不動産市況に大きな影響を及ぼす「金利上昇」は来るか?

2016年6月23日にイギリスの国民投票が行われました。日本時間の昼頃に欧州連合(EU)からのイギリス離脱が濃厚になると、東京市場では急激な円高と株安が進行し、円相場は一時1ドル99円台、日経平均株価は1,200円以上下落しました。その後の世界経済は混迷を極め、今後の景気動向に関心が集まっています。
日本では、2020年に東京五輪が開かれます。56年ぶりの夏季五輪開催は経済のカンフル剤として期待されています。これを機に日本の経済状況は、不動産市況は果たしてどう変化するのでしょうか?
そこで、「五輪開催都市」や「金利上昇」に焦点を当てながら、2020年前後の東京の不動産市況について考えてみたいと思います。

「五輪後に景気が悪くなる」は本当?

五輪にまつわるトリビアの一つに「五輪後、開催国の景気は悪くなる」というものがあります。
日本は1964年の東京五輪後の1年だけでしたが、経済が停滞した「昭和40年(65年)不況」と呼ばれる現象がありました。五輪開催となれば、7~8年分の公共事業が一挙に進み、観光客も増加し、景気が良くなるイメージがありますが、実際はそうでもないようなのです。
国際通貨基金(IMF)の資料によると、1988年のソウル五輪以降の、五輪開催国の経済成長率を比較したところ、開催年よりもその翌年が上昇したのはアメリカとイギリスだけで、韓国、スペイン、オーストラリア、ギリシャ、中国はいずれも悪化していたことが分かりました。
2004年にアテネ五輪のあったギリシャでは五輪開催後、財政にブレーキがかかり今では債務問題で国中が大混乱に陥っています。また、2008年に北京五輪のあった中国では、遅れているインフラを一気に整えようと巨額のお金を投じました。その結果、2007年の経済成長率は14%を超えていましたが、開催年と翌年には9%台に落ち込んでしまいました。
経済成長率が上昇した英国でも、2008年のリーマン・ショックで主力の金融業が打撃を受け、厳しい状態が続く中でロンドン五輪を開催した結果、五輪閉幕後は景気低迷と、何年も続く緊縮財政という厳しい現実が待ち構えていました。
五輪開催国でのこうした経済失速の事実は、五輪開催に照準を合わせて国や企業が前倒しで行った投資や、国内の消費拡大による反動がもたらした結果とも言えます。
東京五輪は2012年のロンドン五輪と同様、既存施設をフル稼働させた環境配慮型の都市祭典になる予定ですが、都内を中心にオフィスビルやマンション、ホテルなどの開発は急ピッチで進められており、これまでのパターンで行けば東京五輪後に経済が失速する可能性は十分に考えられます。

金利が上がるタイミングはいつ?

仮に2020年の東京五輪後、開催国である日本の経済が失速した場合、日本国債は信用を失い価格下落と金利上昇を招く可能性があります。
もちろん、金利上昇は好景気の場合や政府・日銀による政策によっても生じますが、不況下では「意図しない」金利上昇をもたらし、景気動向や不動産価格にまで深刻な影響をもたらす可能性があるのです。
日本は1990年代以降、バブル崩壊やリーマン・ショックを経験し、後に「失われた20年」と呼ばれる低成長期に突入しました。今なお、デフレ脱却には至っていません。日本では国債のほとんどを日銀が買い入れるといった財政出動が行われているため、低金利の状態が続いています。
仮に東京五輪などによる経済効果で、日銀が政策目標とする名目インフレ率2%が達成された場合、これまで行われてきた金融緩和政策は必要なくなります。2018年度中に安倍首相と日銀の黒田総裁の任期も切れてしまいます。景気が上向きとなり政権が変わるタイミングこそ、低金利時代が終わりを告げ、金利の上昇局面を迎える時期になるかもしれません。

金利が上がると不動産市況はどうなる?

金利が上昇した場合、不動産市況にはどのような影響が起こるのでしょうか。
まず予想されるのが、住宅ローンや不動産投資ローンの金利上昇です。低金利で推移してきたローンが一気に上昇に転じるとなれば、ローンを組んで戸建住宅やマンション、アパートを購入しようとする人の割合は当然減ります。
このため、デベロッパーは在庫を抱え込まないよう販売価格を下げ、用地仕入れも抑え気味になるでしょう。利回りの高さが再認識され、好調な推移を見せていたREITなどの投資物件も、金利が上昇すると利息負担の増加、収益の減少から、一気に下落する恐れがあります。
このように、金利上昇は不動産市況にとって逆風の面が多いのですが、不動産投資家にとっては良質な物件が安く買えるチャンスと捉えることもできます。

五輪開催後の北京とロンドンの不動産市況はどうなった?

ここ数年、都内の新築・中古マンションの価格変動は上昇基調にあります。この傾向と深く関わっていると考えられるのが、2020年の東京五輪と円安を背景に東京の不動産を購入している海外の投資家たちの存在です。
同じ五輪開催国の中国では、2016年3月に発表された『中国経済週刊』に、北京と上海の不動産価格が過去10年で400%も上昇したと報じられていました。中国富裕層が東京エリアの高額物件の不動産を購入しているのも、北京での経験を踏まえ、将来の値上がりを期待しているからでしょう。
一方、ロンドンも北京と同様、不動産価格の高騰が確認されています。ロンドン五輪のメインスタジアムが建てられたオリンピック公園周辺の1戸当たりの不動産価格が、五輪招致決定後の2005年7月から約10年で84%も上昇したというのです。ロンドンは元々、不動産価格が高い地域として知られていましたが、五輪開催によって拍車がかかり、価格高騰を引き起こしたと考えられます。

金利上昇に耐え得る優良物件を探し出す!

北京とロンドンの五輪開催後の不動産市況を見る限り、景気の悪化が必ずしも不動産市況と連動しているわけではないことがわかっていただけたかと思います。
しかし日本は、消費税率10%への値上げを2019年10月に控えています。2020年の東京五輪開催前には、海外の投資家たちが長期譲渡所得を狙って不動産物件を多数売りに出すことが予想され、市場価格が値崩れするリスクが付きまといます。この2つの事象に対して、不動産市況がどんな動きをするのか注意深く見守りながら、金利上昇にも耐え得る物件をいかに早く見つけ出せるかが、不動産投資を成功させる鍵となりそうです。