日銀購入で拡大する国内REIT市場のゆくえ

J-REIT(Jリート)市場が誕生してから2016年9月で15年となります。
アベノミクスとともに始まった日銀の金融政策による株価への影響が、報道などで大きく取り上げられていますが、それに比べると、REIT市場への影響が言及されることはあまり多くありません。
しかし、日銀は年間購入枠いっぱいまで買い続けており、2015年12月には、銘柄の投資口割合10%以内にまで広げました。すでに銘柄数は50を超え、時価総額12兆円の目前まで市場は拡大しています。

最初の山だった2007年の倍の高さに近づいています

REITは、投資家から集めた資金を、不動産(Real Estate)に投じる投資信託(Investment Trust)です。
投資用にマンションなど建物を買うよりも少額で、東京証券取引所に上場している銘柄に投資でき、各銘柄は複数の不動産を運用しているため、分散投資にもなります。利益の90%超を配当すると法人税が免除されるため、配当性向が高い特徴があります。
スタートして7年目の2007年5月に、時価総額6兆8,000億円と最初の頂に達したREITは、2008年に起きたリーマンショックで、いったん時価総額2兆3,000億円(2009年2月)まで落ち込んだものの、2012年には35銘柄、時価総額4兆2億円レベルにまで持ち直しました。
日銀の買い入れ政策もあって、それ以降は、ほぼ右肩上がりで時価総額が伸びているだけでなく、指数も最近では最高値だった2015年1月の1990に近づき、それを上回るかどうかが焦点になりつつあります。

日銀のREIT購入は2010年から6年続いています

日銀のREIT買い入れは、安倍政権が始まる前の2010年12月からでした。日銀は具体的な銘柄は公表しませんが、2010年11月に買い入れ方針を公表しています。
・ AA格相当以上で信用力、その他に問題のないもの
・ 売買成立が年間200日以上あって年間売買累計額が200億円以上のもの
・ 買入額は、発行残高の5%以内

日銀はREIT銘柄を順調に買い進み、「発行残高の5%以内」というルールを守っていると15年内に投資対象となる銘柄が枯渇する可能性が指摘され、2015年12月に「補完措置」を発表し、買入額を「発行残高の10%以内」にまで拡大させました。
日銀は2012年から、お金の供給量(マネタリーベース)が年間80兆円になるように量的緩和を実施しています。そのうちREIT買い入れは、年間900億円程度とされており、これは変更されていません。
この補完措置によって、この先4年程度は、日銀がREIT買い入れを進めることができるよう、制度上の整備が行われたことになります。2016年5月現在、REITに上場している53銘柄のうち日銀は32銘柄を買っており、そのうち日銀が5%以上保有しているのは13銘柄です。

REIT市場の伸びと株式市場

日本の株式市場とREIT市場は、イギリスのEU離脱の帰趨を見定めたい動きの強まった2016年5月末から調整相場になりましたが、2015年12月の日銀によるREIT買い入れ枠の拡大、さらに2016年1月のマイナス金利導入決定した以降のREIT市場と株式市場の指数(TOPIX)推移を比較すると、REITの「上向き」傾向と株式の「下向き」傾向が対照的です。
REITの価格上昇は、不動産購入と同じように、物件購入に融資が活用されるため、マイナス金利はコスト削減、ひいては分配金増加になる可能性が高いという見込みからでした。期待が先行しており、それが本当かどうかは、これから試されることになります。
なおREITは、分配金が大幅に減少しない限り価格が下がると利回りが上がる関係にあり、良いタイミングで購入すれば高利回り運用が可能です。結局、REITのアセット(資産)が、手堅く安定して収益を上げられるかどうかがポイントなのです。

REITのアセットの中味が変化

REIT指数が第一のピークを迎えた2007年5月の段階で、J-REITが保有していた不動産をアセット別(取得価格ベース)にみると、オフィスが54.1%、住宅21.2%、商業19.5%、ホテル3.4%、物流1.3%、半分以上がオフィスでした。
ところが、2016年2月末になるとオフィス45.9%、商業17.8%、住宅16.7%、物流11.3%、ホテル4.4%、ヘルスケア0.6%、その他3.2%となりました。
アセットの核がオフィスであることは依然として変わりませんが、9年間の変化として、オフィスと住宅、商業が比率を下げ、代わって物流、次いでホテルが伸び、ヘルスケア施設が登場しました。
このアセットの変化は、日本の産業構造の変化を示しています。労働人口の減少、総人口の減少は、オフィス・住宅用不動産需要を減退させる一方で、インターネット通販などの普及もあって大都市圏近辺や高速道路のインターチェンジ近辺に巨大倉庫が出現しています。
J-REITの中でも、全国主要都市の物流施設、都会のヘルスケア施設の資産規模は拡大していくことが確実視されます。

今後も変化していくJ-REIT市場

REIT指数は <オフィス> <住宅> <商業・物流等> で比較できます。
2003年3月を1,000とするJ-REIT指数は、いったん2007年5月に2,612を示した後、リーマンショックで落ちて2010年1月頃に1,000となり、2015年1月、1,990となり、その後は調整局面です。1.9倍程度になったJ-REIT指数とオフィス指数は同じ程度ですが、住宅、商業・物流等は2.5倍前後まで上がりました。
日銀の買い入れ動向はもちろんのこと、外国人の売り越し、買い越し動向、投資法人の再編などにも気を配って、投資判断を決めるようにしましょう。