アパートローンとマイナス金利、固定金利と変動金利が逆転

これまでアパートローンでは、固定金利よりも変動金利のほうが低金利なのが当たり前でした。だから、「当面の返済額を選ぶなら変動金利、将来の金利上昇に備えるなら固定金利」という視点で金利を選んでいました。
しかし、2016年2月の「マイナス金利」の影響で、アパートローンの「固定金利期間選択型」においては、固定金利のほうが低金利になるという逆転現象が生じています。逆転現象の理由と今後の見通しを踏まえると、アパートローンの借り換えは得策なのでしょうか
今回は、マイナス金利が及ぼすアパートローンへの影響を考えます。

固定金利と変動金利が逆転

2016年7月の店頭金利を調べると、三井住友銀行の「アパートローン」は、変動2.475%、5年固定1.870%、10年固定2.01%(筆者店舗にて確認)となっています。また、オリックス銀行「不動産投資ローン」は、変動2.675%、5年固定2.5%です。
(同行ウェブサイトより https://www.orixbank.co.jp/personal/property/)
また、2016年の2月以降、住宅ローンでも同様の逆転現象が生じており、借り換えをする人が相次いでいます。イギリスのEU離脱を受け、安全な資産として世界から日本の国債が買われたため、10年国債の利回りは過去最低の水準です。
そのため、7月から各大手銀行は住宅ローンの金利を過去最低の水準まで引き下げ、三井住友信託銀行にいたっては10年固定0.5%がついに0.4%となりました。

短プラが下がらないから、逆転現象に

そもそも変動金利が固定金利より低く設定されるのは、金利変動のリスクを利用者が負うからです。金融機関の調達金利が急上昇した際には、利用者の返済額も増えます。
一方、固定金利では、金融機関がそのリスクを負います。もし調達金利が急上昇しても、所定の期間中は低いままの金利で貸し続ける契約のため、リスクを考えてやや高めに設定されているのです。
金融機関が変動金利を定める基準は、主に「短期プライムレート(以後、短プラ)」です。短プラとは、信用度に問題のない優良企業への1年未満の短期融資時に適用される金利です。また、固定金利は10年もの国債の流通利回りが基準になっています。
マイナス金利の導入により、理論的にはどの金利も下がっていくと思われていましたが、国債は大幅に低下してマイナス圏なのに対し、短プラはほとんど下がりません。このため、10年固定金利が変動金利よりも低くなるという逆転現象が生じています。
なお、アパートローンの中には、変動金利の基準を長期プライムレート(上記企業への1年以上の融資に適用される金利)とするものもあります。長期プライムレートは下がっているため、こちらは逆転現象が起こらず、マイナス金利の恩恵を受けている変動金利といえます。

マイナス金利政策が長引けば、変動金利も下がる

短プラが下がらないのは、それが銀行にとって多くの既存顧客の金利に影響があるため、収益悪化に直結するという内部事情が影響しているという見方があります。つまり、どこか一行でも短プラを下げれば、競争原理によって追随する金融機関が増え、短プラが下がる可能性があるでしょう。
また、短プラへの影響は、政策金利(中央銀行が一般の銀行に融資する際の金利)の引き下げよりも、マイナス金利のほうが時間を要するという見方もあります。つまり、マイナス金利が長期化すれば短プラも下がるという意味です。
鍵を握るのはマイナス金利政策の動向ですが、残念ながら日本経済が大幅に改善しているとはいえない状況です。消費増税も延期となったため、マイナス金利政策は長期化していくと予想されます。
いずれ短プラが下がれば、金利の変動リスクを利用者が負担する変動金利のほうが、固定金利よりも低くなり、逆転現象は解消されるでしょう。

マイナス金利とアパートローンの借り換え

アパートローンを利用している不動産オーナーは、この状況をどう考えればいいのでしょうか。
現在のアパートローンが、短プラに連動した変動金利である場合、「短プラが下がる日が近い」と考えればそのままで、「時間がかかる」と考えれば、その予想期間に見合う固定金利への切り替えを検討することになります。
現在のローンが固定金利期間中、あるいは期間終了間近である場合は、既存金融機関でのローンプラン変更と優遇交渉に加えて、他行への借り換えも検討の余地があります。
借り換えには、事務手数料、登記関連費用、違約金などの諸費用が掛かります。そのため、既存金融機関での変更が有利なケースが多いようです。なお、他行への借り換えは収支だけを見るのではなく、既存金融機関との関係が悪化しかねないことにも留意が必要です。
ちなみに、一般的な住宅ローンの借り換え目安としては、ローン金利差1%以上、ローン残高1,000万円以上、返済期間10年以上で、3,000万の借り換えで諸費用の目安が100万円、といわれています。
アパートローンの場合は、金融機関や契約時の条件によって、もう少し幅があるようです。違約金をはじめとする諸費用の確認が肝心ですので、忘れないようにしてください。
今回は、アパートローンの金利動向やその理由、オーナーとしての対応について説明しました。
現在のマイナス金利下で、金利が急上昇することは当面考えにくいですが、定石通りに進まないのが世の常です。ローン情報だけでなく、経済情勢にもアンテナを張って、常に防衛手段を考えておくことをお勧めします。