為替と不動産価格は関係あるの? 知っておくべき為替のこと

『マネーは世界を巡る』などと言われていますが、正確には『投資先を求めて』という目的語が必要でしょう。そもそも国境という壁がないマネーは、金融市場のみならず現物市場にも矛先を向けます。そして、受け皿となる不動産市場も大きなセクターの一つです。
円高を背景に、ロックフェラーセンターをはじめとするニューヨークの不動産を日本が買い占めると騒がれたのは、1990年代前半でした。その後バブルが崩壊し、日本の不動産投資にはいまだに悪いイメージが付きまといます。
そして今、かつて日本人が海外の不動産に投資したように、外国人が日本の不動産を買うことが当たり前になっています。実を言うとこの二つの話には、為替レートが関係しています。
今回は、不動産投資家の方も知ってきたい「為替」について解説していきましょう。

為替レートはなぜ動く?

為替レートが動く仕組みの一つに、金利差があります。日本のゼロ金利で運用するより、海外の高い金利で運用したいという投資家が増えると、円が売られて外貨が買われるため円安が進みます。
また、「通貨=商品」という概念も仕組みの一つです。為替レートが高くなったり安くなったりする仕組みは、商品の価格変動と同じです。人気があれば需要が高まって通貨の価格は上がり、供給量が増えると、通貨安につながります。「商品(通貨)が欲しい」という投資家行動から為替変動が起こるわけです。
このため、海外から日本の株式や不動産への投資が増えると、円を買う需要が高まり円高傾向となります。また、企業が輸出をすると相手国から受け取った外貨を自国の通貨に両替しますが、この際に受け取ったドルを売り、円に両替して供給量が増えると円安傾向になります。
「失業率」「雇用者数」「物価指数」などの経済指標も、為替変動のきっかけになります。戦争や暴動、災害などの有事も同様です。実際の外国為替市場ではもっと複雑な投資家行動があり、これには投資家心理が大きく影響してきます。
外国為替市場で市場が乱高下する場面がありますが、「急激に上がったら、いったんは下がる」「底値で買う人たちもいるから、まだ下がる」といった思惑をきっかけに市場は大きく動きます。
ただし、これまでの円安は、おもに日本の大幅な金融緩和を背景に、金利差やインフレ期待などが複雑に絡み合った結果が大きく影響しています。

外為市場が不動産市場に与えるインパクト

外国為替市場が不動産市況にどんな影響を与えるか、少し見てみましょう。
アベノミクス以降の円安の影響で、外国人による日本国内の不動産取得額は増加しました。2013年以降でも円の価値(レート)は、50%も下落しています。外国人から見れば、日本の不動産は5割安になったことになり、お買い得でした。円安になったため、キャピタルゲイン狙いの投資資金が流入したわけです。
加えて、2020年の東京オリンピック開催による不動産高騰への期待もあります。東京を中心に高額なタワーマンションなどが中国人投資家などによって次々と買われ、話題になったのも記憶に新しいところでしょう。
また、インバウンド需要が見込めるホテルについて、アジア資金による取得拡大が続いたことも、全体の不動産取得額を押し上げる結果になりました。
しかし、2015年下期以降、金融市場で世界的にリスク回避の動きが支配的となり、日本国内の不動産取引にも影響を与えました。2015年下期における外国人投資家による日本国内の不動産取得額は、前年同期の5割を下回ったものとみられ、円高進行も相まって急速に熱気が冷めたようにもみえます。
また、改めて中国経済の減速ぶりが浮き彫りになっていますが、中国人投資家による日本の不動産投資の勢いが今後衰えていくのではないかとの懸念もくすぶっています。
さらに、イギリスの欧州連合(EU)離脱結果を受けて投資家心理が冷え込み、外国人投資家がリスクを取ることに慎重になっているとの見方もあります。円高傾向が続くと、日本の不動産への追加投資を凍結し、利益確定のために保有物件の売却を検討する動きが予想されるからです。

ドル安・円高傾向は続く?

最近の外国為替市場は、EU離脱ショックなどで円が一時急騰し、100円を割る瞬間もありました。
しかし、これもいったん後退し、今度は来日したバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長が、安倍首相や黒田日銀総裁と会談したことで、「ヘリコプターマネー」政策(ヘリコプターからお金をばら撒くように給付金を出すという、アベノミクスの代替策)がはやされて、円が売られて戻す荒っぽい展開となりました。これについては、「投機筋が円買い過熱を巻き戻す口実に使っただけ」との声もあります。
米FRBの年内利上げの可能性が低くなる中で、ドル安・円高の傾向は続くとの見方が一般的です。ただ、懸念される中国人富裕層の海外不動産投資意欲は、依然として高いとの指摘もあり、当面、外国為替市場では思惑が入り混じった取引展開となりそうです。