今後、建築費が下がる理由を徹底解説

不動産投資オーナーにとって、「より良い投資物件を、より安く購入する」ことは永遠の命題ですが、このマンション販売価格に直結するのが、マンションの「建築費」です。
2020年に東京オリンピックを控えて都心の再開発ラッシュが進んでいます。この建築費は今後どのような動向を示すのでしょうか。
今回はマンション建築費をめぐる現状について掘り下げます。

建設資材の需要は堅調

マンションなどの建築事業に欠かせない建設資材の需要は、2010年度からおおむね増加傾向が続いています。国土交通省の「平成28年度主要建設資材需要見通し」によれば、本年度のセメント・生コンクリート・骨材・木材・普通鋼鋼材・アスファルトといった主要な建設資材の国内需要量は、いずれも前年比プラス(0.8~3.1%)となる見通しです。
一方でその価格は、一般財団法人経済調査会が公表している「建設資材価格指数」(全国平均)によると、2014年10月をピークに下降線をたどっています。

工事作業員の「人手不足」が建築費にも影響か

震災復興事業、公共工事、さらに民間の工事が増えるにつれ、人手不足(職人不足)が次第に顕著となってきました。そのため、建設工事に従事する作業員の人件費である「労務費」も膨らみつつあります
公共工事に関しては資料が公表されており、国土交通省が定める2016年の「公共工事設計労務単価」は、全国平均で前年比4.91%増、主要10職種(特殊作業員、普通作業員、軽作業員、とび工、鉄筋工、特殊運転手、一般運転手、型わく工、左官、交通誘導警備員)に限ると6.26%増となっています。
不動産、特にマンションの場合には立地や建物のグレードにもよりますが、おおむね建設費の30〜40%程度が労務費とされます。人手不足とそれに伴う人件費の高騰が、今後の住宅価格に影響を及ぼすことは必至です。東京オリンピック開催に向けた工事もこれから本格化し、慢性的な人手不足の状況から脱却することはしばらく望めないでしょう。
しかしながら、建設投資全体から見ると、五輪施設関連の直接投資はそれほど大きくないという声も聞かれます。不動産関連事業で見てみると、東京オリンピック景気は思ったほど大きくなさそうな気配です。

大都市圏の地価が上昇し、用地仕入れが難しい状況に

リーマンショック後に下落傾向が続いていた国内の地価ですが、大都市圏を中心に上昇へ転じるエリアが拡大しています。
平成28年地価公示の住宅地平均は、東京圏で0.6%、大阪圏で0.1%、名古屋圏0.8%上昇しました。東京圏と名古屋圏では3年連続で上昇しています。さらに個別に見れば、東京都中央区(9.7%)、千代田区(9.4%)のほか、都心部で上昇地点は数多く存在しています。
大都市圏だけでなく地方の中心都市などでも、福岡市2.8%、札幌市2.0%、広島市1.4%など、地価上昇の傾向が見られ、実際の取引価格は、公示地価より顕著な上昇を示しているケースも多いと思われます。
もちろん、すべての住宅地の価格が一様に上昇するわけではなく、個別の要因に大きく左右されます。しかし、立地条件の良さが重要なマンション建築において、「値上がりしそうもない」用地を仕入れることは賢明とはいえず、今後の需要を考えれば、以前のように郊外立地を推し進めることも困難です。多くの場合、地価が上昇中の用地を仕入れざるを得ないでしょう。
しかし、地価上昇時にはまとまった用地の売り惜しみが生じ、デベロッパー同士の競合も激しくなっているのが現状です。競合になるほどの状況というのは、つまりは事業化できる物件が少なくなってきているわけです。
デベロッパーとしては、用地取得の高値買い(高値で買わないと用地が取得できない状況)を踏まえると、ゼネコンにも建築費で協力してもらわないと、デベロッパーの事業収支が合わなくなり、ますますゼネコンなど建築関係の仕事が少なくなるという、負のスパイラルに陥る可能性が十分あると思われます。
また、投資マンションについても、東京23区中の千代田区、港区など中心5区では、前述のデベロッパーなどによる用地取得難を受けて、供給が難しく、23区でもやや西部地区寄りに供給拠点が移っています。その分、ゼネコンをはじめとする建築会社への発注額も抑制せざる得ない状況でもあります。

まとめ

今回は、さまざまな観点から、マンションの建築費をめぐる状況をご説明しました。建設資材の調達費や労務費の影響はもとより、デベロッパーなどによる用地取得難は思った以上に深刻なようです。
「新価格」「新々価格」といったように、安易にマンション価格に転嫁するのも難しいため、用地の取得費が高値であり続ける限り、建築費は下落せざるを得ないというのが現状でしょう。