消費税増税が延期になっても残る「2018年問題」とは

不動産市況にも大きな影響を及ぼすとされている消費増税10%の実施が、2017年4月から2019年10月に再延期されました。「ショッピングも旅行代金も、しばらくは今のまま。良かった!」と安堵された方も多いのではないでしょうか。増税後の売上減少を懸念していた小売業や製造業からも、景気の腰折れを一旦は回避できたと歓迎されています。
不動産市場では、増税前の駆け込み需要が先延ばしになった形となりましたが、2015年の夏以降マンション市場は景気回復の期待感が薄まり、購入マインドが急速に冷え込んだ状態でした。増税が実施されれば市況は悪化する一方だったでしょうから、不動産業界にとって今回の措置は良い判断だったと言えるでしょう。
しかし、消費増税の問題で一区切りが付いたとは言え、不動産投資家は安心できる状況にはありません。なぜなら、今後の不動産投資の成否を左右するとされる3つの「2018年問題」が残されているからです。
この問題の内容を明らかにするとともに、それらの乗り切り方について説明します。

安倍首相と黒田総裁の任期が同時に切れる2018年

デフレ脱却を目指し、大規模な金融緩和・機動的な財政政策・成長戦略の「三本の矢」から成るアベノミクスをはじめ、総合的な経済政策を矢継ぎ早に実践してきた安倍政権。2015年9月の自民党総裁選では2018年9月までの任期で再選を果たし、現在は党内では「安倍の一強」と言われるほどです。
一方、安倍首相と足並みを揃える形で金融政策を実施している日銀の黒田総裁は、2013年に日銀総裁となり、任期中の5年間で、安倍政権の金融政策を主導しています。
勘の良い方ならピンときたかもしれませんが、安倍首相も黒田総裁も2018年に任期が切れます。両氏ともに「デフレ脱却」を使命としており、任期中はこれまで通り「低金利・円安・株高」の官製相場が続くでしょう。しかし、任期が切れた後は金融緩和が縮小し、金利が上がるなど不動産投資環境がガラリと変わる可能性があります。
最初の「2018年問題」とは、こうした不動産投資環境の変化を危ぶむものです。
投資家は国内外の経済動向に注意を払いながら、2018年以降の投資環境の変動を念頭に置いたうえで、投資計画を立てる必要があるのです。

日本の将来を担う18歳人口が減り始める2018年

二つめの「2018年問題」は、人口減少にまつわるものです。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」によれば、日本の将来を担う我が国の18歳人口は1992年に205万人とピークを迎えた後、急速な減少を続け、2018年には100万人を切ることが予想されています。大学が飽和状態にある中、18歳人口が減るということで、2018年以降の大学経営が心配されていますが、その影響は多岐にわたり、不動産業界にまで及んでいるのです。
18歳とは、進学や就職を機に親元を離れ、1人暮らしをする年齢でもあります。18歳人口が減少し、大学・短大・専門学校への入学者や社会人デビューする働き手が減ってしまうと、ワンルームマンションやアパートなど賃貸住宅の主要顧客層となっている都市部の若年層人口も減ってしまうことになります。その結果、ワンルームなどの需要と供給のバランスが崩れ、供給過剰による空室率の上昇や家賃相場の下落が起こる可能性が出てきます。不動産経営はますます難しくなり、経営自体を撤退するオーナーが出てくるかもしれません。
こうしたリスクを回避するためにも、今後は都市部の若年層だけでなく、需要が見込めるシニア層をターゲットにしたバリアフリー物件の経営・投資などについても検討の余地がありそうです。

オフィスの供給過剰への懸念

2020年の東京オリンピック開催を控え、丸の内、日本橋、新宿などでは、高層ビルの建設ラッシュ・再開発が盛んに行われています。巨大な高層ビルが林立する光景を目にすると、「借り手はいるのだろうか?」と感じてしまうのですが、この不安こそが三つめの「2018年問題」に当たります。
東京オリンピック開催を控え、アベノミクスによる景気上昇への期待感が確かなものとなり、一部の企業が、業容拡大や東日本大震災後に高まった事業継続計画(BCP)対応、集約・統合によって、オフィス床市場に対する積極的な活動を行っているようです。このことから、オフィス市況は今後も順調に推移していくように思えるのですが、一部の専門家は違った見方を示しています。
証券アナリストなどの予測によれば、入居予定などから堅調なオフィス需要は2017年までは続くとのことですが、足元の円高傾向で、オフィスの借り手である企業の業績は伸び悩んでいます。2018年付近にオフィスを移転するのであれば、準備期間なども含めて、企業は今夏にはその最終的な判断を下さねばなりません。しかし、足腰が弱っている状況で、企業が簡単にオフィス移転の判断を下すとは到底考えられず、そうなれば、オフィスの移転ラッシュは2017年までということになります。
オフィス市況は日本の景気を反映するバロメーターとも言われます。供給過剰で引き起こされるリスクを回避するためにも、国内外の企業から引き合いの高い、災害に強いオフィスビルに投資を集中させるとともに、海外企業の進出と密接な関係があるとされる法人税減税についても注視していく必要があります。