2020年に不動産投資市場は30兆円? 国土交通省が掲げる成長戦略とは?

日銀の金融緩和策が実施される中、不動産需要は堅調に推移しています。国土交通省主催の「不動産投資市場政策懇談会」が2016年3月に行われ、2020年までに不動産投資市場を、現在の倍近い30兆円に拡大することを目標とする成長戦略をまとめました。
今回は、その懇談会が発表した「不動産投資市場の成長戦略 ~2020年に向けた成長目標と具体的取組~」をもとに、どのような取り組みが提言されているのか具体的に解説してみましょう。

観光や国際ビジネスなど、成長分野の不動産投資を促進

東京は、世界の都市総合力ランキング(都市戦略研究所)で第4位と、アジアの中ではトップに位置しています。しかし国際ビジネス都市として日本は、アジアの中でもトップとはいえません。国を挙げて数多くの国際会議などを開催し、2016年の世界銀行グループ「ビジネス環境ランキング」で総合ランキング1位を獲得しているシンガポールや、物流・通信インフラや都市への移動手段など、世界トップクラスのビジネスインフラが整っている香港などに比べると、まだまだ遅れを取っていることが課題とされています。そこで、高品質のオフィスや住宅などの不動産ストックを形成することで、東京などを世界に通用する国際都市へ成長させることを目標としています。
また、訪日観光客の急増は、日本経済復興の大きな柱の一つとなっています。訪日外国人旅行者数は、2012年には836万人でしたが、2015年には過去最高の1,974万人に達しており、2016年の3月末に政府は従来の目標から大幅に上積みし、2020年に4,000万人、2030年には6,000万人に増やす新目標を決めました。そのためには都市部のみならず地方なども含め、全国の宿泊施設の質的向上と量的拡大が課題となっています。
さらには観光や国際ビジネスのほか、大型物流施設や高齢者向けのヘルスケア施設などの成長分野において、REIT(投資家から資金を集めて不動産を運用し、得られた賃料収入などを投資家に分配する金融商品)による施設取得支援を広げていき、REITの保有物件が広く認識されるよう、施設の性能に関する情報の見える化などを推進するとしています。

個人所有不動産の活用を推進

日本国内では、世帯で所有する住宅・宅地資産が総額1,000兆円を超えますが、約半分以上は60歳以上の高齢世帯が保有しています。また、賃貸用不動産の保有割合も、高齢世帯ほど高い傾向にあります。
所有者が高齢になると、入院や施設入所など住む場所などに変化が現れます。その結果、空き家が増え管理状態の行き届かない物件が増える傾向にあります。
そのため具体的な取り組みの一つとして、所有者が元気なうちに不動産の適切な管理・活用方法を整える取り組みを計画しています。
その他、耐震化や環境改修、不動産再生促進のために、不動産特定共同事業を充実させることや、PRE(公的不動産)やCRE(企業不動産)などの活用も推進していきます。

不動産インバウンド投資を促進

日本の不動産投資市場における海外投資家の存在が年々大きくなっています。J-REIT市場で海外投資家は投資口ベースで23%、売買シェアで50%前後を占めており、市場の成長と価格形成に大きな影響を及ぼしているのです。また、海外投資家による東京などの大型不動産に対する投資が進むなど、日本の不動産投資市場への関心が高まっています。しかし、日本の不動産に対する情報、知識不足といった状況も、まだまだ見受けられるため、海外投資家向けの情報の充実をはかり、海外への情報発信を強化することを目指します。
そして、日本の不動産事業者と現地企業が連携して、REITによる海外不動産取得の円滑化を図るとともに、機関投資家などによる日本国内へのインバウンド投資の拡大を促す方針です。

地域創生に向けた空き家などの不動産ストックの再生

全国の空き家総数は、2013年時点で約820万戸と住宅数全体の13.5%に及び、特に地方では大きな問題となっています。これまで空き家や空き店舗などを再生させる取り組みは、一部事業者によって行われていたため、小規模にとどまり、プロの投資家から多くの資金調達を図ることは難しい状況にありました。
しかし、近年ではインターネットによるクラウドファンディング(新規・成長企業などと資金提供者をインターネットで結び、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組み)が注目されており、不動産投資市場においても、投資型クラウドファンディングの拡大や、そうした資金を活用して地域の空き家・空き店舗などを再生する「ふるさと再生投資」事業の整備などが進められています。

IT技術を活用したReal Estate Techの発展を支える

不動産ビジネスにIT 技術を活用した「Real Estate Tech」が世界に広まっており、日本でも不動産売買サイトや不動産価格の査定サービスなど、新しいサービスが生まれています。国内のReal Estate Techの発展により、ユーザーの利便性が向上し、空き家対策などにもつながると見られています。
また、不動産市場の成長や透明性向上などに向けて、国が提供する不動産情報の量や正確性などをより充実させていくため、不動産価格指数や不動産取引価格情報の速報性向上、民間の二次活用に役立つ不動産情報のオープンデータ化などを行う予定です。

まとめ

今回ご説明した内容以外にも、個人投資家の投資促進へ向けたJ-REITなどの情報提供や、証券化モデル事業の実施などの取り組みが掲げられています。
こうした成長戦略の策定をきっかけに、不動産投資市場拡大のための融資が受けやすくなり、買い手が増えて不動産価格が上昇することも考えられます。未知数な部分はありますが、今後の動向には注意を払いましょう。