ねた人物です。いったい彼はどのようにして、現在の「アメリカの不動産王」と呼ばれる地位に上りつめたのでしょうか。

父親とは対照的なビジネス手法 スケールの大きな不動産ビジネス

トランプ氏は不動産関係の学科がある名門・ペンシルバニア大学に進学。卒業後、同大学院に進んでMBAを取得、父親の経営する中低所得層向けの不動産会社「エリザベス・トランプ・アンド・サン(現トランプ・オーガナイゼーション)」に入社しました。そこで不動産投資関連の知識を身に付けるとともに、その経験を中流・上流層向けのホテルやオフィスビル、商業施設などの経営に活かし、大成功を収めました。
ドナルド・トランプ氏の父親は不動産開発業を行っていた人物です。父親が堅実な不動産ビジネスを行っていたのとは対照的に、トランプ氏はスケールの大きな不動産ビジネスを好みました。
現在、彼の名前がつけられ、高級ホテルのオーナーシップを提供する「トランプ・タワー・ワイキキ」や、ゴルフコース「トランプ・ナショナルGCロサンゼルス」などの共同事業やライセンス契約なども含めて、世界中に彼の不動産や商業施設があります。ニューヨークの五番街に建つ高層ビル「トランプ・ワールド・タワー」の家賃は月650万円ともいわれており、世界で活躍するスポーツ選手や有名人が多く暮らしています。

商業用ビルなどの大規模な賃貸業をメインに

商業用ビルなどの大規模な賃貸業をメインに
トランプ氏は、郊外やアクセスの悪い場所などには物件を所有せず、アメリカのラスベガスやニューヨーク、ワイキキ、アトランティックシティなど、いわゆる超都心や観光地などの好立地に不動産を建設・所有しています。
中古ではなく新築の物件がほとんどで、住居用以外にもオフィスビルなどの商業用物件を多数所有しています。トランプ氏同様、都心に新築物件を建設・所有する傾向は、日本国内の大手不動産会社にも見られます。
アクセスが良く新築という好条件の物件は、郊外の中古物件に比べて入居率が高くなり、収益性が安定しやすい傾向にあります。また、都心の物件は郊外の物件に比べて賃料も高めに設定されているため、入居を希望する会社や住人も、上場企業や高所得者が集まりやすいというメリットがあります。
もちろん、都心で新築物件を建築・所有するためのハードルは高く、好立地の土地を購入するためには、土地の購入や更地にするための費用、建築を行うための費用など、並々ならぬ資金力が必要です。
そうした「好立地・新築・商業用を含む大規模な物件」に対して、トランプ氏がその莫大な資金を投じて積極的に投資・開発が行ってこられたのは、これまでに開発してきた不動産が、それだけ大きな利益を生みだしてきたからです。

常に最悪の状態を見越し、計画は複数パターン用意

常に最悪の状態を見越し、計画は複数パターン用意
不動産で大成功しているイメージの強いトランプ氏ですが、1990年代には子会社の経営破たんなど、苦境に立たされた時期もありました。しかし、1990年代後半に不動産ブームが再び起きたことで復活し、現在まで活躍しています。
大胆不敵に思えるトランプ氏ですが、その不動産取引に臨む姿勢は意外にも慎重です。不動産取引に対し「常に最悪を予想して取引に臨む」と彼は話しています。
また、トランプ氏の収入の多くは不動産業から得ているものですが、「ライセンス事業」も彼のビジネスを支える事業のひとつとなっています。建設会社などとライセンス契約を結んで「トランプ」ブランドを提供し、その売り上げから一定のライセンス料を受け取っています。
不動産投資を行うにあたって、事前に情報収集や分析などを徹底的に行いますが、それでもすべて予測通りに進むかどうかはわかりません。トランプ氏は「ひとつの取引に臨む場合、成功させるための計画をひとつではなく、5~6パターン用意しておく」という趣旨の発言をしています。リスクを最大限考慮した上で、入念に複数の計画を練り、取引に臨んでいるのです。

まとめ

不動産王として名を馳せ、その豪快な行動や発言などから、昔からよくも悪くも注目されることの多かったドナルド・トランプ氏。大統領選の行方はまだわかりません。人々の不満を代弁するかのような発言は様々な方面から批判を受けているものの、米国の有権者の一部には確実に受け入れられており、彼を支持している人も少なくありません。
不動産事業に関していえば、綿密に計画を立て常に最悪の状態を考えながら、計算されたビジネスを行っています。不動産投資家にとって、トランプ氏の考え方や手法は、参考にすべき点も多いのではないでしょうか。