海外不動産投資の投資妙味とリスク

2016年夏、日本はデフレに苦しんでいますが、世界には今後しばらく経済が伸びていくと予想される国があります。それは、人口ピラミッドがきれいに三角形になっている国や、人口が増加している国です。なぜなら、人が増えるには住まいと職場が必要となり、不動産需要が起きるからです。
ここでは、海外において不動産投資に適していると思われる国と、投資妙味(醍醐味があり上値期待ができるという意味)や特徴を解説していきます。

アメリカの不動産がなぜ注目されるのか

不動産投資で安定した人気のある国がアメリカです。
世界経済は物価の上昇率が停滞し、その結果、景気低迷つまりデフレが長期化しそうな気配です。しかし、アメリカは2009年6月に景気の底を打ち、GDPの平均成長率は2010年以降から2%程度となり、回復基調が明確になりました。人口は毎年1%程度増え続けており、2015年は約3億2,200万人で、2050年には4億人を超えるという予想もあります。
また、シェールガスによるエネルギー革命や、世界経済の基軸通貨であるドル発行国であることなど、将来的にも安定していくと想定されます。「輸出立国」でも、「世界の工場」でもなくなった日本とは、残念ながら置かれた状況が違うようです。アメリカの場合、今後の大きなポイントは、中央銀行のFRB(連邦準備制度理事会)が、2008年に導入された量的緩和とゼロ金利政策をいつストップし、利上げに踏み切るかという「出口」戦略の問題です。

減価償却の日米差を生かせる

アメリカの新築物件は、不動産全体の2割程度です。アメリカ人は生涯に10回程度引っ越しますが、築50年を超える物件を当たり前にリフォームして住むケースが多く、税制上において中古物件が日本よりも相当に優遇されています。物件価格に占める建物の割合を日本に比べて高くし、償却額を大きくしているのは、その一例でしょう。
建物の減価償却についても、アメリカの居住用不動産は構造や築年数に関わらず、購入時に耐用年数が一律27.5年にリセットされます。その一方、日本では金融機関の評価が建物構造と築年数に大きく左右され、古くなると融資をつけて購入するのが難しくなります。
その点アメリカの場合は、古くても建物の価値が数字として維持されます。日本において事業所得として確定申告する際には、日本の法定耐用年数を超えた木造の中古物件なら4年で減価償却することが可能となり、日本における課税所得を大幅に圧縮できるのです。

売却時の優遇措置

また住宅売却時には、税の繰り延べプログラムが優遇税制として組み込まれています。一定の条件を満たせば、所有していた物件を売却する際に譲渡益が発生した場合でも、それに課される税金の支払いを繰り延べできます。この繰り延べはルールに沿って申請している限り、何回でも利用可能です。日本でもよく似た買い替え特例はあるものの、地域が限定されるなど使い勝手はあまり良くありません。それに比べてアメリカでは、不動産マーケットへの投資メリットが大きく、国内外からの投資を呼び込みやすいのです。
しかも、アメリカの不動産融資は「ノンリコースローン」といって、融資に伴う求償権(他人の債務を弁済した者が、その他人に対して返還の請求をする権利)の範囲を物的担保、つまり不動産だけに限っています。そのため、担保物件を売却して債権額に満たない場合でも、それに対する一切の債務から免責されます。金融機関はリスクの一部を負担する見返りに、通常金利をより高めに設定、または利益の一部を成功報酬として受け取るなどします。これにより、不動産が値下がりした際に「全財産を取り上げられる」デメリットがないのです。
こうしたさまざまな措置は、アメリカ不動産業界が透明性のある市場を作っていると同時に、政治力も発揮している証でもあります。

訴訟大国であることをお忘れなく

一方でアメリカの場合、ささいなことでも裁判所に訴えることが多いため、入居者との賃貸トラブルが訴訟に発展する可能性を頭に入れておかねばなりません。言語や文化、法規制が異なると、込み入ったやりとりをするのには、時間も労力もかかります。
日本人にとって、日本人が多く住む地域や日系企業の存在する地域にはなじみがあるでしょう。アメリカに居住する日本人は約40万人(2011年時点)で、海外の日本人居住地としては最多地域ですが、ロサンゼルス都市圏が約7万人、ニューヨーク都市圏が約5万5,000人と、東西の都市圏に最も多く住んでいます。そういった地域で信用できる日本の業者、あるいは長く現地で仕事をしている日本人を見つけるのが肝要です。

アジアの魅力とリスク

アジアには、アメリカの次に多い約33万人が居住しています。観光を兼ねて現地視察に行ける程度の距離であるのこともメリットでしょう。
人口が増え続け、経済成長もしている国々がアジアにあるという事実は、日本へのインバウンド客の増加で実感している人も多いでしょう。10年前なら中国がそうでした。しかし、「土地は国有」の国柄で価格が高騰し、外国人による建物購入規制もかかっています。人口は多いものの、すでにピークに達していて、今後は人口減少にどう対処するかが課題となっています。
それに代わる存在となりつつあるのが、フィリピンやASEAN諸国です。経済成長が著しく、人口ピラミッドが確かです。これから結婚して家を買う世代が増えて不動産の需要が増加し、投資の成功が見込めるでしょう。
一方、アメリカと違う面でのリスクがアジア不動産にはあります。
その一つは、インフレ基調なので不動産が値上がりするスピードが速いことです。「グレードの割には安くていいね」と思っていた物件が、次に紹介された時には「いつの間にこれほど高騰したの?」と驚くようなケースもあります。
さらに、自国民が不動産を購入できなくなることを恐れた政府が、それぞれに対策を講じています。一定価格以下の不動産を外国人が買えないようにしたり、外国人への融資枠を狭めたりという規制が行われています。
こうした背景を受けて、ある国の不動産が供給過剰に陥り、業者の都合を優先して微妙な物件を紹介されないように注意が必要です。

それでも価値がゼロになる可能性は低い?

海外でも国内でも、株式投資と比べて、不動産投資の価値がゼロになる可能性は低いと言えます。会社は倒産すると価値がなくなりますが、土地や建物は存在する限り、価値は下がってもゼロにはなりません。
また不動産は、いざとなれば住むことができる実態のある資産です。日本より家賃の利回りが高い物件も多いので、家賃収入でローンを返すことも可能なはずです。
日本円は、1987年からこの30年間、1ドル75〜125円で動いていますが、円高、円安によって海外不動産の円収入も影響を受けます。ですから、海外の不動産に投資する際には、世界と各国の経済を勉強しながら取り組むことが大切です。