不動産の防災対策はオーナーの意識次第?

不動産の防災対策の第一歩は、火災保険や地震保険への加入といったリスク対策ですが、実はオーナーや入居者の「意識改革」も大変重要です。
今回は、オーナーの働きかけの努力によって、居住者の防災意識を変えることに成功したケースを紹介します。

国交省のポータルサイトで得た情報を入居者に共有

日頃から趣味のインターネットで情報収集しているオーナーのAさん。テレビのニュースがふと気になって、あるポータルサイトを見つけました。
近年、関心を集めているのがゲリラ豪雨や竜巻などの「突発的災害」です。中でもゲリラ豪雨は、短時間で河川が増水したり、堤防が決壊したりして周辺の住宅などに大きな被害をもたらします。
そこで国土交通省では、自然災害による被害を地図化した従来のハザードマップを改定する目的で、2016年4月に「水害ハザードマップ作成の手引き」を公表しました。改定のポイントは、「早期の立ち退き避難が必要な区域」を明記することなどですが、ここでにわかに注目されてきたのが、国土交通省のハザードマップポータルサイト(http://disaportal.gsi.go.jp/)です。
このポータルサイトでは、全国の市町村のハザードマップを閲覧したり、防災情報を確認したりできますが、意外に知られていないのが、「重ねるハザードマップ」という機能です。
たとえば、ある住所を検索すると、各種ハザード情報として洪水浸水想定区域、津波浸水想定区域、土砂災害危険箇所などが色分けして表示されます。これだけでも、その地域の危険箇所が分かりますが、さらに道路冠水想定箇所や事前通行規制区間、緊急輸送道路などを、地図上に重ねて見ることができるようになっています。
つまり浸水リスクだけでなく、避難ルートを検討したり、がけ崩れの箇所を避けたりするための情報が、同一地図上で確認できるようになっているのです。
このオーナーAさんは、単身者の居住者が多いため、防災意識を高めるきっかけになればと「防災の日」を前にこうした情報を盛り込んだチラシを配りました。その結果、「今までは会社とアパートの往復だけだったが、地域のことを知るきっかけにもなった」「避難場所の確認に役立った」などという声が入居者から寄せられ、好評だったといいます。

掲示板だけでは防災への十分な注意喚起にならない

居住者に単身者が多いと、住んでいる地域に対する関心も低く、近隣付き合いもそれほど活発とはいえません。避難訓練などを定期的に実施している所もありますが、参加者がなかなか集まらないという悩みをよく聞きます。
ですが、こうした環境を放置しておくのではなく、どんな災害リスクが潜んでいるのか、オーナーとして事前に把握し、居住者にできるだけ知らせることも必要でしょう。
たとえば台風シーズンでは、事前の注意喚起が効果的です。単身の、特に男性の場合は、夏場に窓を開けたまま外出することもあるそうです。天気の急変で、ゲリラ豪雨になり窓から大量の雨水が浸水したり、ベランダの排水口や側溝が詰まって室内に浸水したりするケースが想定されます。
しかし、こうした問題への注意喚起も、掲示板に貼り紙をするだけではなかなか見てくれません。前述のオーナーAさんは、ネット好きが高じてスマートフォンアプリにも詳しく、雨雲の接近や台風の進路が分かる天気予報アプリを「おすすめアプリ」としてイラスト入りで紹介。こちらも貼り紙をしていたところ、居住者から「スマホにダウンロードしておきます」などと声をかけられ、効果があったといいます。

定期的な情報発信でコミュニティ強化も

最近の防災型マンションは、さらに進化しています。たとえば、共用部に「防災ステーション」を設け、水、食料、携帯トイレを備蓄していたり、太陽光発電と蓄電池で停電時のスマホの充電ができたり、無線LANが使える場合もあります。既存物件でここまで設備を充実させるのは、簡単なことではないでしょう。
しかし災害時には、ハード面だけでなく「情報」というソフト面も、重要な鍵となるのは間違いありません。そして、この点については、オーナーの意識次第で既存物件でも十分に対応可能といえます。
上述したオーナーのように、常に情報収集のアンテナを高くして、防災対策に役立つ情報を随時居住者にシェアすることは非常に大切です。他にも、自己流で防災対策をしている人には、「一人暮らしの防災対策」というテーマでブログやサイトを紹介する方法や、女性向けには「防災グッズになる日用品」を紹介するなど、こうしたアイデアも効果は期待できるでしょう。
また「防災の日」などを前に、居住者にアンケートをしてみるのも一つの方法です。アンケート項目の中に、「自己流で防災対策をしている」「いざという時の備えが不十分である」「防災意識を高めたい」といった設問を盛り込んでおけば、防災へのニーズが把握できます。
この結果を受けて、ニーズに合った情報を定期的に発信すれば、居住者とのコミュニティ強化を促すことにもなります。オーナー自身が、「居住者目線」で住んでいる地域を見直してみるといいのかもしれません。
不動産の防災対策において、「情報発信」という面から、オーナーの意識次第で可能な施策を取り上げました。このメリットは、有益な情報の発信・共有にとどまらず、上述の通りオーナーや居住者とのコミュニティ形成につながる点です。大震災の際に、人命を救えたのはコミュニティの力が大きかったといいます。近所の人同士の助け合いや協力で被害の拡大を防ぐこともできます。一方で単身者が多い集合住宅では、こうした連携がうまくできず、反省につながっています。
防災において、最も大切なことは準備です。そうした意識がいざという時に役立つのです。