日米ローン比較! 米国で主流のノンリコースローンとは

日本人のAさんと、友達のアメリカ人のBさんは同い年。2人は、ほぼ同じくらいの3,500万円程度のマンションを買うことになりました。2人が情報交換していると、日米の住宅ローンの違いが分かってきました。

日本は「人」に貸すローン

Aさんは今、東京近郊でマンションを借りており、新居は近くの新築8階建てマンションの6階です。日本では、毎年の新築供給が98万戸に対して中古住宅の流通は51万戸(2013年・不動産流通経済協会調べ)となっています。Aさんもまた新築志向です。
手元に500万円を用意し、銀行から35年ローンで3,000万円借りる予定です。今は低金利なので当初3年は固定金利、それが終われば変動金利とするつもりです。
Aさんは「もしローンが払えなくなったら、退去は仕方ないけれど売っても残債に足りなかったら不足分を支払う必要がある」と知って迷っています。これがリコースローン(遡及型融資)です。
残債の不足分は「信用保証」を扱う機関に毎年お金を納めれば済みますが、結構な負担です。また、「良い会社にお勤めですから大丈夫」と言われますが、「今時、どんな大企業でも潰れない保証はないのに」と不思議がっています。
1950年、日本では住宅金融公庫(今の独立行政法人住宅金融支援機構)の住宅ローンが始まりました。当時は社会的に信用の高い職種や大企業に勤めていることが条件で、いわば「人」への信用供与でした。今もその名残があるようです。

アメリカは「住まい」に対するローン

一方、アメリカに住むBさんが買うのは中古一戸建て住宅。アメリカの中古流通は525万戸で、新築50万戸の10倍。中古物件を探すのは容易です。彼は日本にも住んでいただけに、「なぜ、日本人は新しいものが好きなの?」と不思議でなりません。
大都市圏のはずれで30万ドル程度の家は中程度です。手元資金に5万8,000ドル(約700万円相当)を用意し、残り23万3,000ドル(約2,800万円)を20年の銀行ローンにしました。見積もりを得た3つの銀行の中から低金利行を選びましたが、それでも日本より金利は高めでした。
ジャックさんは「ローンが払えなくなったら、出て行けば良いさ。値段が下がっていても追加でカネを取られるわけではないし、別の家を探せば必ず良いものがあるさ」とサバサバしています。これがノンリコースローン(非遡及型融資)です。
日本の住宅ローンが「リコースローン」と言われるのは、債務者がローンを支払えなくなり担保住宅を売って残債がある場合、その支払い義務が残るからです。
その極端な事例が、震災などでしばしば起こる「二重ローン」でしょう。震災で自宅が被災した場合、ローンを支払えなくなって移転しても、被災住宅のローンを背負い続けなければなりません。新しく住む家のためのローンと被災して壊れてしまった家のローンの両方を抱えて生活するのです。
阪神・淡路大震災(1995年)の後に「被災者生活再建支援法」、東日本大震災(2011年)の後には「個人債務者の私的整理に伴うガイドライン」(被災ローン減免制度)ができました。しかし、住宅ローンそのものの仕組みを変えたのではなく、別の制度を付け加えたものです。

アメリカでは、焦げ付きリスクは金融機関が負う

アメリカのノンリコースローンも住宅担保は同じです。ただし、返済ができなくなると金融機関が差し押さえて競売で売り、回収できなかった残債は銀行の「焦げ付き」になります。それは「損金」で処理されて、物件は再び「サラ」の中古住宅として住宅市場に戻ります。
アメリカでは1929年の世界恐慌の3年後に就任したF・ルーズベルト大統領の時に、「20年住宅ローン」が始まりました。それまでは5年ローンしかなく、これが「長期住宅ローン」の始まりでした。その結果、多くの人が住宅を所有しやすくなり、「反・担保不足法」(ADL=Anti Deficiency Law)もできて、競売後の担保不足額請求を制限しました。ローンの証券化も進み、不動産市場に世界から資金が流れ込みました。
世界恐慌で一時は年間10万戸以下に落ち込みましたが、一連の政策により10年以上かかったものの、元の年間60万戸に戻りました。州により法律はさまざまですが、ノンリコースの考え方も普及しました。

不動産価格の査定を慎重に行うアメリカの金融機関

アメリカの場合は、住宅購入費用のおおむね20%を頭金(例外もあり、頭金ゼロもあります)、80%を20年ローンとして融資するケースが多いです。
その価格が住宅マーケットから見て妥当か、何年か後に競売にかけた時に債務を回収できるかどうかを、金融機関自身が予測しなければなりません。そのためには、州の免許を受けた「アプレイザー」(査定業者)に頼み査定してもらいます。「市場価格」「更地にしたら、同じ間取りの家を建てるにはいくら掛かるか(再建築価格)」「どの程度の家賃を取れるかを推定した妥当価格(収益還元法価格)」のうち、市場価格を重要視しながら査定を行います。

分業と透明化の進むアメリカの不動産売買

日本では、新築住宅は開発業者(デベロッパー)が、中古物件は売買仲介業者が、いずれも売買の前面に出て購入予定者は提示金額で買うかどうかを決断します。中古不動産の場合は、同じ仲介業者が買い主と売り主の両方を取り持つこともあります。
アメリカでは、そのような「両手取引」ができません。買い主と売り主それぞれに、不動産を仲介するブローカー(不動産事業者)、エージェント(販売員)が付いて仲立ちします。新築でも同じです。
融資のための査定は上述したアプレイザーが行います。また、建築物の状態の調査、判断については、州認可を受けた専門家であるホームインスペクター(診断士)が行います。
全米の物件情報は、ブローカー、エージェントが所属する全米リアルター協会が管理する「MLS (Multiple Listing Service)」に載せられ、900ほどある地域不動産サイトにすぐに反映する仕組みになっています。

日米のローンの差は文化の差にもつながっています

アメリカでは、若い人たちが少しの頭金でもノンリコースで安心して購入できる仕組みがあったので、「借りるより、買う方が得」と実感できました。そして、それを支えるために住宅街をきちんと管理していく管理組合組織が社会政策として確立していきました。
一方の日本では、土地神話とでも言うべき「住宅価格は上がる」という思惑に支えられて、高度成長期に住宅購入が広まりました。しかしバブル崩壊後、売却時の住宅価格は購入時よりも下がって結局債務だけが残り、売却後もそれを支払う必要があることが広く知られるようになりました。そのため、低金利の間にとにかく元本を減らそうという意識になり、借金などせずにせっせとお金を貯めておこうという意識がますます強くなりました。
日米のローンの違いはとても根深く、お金と人生についての考え方も、大きな違いがあるのです。