日銀のREIT 買い入れルールが変わった!? 傾向と買入額を掴もう

J-REITは不動産分野の投資信託です
J-REITは、たくさんの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産を購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品です。
REITはオフィスビルやマンションに投資するよりも少額で、数万円程度から出資ができるのが特長で、投資口数に応じて分配金が受け取れます。1960年代にアメリカで始まり、日本では2001年に初めて国内銘柄が上場しました。日本で上場しているものをJ-REIT(ジェイ・リート)と呼びます。
日銀は2015年12月にJ-REITの買い入れ枠を拡大しました。それ以降、東証REIT指数は4ヶ月連続で上昇しています。アベノミクスの金融政策を強力に推進する日銀の買い入れ枠拡大が影響したと見て良さそうです。
しかし、現在はマイナス金利という日本では未経験の事態ですから、今後の展開は読み切れないところはあります。
【1605-24】日銀のREIT買い入れルールが変わった!?傾向と買入額を掴もう-図1
(東京証券取引所サイトから)

「3本の矢」だったはずのアベノミクス

2012年12月に発足した安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、当初から日銀の金融政策だけを重視していたわけではなく、第1弾は「3本の矢」から構成されていました。
1. 大胆な金融政策
2. 機動的な財政政策
3. 民間投資を喚起する成長戦略

の3つです。
金融、財政の経済政策の2つの柱を動かしつつ産業政策としての成長戦略を打ち出し、デフレ経済からの脱却を目指そうとしたことが分かります。
今、成長戦略を推進することは、産業の新陳代謝を進め、新しいモノを創りだすことです。痛みを伴い、業界再編に伴う倒産、失業が一時的に増加する恐れもありますが、「失われた20年」という長期間低迷し続けた日本経済を再浮上させるためには避けられません。企業の収益改善なしに、経済成長は実現できないからです。
「アベノミクスが無ければ、日本経済はもっとひどいことになっていた」と分析する専門家も少なくありません。それと同時に、「成長戦略を打ち出した後は、過剰なほどに金融政策頼みになってしまった」というのが、2016年5月時点での安倍政権に対する彼らの評価です。

黒田バズーカとは何か

アベノミクスとともに始まった黒田東彦・日銀総裁の金融政策は「黒田バズーカ」とも表現されています。
2013年4月、「消費者物価の前年比2%の『物価安定目標』を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と宣言。これまで3回にわたって「バズーカ砲」を発射してきました。
第1弾は、マネタリーベース(日本銀行が経済に供給するお金の量)を政策目標として設定した「量的・質的金融緩和」と呼ばれる政策です。
量的緩和策では、年間に80兆円もの資金を拠出し、国債だけでなく、J-REIT、ETF(上場投資信託)を買い上げてきました。国債は政府が発行するもので、日銀が直接、政府から買うことは法が禁止していますが、証券会社に買い注文を出し、債券市場を経て、全国700以上の金融機関から買っています。

J-REIT買い上げの条件

日銀は、J-REIT買い上げについて、黒田総裁以前から2つの条件を課してきました。投資格付けが「AA格相当」であり、買い入れ額は「発行残高の5%以内」です(詳細には「売買日数が年間200日以上あり、年間売買金額が200億円以上である銘柄」という条件も付く)。
第2弾である2014年10月の量的・質的金融緩和の拡大は、14年4月の消費増税によって落ち込んだ景気を支えるためのものでした。この威力は大きく、100円台後半で推移していた円ドル為替レートは、2014年末に120円台に、日経平均株価は2015年夏に2万円台を回復しました。
しかし、2015年半ばに中国が人民元を切り下げたことをきっかけに、世界の株式、通貨、債券市場は大きく混乱、日本市場も年初来から不安定な相場となりましたが、それでも日銀は物価2%上昇という目標を撤回せず、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入に踏み切りました。

マイナス金利を打ち出す前に

実はその直前の2015年12月に、第2弾の補完政策として、J-REITの買い入れ限度額を「発行残高の10%以内」に引き上げていました(従来限度額は発行残高の5%以内)。投資できる銘柄が枯渇する恐れが強まり、それに対応しようとしたのです。
その他にも、新たなETF買い入れ枠の設定や成長基盤強化支援資金供給の拡充も追加されました。まるで日銀が産業政策までを担うようなものです。
マイナス金利政策については、「銀行の収益を悪化させる」として、金融業界の評判は最悪です。しかし、景気がこれ以上良くならないのであれば、これまで以上に金融政策への依存を強めることが容易に想像されます。

J-REITや債券の買い入れ拡大も

現在日銀は、年900億円以上をJ-REIT買い入れに使っており、この措置により3、4年は買い入れが継続される可能性が強まりました。
また今後は、マイナス金利の追加拡大(マイナス幅を大きくする)や、国債以外に地方公共団体の発行する「地方債」、公庫、独立行政法人が発行し、元利金の支払いを政府が保証する「政府保証債」などを買い取る可能性もあります。
実際に東証が明らかにした4月のJ-RIET買い入れは84億円、累計買い入れ額は2,991億円になりました。

日銀が買い入れているJ-REIT銘柄を先回りする買い方

日銀が買い入れているJ-REIT銘柄は公表されていません。しかし条件を<AA格以上と年間売買日数が200日以上、年間売買金額が200億円以上で個別時価総額の10%以下>でみると、J-REITの53銘柄のうち6割程度です。
4月時点でのJ-REITの時価総額は11兆9,800億円です。買い入れは枠が広がったとしても、時価総額の0.8%程度です。
最大手の日本ビルファンド投資法人は、この買い入れ銘柄に入っているでしょうが、利回りは2.41%です。また、53銘柄の平均は3.64%でやや割高感がある一方、東証J-REIT指数は、1月中旬の1,607を底に徐々に切り上がって、5月に入ってからは1,900台前半で推移しています。

指数2,000程度までは上がる可能性が指摘される

マイナス金利の影響で、国債の利回り(10年利回り)がマイナスで推移しています。一般的にJ-REITの分配金利回りと長期金利の差(スプレッド=分配金利回りマイナス長期金利)は3%とされていますが、長期金利がマイナスの事態は想定外です。
「指数2,000程度までJ-REITの価格は持続的に上昇する」と予想している専門家が多いようです。しかし、今後マイナス金利が大きくなった時に、J-REITがどのように動くのかは、未知の領域と言わざるを得ません。