Airbnb、民泊をめぐる自治体の動向

観光庁の発表によると、2016年1月~5月の訪日外国人観光客は972万8,200人で、2015年同時期に比べて約30%増加したことが分かっています。2012年には年間で約836万人だったのに比べると、飛躍的に増加しています。
こうした外国人観光客の急増による日本国内の宿泊施設不足の解消や、2020年の東京オリンピック開催へ向けて、政府は民泊の規制緩和を目指して2015年から話し合いを続けてきました。現在、民泊のあり方は、どうなろうとしているのでしょうか。

規制緩和されるも、独自で規制する自治体が多い

2016年6月、観光庁と厚生労働省の有識者検討会が計13回の検討会を踏まえ、「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書をまとめました。報告書の中には、「旅館業法の改正を行うこと」「年間の民泊実施日数は180日以内にすること」「家主が常駐しないタイプの民泊については管理会社を登録すること」などの内容が記載されています。
現段階ではまだまだ曖昧な部分も多く合法的な民泊の実施のため、今後は具体的な内容を法案としてまとめることが必要です。しかし政府は民泊解禁に向けて、積極的な考えを示している状況にあります。
例えば現在、旅館業法上では、民泊は「簡易宿所」扱いとされています。2016年4月から面積基準などが緩和され、分譲マンションやアパート、一戸建てなどの一般住宅でも民泊を行いやすいようになりました。また、簡易宿所には通常フロントの設置が義務づけられていますが、一般住宅にフロントを設置するのは現実的に難しいでしょう。そこで国は、4月に発表した規制緩和の中で、他の条件を満たしていればフロントを設置しなくても民泊の営業許可を取得できるようにしました。
ところで、民泊のあり方について、各自治体ではどのような認識なのでしょうか。
こうした民泊の規制緩和への動きについて、自治体ではあまり好意的に見ていない所も多いようです。東京都内で、4月以降に民泊を簡易宿所として許可した区はゼロです。また、フロント設置義務が緩和されたにも関わらず、東京23区では全体の約40%の自治体が、フロント設置義務の条例を未だに続けていることがわかっています。このことからも、国と自治体の認識にズレがあることがうかがえます。

無許可民泊の増加で、都内のみならず人気都市で苦情が相次ぐ

都内の中でも、外国人観光客から人気が高い場所の一つである台東区は、2016年3月に「旅館業法施行条例改正案」を可決しました。台東区における民泊営業の条件として、フロント設置要件と、スタッフ不在の民泊営業を認めないという条件を加えたものです。
しかし、世界最大手の民泊サイト「Airbnb」には、恐らく無許可で運営されていると思われる台東区の民泊物件が多数登録されています。外国人観光客の急増や規制緩和により、条例では認められていないにも関わらず、人気エリアである台東区で民泊を実施する人が増えたと言われています。
そして台東区では、こうした民泊物件を利用している不特定多数の外国人の騒音など、2016年4月だけでも計17件の苦情が保健所に寄せられており、自治体が新たな対策を検討しています。通報者は近隣住民だけでなく、民泊の営業を許可していない物件の管理会社などからも寄せられているようです。
こうした苦情が来ているのは、台東区だけではありません。東京都、大阪府、京都府など、全国でも外国人観光客が多く訪れる都市では、2015年に比べて民泊に関する苦情件数が倍増していることがわかっています。京都市では「民泊110番」を設置し、市民からの情報をもとに市の職員が現地調査を行い、無許可で営業している場合は営業を停止させる姿勢です。

まとめ

国家戦略特区である大阪府では2016年4月に府民泊条例施行が施行されました。しかし特区法施行令により最低滞在日数が6泊7日と定められていることが壁となり、5月までに民泊申請を行った事業者は1件のみです。府は最低滞在日数の短縮を求めています。また、2016年1月に民泊条例が施行された東京都大田区でも、認定された物件はわずかです。
一方で政府は、行政の許可を受けなくても、インターネットから民泊開業の届け出が可能になる民泊新法を検討しており、早ければ2017年中に施行される予定です。新法では、「マンション管理規約に違反していないこと」「民泊施設であることがわかる標識を設置すること」などの複数の要件を満たせば民泊営業は可能になるため、可決されれば合法的な民泊のハードルは低くなると予想されます。
しかしその一方で、各自治体が独自に民泊に関する規制を設けることは禁止されていません。言い換えると、民泊のルールや外国人観光客のマナー、近隣住民の理解などが各自治体で得られなければ、日本における民泊の全面的な解禁は、まだまだ先になる可能性が高いと言えるでしょう。