猫ブームはアパート経営にも波及?

アパート経営の理想は、空室をなくすこと、そして入居者により長く居住してもらうことです。このために、アパートオーナーはあの手この手で知恵を絞ります。
そこで今回は、最近話題を集めている「猫ブーム」が、アパート経営にどのような影響を与えているのか、その実態を解説します。

犬よりも猫を飼う人が増えている

1990年代後半から押し寄せたペットブームの頃、話題の一つになったのが犬の散歩です。子どもにせがまれ子犬を飼ってみたはいいけれど、毎日の散歩にお父さんの方が疲れてしまったという話がありました。
これだけが理由ではありませんが、実際に犬の登録数は2003年度をピークに減少しています。その一方で増えているのが猫です。2015年の犬猫飼育実態調査によると、猫が987万匹、犬が991万匹と、猫の飼育数が犬に迫っています。5年前までは200万匹以上の差があったそうで、近年の猫ブームの勢いが分かります。
賃貸物件では、まだ「ペット飼育不可」という物件も少なくありませんが、ここ数年は新築分譲マンションのペット飼育可能という物件が増加しています。
特に猫は、完全に室内飼いで散歩させる必要がない点や、エサなどの飼育費用も、犬に比べて安いことなどといった理由も人気上昇の背景にありそうです。
また、帝京科学大アニマルサイエンス学科准教授の横山章光さんは、「犬はトレーニングが必要ですが、猫は犬ほどの訓練は必要なく、“猫かわいがり”しやすい。(猫を飼う)単身者や高齢者には、猫との関係の方が心地いいのかもしれません」と話しています。(毎日新聞2015年11月19日)

ペット共生型のシェアハウスが人気物件に

少し本筋と離れますが、ペットの飼育は医療費削減にも役立つという事例が海外で報告されています。
ドイツの統計では7,547億円、オーストラリアでは3,088億円と、それぞれペットの飼育によって年間医療費が抑制されたそうです。スイスでは、「犬と猫の飼育には明らかに医療費を削減する効果があった」との調査結果も報告されています。
明確な理由は不明ですが、アニマルセラピーと呼ばれるように、「癒しの存在」としての役割があったのではないでしょうか。「ペットと触れ合うことで、認知症高齢者に意欲が見られようになった」などの事例は日本でも報告されています。
こうしたペット飼育の隠れたメリットを、アパート経営のヒントにして成功した事例があります。
築44年、駅から徒歩12分、木造2階建てと必ずしも好条件とはいえない物件が、「ペット共生型」のシェアハウスとして改修したところ、人気物件として生まれ変わったという事例です。。
改修のポイントは、約20坪あった庭を芝生にし、ドッグランとして使えるようにしたことです。これはあくまで犬対策ですが、アパートには現在2匹の犬と2匹の猫が仲よく飼われ、1年前の改修以降、満室経営が続いているそうです。家賃も戸建てとして貸す場合より、約1万円上乗せできたといいます。

入居者同士のコミュニケーションも活発に

上述のような「ペット共生型賃貸住宅」の出現は、ここ数年注目されている現象です。
空室対策として、アパートの一室をペット飼育可とするのではなく、始めから入居者がペットを飼う前提で建てられている住宅のことで、いくつかのメリットはあります。
そのメリットは、入居率がアップすること、入居者同士のコミュニケーションが深まり近隣トラブルが少なくなること、入居期間が比較的長くなることなどが指摘されています。
ペット専用のための設備はさまざまです。室内の建具扉のくぐり戸やキャット・ウォークは、自由に行き来したり、高いところによじ登ったりするのが好きな猫用の設備です。清潔好きな猫のための猫用トイレスペースなどのほかに、腰壁に傷の付きにくい内装材を使用するなどの工夫がしてあります。
さらにペットスペースの前にイオン発生器を設置してニオイ対策を施したり、外出時にもペットの様子がスマホで確認できる機器などもオプションで提供したりと進化しています。
このため初期投資は掛かるのですが、相対的に家賃も高く設定できるなどのメリットもあります。

「猫付きマンション」は空室待ちの大人気

さらに最近では、猫がすでに入居済み? という「猫付きマンション」まで登場しました。
これは、やむを得ない事情で飼えなくなった猫を、「飼う」のではなく入居者が「預かる」という発想から生まれました。
具体的には、マンション入居の際に入居者は運営している会社のシェルターから保護猫を選び、一緒に暮らすというスタイルをとります。里親が見つかればそちらに譲渡されますが、自ら里親になる人もいます。このマンションは、空室待ちが出るほどの人気だそうです。
近年の猫ブームは、当面の間続きそうな気配です。猫好きな単身・高齢者層は、今後の賃貸経営にとって外せないターゲットでしょう。