ソニー不動産とYahoo!が掲げた「不動産流通革命」の現在は?

ソニー不動産とYahoo!は2015年7月、共同で企画・開発を行った不動産売買プラットフォーム「おうちダイレクト」のサービスを発表し、同年11月からサービスを開始しました。
もともと大手AV機器メーカーであったソニーが2014年4月に不動産事業への参入を表明し、「ソニー不動産」を設立したことも、不動産業界では大きな話題となりました。さらに「おうちダイレクト」のサービスは、「不動産流通革命プロジェクト」と銘打たれ、従来の常識とはかけ離れた新しいサービスとして業界に衝撃を与えました。
サービス開始から半年以上が経った現在、「おうちダイレクト」はどのような状況となっているのでしょうか。

サービス開始当初は売主の仲介手数料無料で注目されたが…

通常、不動産物件を売却する際は不動産仲介会社の査定を参考に売却価格が決定され、物件の宣伝や物件情報の掲載、買主への対応などは仲介会社が行い、仲介手数料は売主と買主の双方が支払う「両手取引」が一般的です。
両手取引の問題点は、仲介会社が手数料を双方から受け取ろうとして、他社の顧客をマッチングさせないことです。
そのため買い手がつかず、売却価格を下げざるを得なくなるという売主側のデメリットが指摘されてきました。また、買主側も不動産取引の知識のない人がほとんどであり、双方の知識・経験不足を利用する両手取引には、不透明な点があるのではないかという指摘もありました。
その点、おうちダイレクトは、成約すると買主側のみが手数料を支払い、売主は手数料を支払う必要がない「片手取引」なので、売主側に有利な仕組みと言えるでしょう。
また、おうちダイレクトは、売主と買主が直接サイト上でやりとりをすることが可能になっています。買主は気になる物件を見つけたら、売主に「買いたいリクエスト」を送信します。そして、物件についての疑問点や気になる点を直接聞くことができます。
また、売主は物件のメリットを細かく伝えられます。サイト上では互いの個人情報は明かされないため、気軽にやりとりができます。
その他にも、独自の不動産価格推定エンジンにより「自分が所有する物件の推定成約価格」をリアルタイムで知ることができるので、仲介会社に査定を頼まなくても、売却希望価格を決める時の参考にできます。
サービス開始当初は、売り出し可能エリアは中央区や港区など東京都でも人気の高い一部地区のみでしたが、今年に入ってから東京23区にエリアを広げ、2016年6月からは横浜・川崎エリアも対象とすることを発表しました。

両手取引という慣例を突破するのは難しい

「おうちダイレクト」のサービスが発表された当時は、従来の中古物件仲介業の常識をひっくり返すこの試みを「脅威」としてとらえる関係者もいました。一方で、不動産業界団体の反発は強く「情報の中立性・公平性を損なう」ことを理由に、不動産流通経営協会(FRK)や全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が、ヤフー不動産側への情報提供を取りやめるなどの事態も起こりました。
また、対面ではなくネット上で不動産を売買するという方法に慣れていない日本では、この手法への抵抗が強かったこともあり、サービス開始当初は売却物件も数件程度と極めて少なく、少しずつ売却物件は増えていったものの、売り手側の反応が良いとは言えない状況が続いていました。
ソニー不動産が掲げたサービスの「売り」は、売却・購入担当のエージェントを別にする「米国型」というものです。しかしそれにも関わらず、取引情報の開示がなく絶対に両手取引をしないという姿勢もなかったため、業界内でも疑問の声が挙がっていました。
もちろん、おうちダイレクトが提供するような片手取引が正しく機能すれば、良いことも多いです。中古物件の流通が米国のように活発になれば、業者側は売上が上がり、売主は高額で物件を売却でき、買主は希望通りの物件を購入できるという、双方にとってメリットのある結果にも結び付くでしょう。
ソニー不動産も取引の透明化による流通の活性化を目指しましたが、「両手取引」という業界の長年の慣例を突破するのは難しいようです。

まとめ

おうちダイレクトは、当初は従来の慣習を打ち破る画期的なサービスとして注目されたものの、現在は「ユーザーに支持されている」とは言いにくい状況です。売主側へ向けたキャンペーンなどを行ってはいるものの、現在の登録物件は東京・横浜を含めてもわずか34件です(2016年6月22日現在)。
日本では、不動産取引の知識や経験が少ない顧客が多く、現在も両手取引が中心です。おうちダイレクトのようなサービスが本当に中古物件市場の活性化につながるかどうか、今後の展開が注目されます。