2020年五輪まで持つのか不動産市況、専門家が考える4つのポイント

不動産は、使う人と建てる資金があって初めて成り立つビジネスです。人口が減っているのに世帯数は増え、長期間デフレ経済が続いてきた中で、「量的・質的金融緩和」でお金を大量に供給し、日銀は脱デフレを試みています。
今、高い関心を集めているのは、好調な不動産市況が2020年の東京五輪まで持つのかどうかということです。こちらについて専門家が考えているポイントは4つあります。

ポイント1 人口減少下での世帯増加、新築減に空き家増

高齢化の推移と将来推計
「2015年版高齢社会白書」より
2016年2月に発表された国勢調査では、2015年10月の人口は1億2,711万人と5年前に比べ94万7,000人(0.7%)減りました。これは1920年の調査開始以来、初めて人口が減っています。
その一方で、世帯数は5,340万3,000世帯と5年前に比べ145万世帯(2.8%)増えました。世帯規模は90年代から減少傾向が続いており、1人世帯が増えて1世帯平均は2.38人になりました。
住宅市場は、かつて年間100万戸を超えていた新築住宅着工戸数が、リーマンショック後の2009年に70万台にまで激減し、2013年にようやく99万戸に持ち直しました。しかし2014年までの6年間、100万戸の大台を回復していません。空き家率も年々増え、2013年には13.5%になりました。
日本の最多人口都市は東京都で、2014年に前回国勢調査(2010年)に基づく将来人口・世帯推計を発表しています。それによると人口は20年に頭打ちとなるものの、その後は高齢化による配偶者との死別で1人暮らしが増え、同時に結婚に踏み切らない層も多くなるため、世帯数のピークは2030年、1人世帯は2035年までに全体の半数近くになると予測しています。
つまり、「1人暮らし」世帯の不動産需要は20年近く継続しそうだということです。

ポイント2 東京都でも就業者数は2010年がピーク

ところで、働く人の数はどうなのでしょうか? 東京都が2015年10月に都就業者数予測を出しました。2010年の国勢調査を元にしたもので、昼間就業者数は2010年の817万4,000人をピークに2020年には18万6,000人(2.3%)の減少、2035年には79万6,000人(9.7%)減少して737万8,000人となる見通しです。
この見通しから、五輪後でもオフィスの需要が増え続けるという考えは、移民の増加や、外国企業の事務所が増加する限り、厳しいといわざるを得ません。
安倍政権は5月18日、国内総生産(GDP)を2021年に600兆円にまで増やす目標を掲げ、「骨太の方針」の素案と「ニッポン一億総活躍プラン」を発表しました。高齢者の雇用促進はあっても「移民」「外国企業誘致」はありませんでした。

ポイント3 ブロックごとに都市集中

東京都は、日本で最多人口(1,351万人)の都市です。2010年から2015年にかけて都区部は32万7,000人増えました。東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は50万8,000人増の3,613万人となり、これは全国の4分の1を占めます。
とはいえ、首都圏を除く県庁所在地でみると、福岡市7万5,000人、札幌市4万人、仙台市3万6,000人、名古屋市3万2,000人、大阪市2万6,000人、広島市2万1,000人、東京都とは1桁違いますが、それぞれ増えています。
また、全国1,719市町村のうち、8割を超える1,416市町村で人口は減少しています。47都道府県のうち、人口も世帯も減ったのは、高知、鹿児島、青森、和歌山、秋田の5県だけです。
これは、ブロックごとに都市集中が続く「多極・集中化」を意味します。東京圏が最も顕著ですが、ブロックごとに周辺から人口移転が進む拠点都市では住宅、オフィス需要は今後もあるでしょう。

ポイント4 不動産は金利の高低に大きく影響されます

不動産市場の将来を予測することが難しいのは、2016年2月に実施された日銀のマイナス金利が、市場にどのような影響をもたらすのかが未知数だからです。
真っ先に反応したのは債券市場でした。10年物国債の利回りがマイナスとなり、国内銀行や生保が手を出しにくくなった半面、短期売買主体の海外勢が目立ちます。日銀は、大量の国債買い取りを続けており、転売で利益を出しています。
債券市場の買い付け額に占める海外勢の割合は2016年3月、比較可能な2004年以降で最も高い27%となり、国債全体の残高に占める海外保有比率は、2015年末時点で10.7%と初めて1割を超えました。
東証REIT指数も2011年以降上昇傾向で、2015年1月にいったん1,990円を示した後、下落しましたが、マイナス金利発表後、再び最高値を目指す勢いです。
【1605-10】2020年五輪まで持つのか不動産市況、専門家が考える4つのポイント -図2
2011年以降の東証REIT指数
日銀が金融政策の正常化(出口戦略)にいつ進むのかは明らかではありません。
しかし、金利上昇となれば不動産市場には負の影響がある半面、マイナス金利が続いたり、マイナス金利が深まったりすれば、不動産投資に好影響なのは確かで、不動産投資への依存が強まると不動産バブルが起こる可能性もあります。
バブルの予兆は、家賃収入(インカムゲイン)より、保有資産を売ることで得る収益(キャピタルゲイン)を期待して購入する傾向が強まってきた時です。そして、いずれ不動産バブルは弾けます。

まとめ

海外からは、東京以外の大阪、名古屋にも食指が伸ばされ、ホテル、学生寮、医療関連施設、賃貸マンションに関心が広がっています。少子高齢化時代の不動産ビジネスとして、シニア向け不動産事業、例えば介護サービス付き賃貸住宅や優良老人ホームが、「ビジネスフロンティア」という指摘の声もあります。
結局のところ東京五輪よりも、さらにその先を見越した不動産投資を実践することが大変重要になっているということでしょう。