世界中の投資家が毎月注目! アメリカの3つの指標とは

2016年6月現在、アメリカ経済は景気回復期のさなかと言えます。景気が底を打ったのは、リーマンショック後の2009年6月ごろと見られ、それ以降の7年間は景気拡大が続いてきました。
山と谷を繰り返すという景気循環論に従えば、そろそろ景気減速が考えられる時期です。しかし、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、経済の足取りは順調と見て、秋口にも利上げするかどうかを決断する構えです。
どうして、「アメリカ経済は順調だ」と判断できるのでしょうか?それは、アメリカの景気の行く末を予測する上で重要な指標がいくつもあるからなのです。今回はその中から、特に不動産に関する注目すべきデータを解説していきます。

アメリカで重要視される住宅の販売指標

投資家は住宅と自動車の販売指標を注意深く見ています。それはひとつひとつの金額の大きさに加えて、他の市場に与える効果が大きいからです。特に住宅が与える効果は大きく、その販売指標が注目されています。
アメリカの住宅流通情報については、新築の場合は「米商務省」(日本の経済産業省にあたる)が集約し、中古の場合は「全米リアルター協会(National Association of Realtors、通称NAR)」が集約しています。この結果、ほぼアメリカ全土を対象に、全米のブローカー(不動産事業者)のデータが網羅されています。

指標1 「米国中古住宅販売件数」

住宅の販売指標でよく知られる「米国中古住宅販売件数」は、米国内で販売された中古住宅のうち、所有権移転登記が完了した件数のことです。NARが毎月25日前後に発表しています。
全米と4つの地域(北東部、中西部、南部、西部)における中古の一戸建て住宅、コンドミニアム(日本のマンションに相当)などの共同住宅の販売件数、戸数、在庫を含めた数字となっています。この指標は全米の中古住宅流通を網羅しており、さらにアメリカにおける中古住宅流通は、新築住宅の5〜10倍の規模のため、好・不況を見る経済指標として注目されているのです。
21世紀以降のアメリカでは、低所得者でも気軽に使える住宅ローンの「サブプライムローン」が普及し、年間販売件数は1990年の約300万戸から2005年には約700万戸にまで増加しました。
しかし、2007年に住宅価格の下落をきっかけにサブプライム危機が発生し、2008年のリーマンショックの影響などもあり、2009年初めには販売件数が450万件にまで落ち込みました。
好不況の指標だけでなく、「米国中古住宅販売件数」データには、以下のような特徴があります。
1. 契約の成立から受け渡しまで1〜2ヵ月程度かかるため、後に述べる「新築住宅販売件数」に比べて時期がずれる「遅行指標」である
2. 住宅は家計の中でも大きな比重を占め、長期間にわたって支出されるため、家計の支出状況や住宅ローン金利動向の影響を受けやすく、特に金利上昇直前に駆け込み需要が出てくる
3. 予想より販売件数が少なければ、住宅市場は不調とみられ、ドル売りが加速し、好調な時はドル買いが加速する。

これに似た指標に、「中古住宅販売成約件数」があります。同じくNARが発表するデータで、移転登記前の契約が成立した時点のデータを集約しているため、「販売済み件数」の先行指標であり、経済の先行きの参考情報としても使われます。

指標2 「新築住宅販売件数」

新築住宅販売件数は、契約書への署名件数を集めたものです。上述の中古住宅販売成約件数と同様、景気変動の先行指標とされます。毎月24日以降に、前月末〜当月上旬の販売件数を米商務省が発表します。アメリカの場合、新築住宅件数は中古販売件数の1割程度で約50万戸です。
この指標は、景気変動の先行指標である以外に、将来の住宅建設動向を判断する材料にもなります。中古住宅販売件数と同様に、予想より件数が多ければ、住宅市場は好調とみられてドル買いが加速し、少なければ不調としてドル売りが加速するというのが基本的な動きです。

指標3 「新築着工件数」

その月にアメリカ国内で住宅着工した件数(公共住宅を除く)を示しています。前述の「新築住宅販売件数」を発表する前の毎月第3週に、米商務省が発表します。住宅は販売より着工が先行するので、新築住宅販売件数よりもさらに先行する指標と言えます。
また、新築に関する指標は、3ヵ月程度の平均を取って分析する投資家が多いようです。

日本における中古住宅販売の現状

ちなみに日本における中古住宅流通シェアは、欧米に比べて低いと言われています。
国交省が国際比較のためにまとめた中古住宅の流通比率は、2015年度までの約10年間で住宅全体の15%前後とされています。また、「一般社団法人不動産流通経営協会(FRK)」による2014年の「全国既存住宅流通量」(推計)は51万9,000件。一方、同時期の新設住宅着工件数は約1.7倍の89万2,000戸となっており、既存(中古)住宅の流通比率は住宅全体の36.8%と、アメリカとはデータが大きく異なります。
アメリカ人は生涯に平均10回以上引っ越しをしますが、日本人の場合、5回程度しか引っ越しをしないというデータがありますので、住宅流通件数がアメリカよりも少ないのは当然なのかもしれません。
なお、全国既存住宅流通量は、所管する指定流通機構である「公益財団法人不動産流通推進センター(レインズ)」からの資料を基にしています。宅地建物取引業法では、取引成約時の不動産流通推進センターへの登録を業者に義務付けていますが、全国的に相当数の報告漏れがあるようです。
また、新築住宅データの中に持ち家の建築件数も入っているため、流通データとしては正確性に欠け、不動産流通の現場での実感としても、FRKの推計値がより現実に近いという感覚が強いようです。
日本では最近、中古住宅に対する消費者の抵抗感が以前よりも減って、自分好みにリノベーションを施して住まいにする人たちが増えています。そういう意味では、中古住宅の流通市場やリフォーム市場の整備は急務かもしれません。
日本国内でも、より正確なデータを取得し、指標が整備されることが望まれます。それは不動産投資家にとって、大変に有益な投資情報となるでしょう。