バブル再燃? マイナス金利導入後に不動産市況はどのように反応したのか

日銀が2016年2月16日に導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利政策)」。各金融機関が日銀に預けている当座預金の一部に対して、0.1%の手数料を科するという金利政策です。
金融機関が目減りしていく当座預金を少しでも減らすために、企業に貸して金利収入を得たり他の投資に回したりすることで、市場にお金が出回り企業の設備投資や賃上げを後押しする効果が期待されています。
マイナス金利政策がスタートとして約2カ月以上が経ちましたが、現段階では、設備投資や住宅投資といった実体経済で効果を感じることができません。
ただし、貸出金利や住宅ローン金利は確実に下がっており、融資が受けやすくなっている状況は不動産市況にとって追い風と言えます。「バブル再燃?」との噂も囁かれているようですが、実際はどのような状態にあるのでしょうか?
今回はマイナス金利を先行して導入した欧州の例も参考にしながら、日本の不動産市況の現状について考えてみます。

マイナス金利が我々の生活に与えた影響

2016年1月末に日銀からマイナス金利導入が発表され、2月9日には日本の長期金利(10年物国債の平均利回り)が初めてマイナスに突入しました。
米国景気の減退傾向、原油安、中国市場の混乱、欧州金融危機など、さまざまなリスク要因が重なったこともあり、金融機関や投資家はリスク回避のため安全資産として人気の国債を買った結果と言えます。円は安全通貨と言われており、円高も同様の理由からでしょう。
直近の長期金利の利回りを見てみると、マイナス圏内にあるのはもちろんですが、2月以降も下がり続けており、2016年4月19日時点で-0.125%の水準まで低下しています。
長期金利は住宅ローンの指標とされており、また大多数の金融機関で住宅ローンの金利引き下げや借り換えキャンペーンを行っています。そのため、現在は住宅ローンが組みやすく物件の販売もスムーズで、不動産業界にとっては良好な状態が続いていると言えそうです。
一方、普通預金の金利引き下げや、保険、金融機関の業績不振による株価の暴落、退職金の運用先などとして人気が高い一時払い終身保険の予定利率の引き下げなど、個人の資産運用で悪い影響も出始めています。

欧州各国のマイナス金利政策による影響

次に、マイナス金利を先行して導入している欧州各国の不動産市況を検証してみましょう。
2012年にマイナス金利政策を一時的に導入したデンマークを除けば、欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入した2014年6月以降に、欧州各国でマイナス金利政策が導入されました。
みずほ総合研究所が2016年2月に示した「欧州マイナス金利の日本への示唆」という資料によると、ユーロ圏に北欧3か国(スイス、デンマーク、スウェーデン)を加えた欧州各国のマイナス金利が付与される中央銀行預金残高は、2015年末時点で銀行総資産比1.2%~5.2%でした。
一方、日本においてマイナス付利される政策金利残高(約10兆円)は、銀行総資産比の1%にとどまり、欧州各国に比べると低いことが分かります。
マイナス金利導入後の欧州各国(デンマークを除く)の預金・貸出金利の動向を見てみると、個人向け・企業向けともに、いずれの国・地域でも低下が見られます。
スイスでは、一部の金融機関が個人向け流動性預金金利をマイナスに、企業向けや大口預金金利もマイナスに転じています。また、ユーロ圏では純受取利息額が減少しており、デンマークやスウェーデンの大手行による純受取利息額も、2015年を通して緩やかに減少傾向にあります。
住宅ローン金利などの貸出金利については、ユーロ圏では、住宅ローン金利と短期貸出金利が低下傾向にあります。ただしスイスの住宅ローン金利は、マイナス金利導入以降、緩やかに上昇しています。
また、スウェーデンでは下げ止まりの傾向が見られ、住宅市場の過熱が影響していると考えられます。実際、スウェーデンの2015年の実質GDP成長率は、3.3%(ブルームバークによる予測中央値)とEUの中でも高く、その一因は住宅投資の拡大です。「低金利下で住宅バブルが起こりつつあるのでは?」という見方も出ています。
スウェーデンに限らず、北欧3国の住宅価格は上昇しており、「北欧諸国のマイナス金利は物価を上げず、住宅価格を上げてしまった」とささやかれている有様です。

マイナス金利の下げ幅次第では住宅バブルが現実に!?

欧州中央銀行のマイナス金利政策では、日本のように大規模な量的緩和とマイナス金利政策を同時に行ってはいませんので、厳密に比較・検討することは難しいのですが、国債利回りが持続的に低下し、預金・貸出金利も低下傾向にあるというのは、共通した現象です。
欧州の例を見る限り、日本のマイナス金利政策にはまだまだ十分な余力が残されているように思えるので、今回のマイナス金利で十分な成果が得られなかった場合はマイナス金利幅を今後も拡大させる可能性があります。
その結果、欧州の例に習えば、低金利下の住宅バブルが現実のものになるかもしれません。また、今後の金利次第では、スイスのように預金者に手数料を支払わせる可能性も考えられます。
そうなれば、預金を不動産投資などに回すという方も増えるでしょうから、ますます不動産マーケットは熱くなる可能性があります。
ただし、住宅バブルとなれば、マイナス金利下でもスイスのように住宅ローン金利が上昇する可能性があります。そうなってしまった場合でも、その状況に耐えうる物件かどうか、株価や円相場、銀行計貸出残高など、不動産市況にまつわる様々な指標を参考にしながら、物件を見極めたうえで不動産投資を行いましょう。