パリでAirbnbが大問題に? Airbnbはホテルを所有しない巨大なホテル業者

最近話題のシェアリングエコノミーの一つ、「Airbnb(エアビーアンドビー)」に代表される「民泊」が、日本にも急速に広がってきました。しかし、増加する訪日外国人に民泊の数も法整備も、追いついていないのが現状です。
パリなど「民泊先進国」も同様です

2016年2月、パリの衝撃

Airbnbは、世界190か国以上で「民泊」を提供している巨大サイトです。中でもフランスでは15万以上、パリだけでも6万の部屋が民泊に提供されており、2014年は140万人が利用しました。「世界一の民泊都市」です。
このパリから2016年2月、「市の捜査員が連日、ヤミで民泊をしている事業者を捜査している」という内容のニュースが日本に届き、騒然となりました。実際は市が雇った調査員で、捜査ではなく「覆面調査」だったようです。
パリでは2015年11月にテロで130人が死亡、300人以上が負傷し、潜伏先として「ホテルを避けて泊まっていたらしい」という情報が、日本では民泊と関連付けられました。2016年3月にも同じグループがベルギー・ブリュッセルで連続テロを起こしました。その際捕まった容疑者が「当初、パリを狙った」と供述したことで、テロ対策との関連で、民泊を否定的にとらえる議論まで起きたのです。

パリの民泊普及はホテルの40倍、ベッド数は2倍

パリでは、ホテルが1,500軒(ベッド数11万床)に対し、Airbnbに登録されているのは実に40倍の6万軒、ベッド数で2倍の20万床です。しかも、毎月増えています。ロンドン(2万5,000軒)、ローマ(1万8,000軒)に比べても、パリのAirbnb利用は突出しています。パリを訪れる外国人観光客は、年間5,000万人です。ホテルだけでは到底足りず、Airbnbが普及する素地があったのです。
しかし、パリのアパートの家主の中には、旅行客に貸す方が儲かるとみて、アパートの借り手に対し契約満期の際に法外な家賃値上げを求め、「民泊」向けに設備を切り替える人もいるようです。そのため、家賃の急騰で住民の退去が相次ぎ、パリの中心街区の空洞化に拍車がかかるという懸念が出ています。また、大半がホスト不在の「投資型民泊」であることも指摘されています。
ホテル側も不満を募らせています。ホテルは、衛生面でも防火対策でも厳しい法律的なルールに沿って運営しており、「民泊にルールが無いのは不当な優遇措置だ」という主張です。

Airbnbとパリ市の協力

パリ市の場合、自分の住まいをAirbnbなどの民泊として貸す場合、貸出期間の累計が年120日未満なら、特別の行政手続きは必要無いとされています。賃貸住宅に住む人も、この期間内なら家主の許可さえあれば部屋を貸せます。一方、期間を超える民泊への貸し出しは「住居の用途変更」として規制対象になり、違反には1物件2万5,000ユーロ(約300万円)と、1日1,000ユーロ(約12万円)の罰金が課せられます。
パリの「覆面調査」はこの法令違反事例を見つけ、実際に住民が居住しているかを調べるものでした。違反例は、2014年だけで20件あったとのことです。
Airbnb側も、手をこまねいてはいません。
2015年10月には、ヨーロッパの観光都市のホテル宿泊者から徴収する「宿泊税(観光税)」(1泊1〜5ユーロ)をAirbnb施設から徴収する代行サービスを始め、2016年1月までの3カ月で125万ユーロ(1億5,000万円)を徴収したそうです。2016年3月末には、Airbnbとパリ市当局が住居を年に4カ月以上民泊に貸し出しながら規制を免れている違法ホストに対して指導を強化するとともに、全ホストに対して法令遵守を周知徹底するとの共同声明を発表しました。

訪日外国人が急増

一方、日本では「爆買い」に象徴される中国人だけでなく、急速に富裕層の厚みが増してきている東南アジアからの旅行客が増えています。訪日外国人数は2012年の836万人から、15年には1,974万人に増えました。当初、政府が2020年に据えていた到達目標数を5年前倒しで達成。訪日外国人の旅行消費額は3兆4,771億円(2015年)で、これは前年比71.5%増です。
このため、政府は2016年3月末に開いた「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で、新たな訪日外国人旅行者数目標を、2020年4,000万人、2030年6,000万人に上方修正しました。年4,000万人という数字は、世界観光機関(WTO)が発表した「2014年世界観光ランキング」に照らすと、世界一のフランス8,000万人の半数ですが、5位のイタリア(4,800万人)に匹敵します。

民泊、既存業種双方が歩み寄れる規制緩和を

年間4,000万人が海外から日本に訪れることになると、その宿泊施設をホテルだけで賄うのは不可能です。
世界は、余剰資源を活用するシェアリングエコノミーの時代が訪れており、一方で日本は人口減、労働力減が始まり、既存の資源を有効活用することが求められています。
日本政策投資銀行(DBJ)が2016年3月に発表した「アジア8地域から訪日した外国人の民泊利用実態」によると、訪日経験者の12.1%が日本で民泊を経験し、若い世代ほど民泊希望率は高くなっています。
DBJは、2020年の訪日外国人数が政府当初目標の2,000万人の場合、日本全体では5万5,500室、3,000万人の場合は8万3,297室の民泊が必要だと推計しています。なお5〜8万室というのは、日本Airbnbの現掲載の2〜3倍に当たります。
民泊をめぐっては2016年4月から旅館業法を改正し、現行の簡易宿所の枠組みを使って面積基準や帳場設置義務を緩める規制緩和が始まりました。一方で、特区制度を使った自治体の規制緩和を東京都大田区、大阪府が実施しており、東京都杉並区など民泊特区を希望する自治体もありますが、現在は6泊以上の宿泊に限定しているために、認定民泊は東京・大阪で3物件だけです。
政府は「現行制度の枠組みにとらわれない宿泊法制度の抜本見直し」という姿勢で、60年以上経過した規制の抜本見直しと、新たな民泊ルールの整備を2016年前半にはまとめたいとしています。とりわけ、重要な役割を果たす仲介事業者の取り扱いが焦点になるでしょう。