しくじり大家に学ぶアパート経営① 「レバレッジを利かせすぎた大家さん」

かつて経験したことのないマイナス金利時代。しかも金融機関の融資態度はバブル期並みの積極姿勢といわれています。不動産投資を目指す方にとっては、まさに絶好の投資チャンス到来といえるでしょう。
少ない自己資金でも、借り入れによって大型の不動産投資が可能な現状は、いわゆるレバレッジを利かせやすい環境にあります。しかしバブル期とは異なり、不動産の値上がり益(キャピタルゲイン)がほとんど望めないため、身の丈に合わない多額の融資には、大きな危険性が潜んでいます。
今回は、アパート経営において陥りやすい失敗の中でも、レバレッジを利かせすぎた「しくじり大家さん」の失敗例を紹介し、健全なレバレッジについてお話しします。

不動産投資におけるレバレッジ

不動産投資におけるレバレッジとは、融資を活用して自己資金以上の不動産投資を行うことです。不動産投資の利回りは、借入金利よりも大きいのが通常であるため、融資を利用しても十分な収益が残ります。
例えば、借入金利2%で、表面利回り7%の収益物件を購入した場合、その差の5%がキャッシュフローとして残ります。借り入れたお金が利益を運んでくるわけで、これを「イールドギャップ」といいます。「借金も財産のうち」という言葉も、このあたりから生まれたのかもしれません。
しかし、融資は引き出せるだけ引き出した方がいいとは限りません。収益分岐点が悪化し、ちょっとした変化で痛い目をみる大家さんもいるのです。代表的な失敗事例を紹介しましょう。

たった1ヵ月の空室発生で赤字へ転落……

目いっぱい融資を引き出した場合、家賃収入の大部分をローン返済が占めるようになります。投資用ワンルームマンションの大家さんなどに見られる「しくじり」で、「月額家賃からローン返済額を引いたら、数万円しか手元に残らない」という声をよく耳にします。
これでは、たった1ヵ月の空室発生で、たちまち赤字に転落します。「ローンが完済すれば、後はまるまる収入になるし、頼れる資産が残るのでこれも一種の財産形成です」と説明する業者もいますが、わずか1ヵ月の空室で赤字に転落するようでは、健全な不動産投資とはいえません。

経年劣化に対応できず、負のスパイラルへ

ローン返済額が大きく、手元に残る利益が少ない場合、まとまった費用が必要となる修繕には手が回りにくくなります。さらに建物の劣化が入居率を悪化させ、それが家賃の低下を招くという負のスパイラルに陥りがちです。最悪の場合は、「満室でも赤字」という苦しい状況に直面する大家さんもいるぐらいです。
そうなってから修繕費用の融資を金融機関に申し込んでも、収益性が悪化した物件の融資が通りにくいのはいうまでもありません。少なくとも、毎月一定の修繕費用を積み立てられる程度にローン返済額(=借入額)は抑えておかないと、健全な不動産経営はできないでしょう。

金利上昇でパニックに

数千万円単位、時には億を超える融資を受けて投資する不動産経営では、ローン金利が1%上昇しただけで、支払総額が数百万円から数千万円も増加します。バブル崩壊以降、金利の下げ基調が続いていたため、金利上昇を経験していない大家さんも多くいます。
突然の金利上昇でパニックに陥る大家さんも少なくないでしょう。借入額が大きければ大きいほど、金利上昇のダメージは大きくなります。過度な融資には注意が必要です。
少なくとも、現在の超低金利下で、ようやく収益が出るような資金計画は避けるべきです。

健全なレバレッジとは

レバレッジを利かせ過ぎるとリスクが拡大しますが、かといって自己資金100%で不動産投資を目指すのも賢い方法とはいえません。不動産投資には10~20年という長い時間が必要です。資金力に心配のない50歳、60歳になってから不動産投資を始めても、再投資する時間が限られるため妙味は乏しいでしょう。
つまり、大き過ぎない程度のレバレッジで、若い頃から不動産投資をスタートすることがポイントなのです。そのためには次に挙げる数字が一つの指標となります。

「返済比率は50%以下を目標に」

返済比率とは、年間家賃収入に占める年間ローン返済額の割合です。年間家賃収入500万円の物件で、ローン返済額250万円なら、返済比率が50%となります。家賃収入から逆算して健全な返済額を導き出し、50%以下になるように借入額と返済期間を調整するのがポイントです。
仮に返済比率が50%を超えるような場合は、価格が安い物件を探すか、返済期間の長い物件(木造よりも鉄筋コンクリートや鉄骨系が返済期間は長くなる)を探すようにして、行き過ぎたレバレッジを避けるのが賢明です。
空前の低金利と、金融機関が積極的な融資姿勢を示している現在は、不動産投資の絶好のチャンスです。借りたお金までもが稼いでくれる(イールドギャップが大きい)不動産投資では、適切にレバレッジを利かせて融資を上手に活用すべきです。
過度な借り入れは損益分岐点を悪化させ、ちょっとした変化で赤字に転落する危険性をはらんでいます。
また、現在の低金利がいつまで続くかも不透明です。わずか1%の金利上昇で、ローン返済総額が1千万円単位で増大するのが不動産投資です。そういう意味では、返済比率を50%以下、可能なら40%以下に抑えると余裕を持って運用できます。
何事も、「過ぎたるはなお及ばざるが如し」なのです。
しくじり大家に学ぶアパート経営シリーズ
・しくじり大家に学ぶアパート経営① 「レバレッジを利かせすぎた大家さん」
・しくじり大家に学ぶアパート経営② 「インターネットを鵜呑みにしちゃった大家さん」
・しくじり大家に学ぶアパート経営③ 「空室対策を甘く見ちゃった大家さん」
・しくじり大家に学ぶアパート経営④ 「管理会社選びを軽視しちゃった大家さん」
・しくじり大家に学ぶアパート経営⑤ 「リフォームに我を出しちゃった大家さん」
・しくじり大家に学ぶアパート経営⑥ 「資金管理で失敗しちゃった大家さん」