不動産投資家が知っておきたい法人化のメリットとデメリット

アパート経営を行うと不動産所得が発生し、確定申告で所得税を納付する必要が生じます。しかし、会社を設立して法人化をすることによって、税金面で優遇される場合があります。今回は、この法人化に伴うメリットとデメリットについて、確認してみましょう。

所得の分配によって所得税を抑えられる

法人化によるメリットの一つは、アパート経営で得た利益を分散させられる点です。この結果、所得の圧縮につながり、節税効果が得られます。
具体的には、会社法人を設立して自分の家族を役員にします。そして、自分一人で所得を得るのでなく、給与として家族にも所得を分散させるのです。
たとえば、アパート経営で1,000万円の利益が出ていたとします。これをすべて自分に対する給与とした場合、220万円が給与所得控除となり、1,000万円−220万円=780万円が給与所得となります。この780万円の給与所得に対して、所得税が課せられることになります。
これに対して、たとえば妻を役員にして自分に500万円、妻に500万円の給与を支払うとすると、500万円の給与収入の場合、154万円が給与所得控除となり、500万円−154万円=346万円が給与所得です。夫婦の合計が346万円×2=692万円。差額は780万円−692万円=98万円です。つまり、給与所得を98万円圧縮したことになります。当然、所得税の節税効果が得られるというわけです。
なお、家族には役員報酬という形で給与を支払うことになりますが、役員報酬は法人税法上の経費となる「損金」に算入できるため、結果的に法人税額も抑える効果があります。

非常に有用な「小規模企業共済」

また、従業員20名以下の個人事業主、もしくは会社役員限定で、「小規模企業共済」という共済制度があります。この小規模企業共済は、毎月の掛け金を全額、所得控除できます。掛け金は積み立てられるので、事業を廃止したい時か、満65歳時に退職金として受け取ることができます。
これには二重のメリットがあります。毎月の掛金は所得控除になるため所得税の節税効果があり、その掛け金は退職金として受け取ることができるのです。小規模企業共済は会社員では加入できません。法人化して役員になることで加入することができるようになります。

その他の法人化のメリット

もちろん法人化すれば、法人税を納付することになります。しかし、課税所得の額次第で、法人税のほうが所得税よりも低い場合があります。特に、課税所得が900万円を超えている場合は、法人税率は所得税率よりも低くなるので、法人化を検討したほうがいいでしょう。
また、損失が発生した場合の繰越控除(損金を翌期以降に繰り越して課税所得と相殺できる制度)の期間が、個人の場合と法人の場合とでは異なります。個人は3年間ですが、法人は9年間と3倍もの差があります。この点も法人化のメリットでしょう。
そして、各種保険料の扱いも、個人と法人とで異なります。個人の場合、どれだけ高額の保険料を負担していても、個人の所得控除の最大限度額は決まっています。これに対して法人の場合、要件を満たしていれば、法人が負担している保険料の全額が法人税の経費となる損金に算入できます。

法人化のデメリットも忘れずに

ここまで、法人化のメリットを取り上げてきましたが、最後にデメリットについても確認しておきます。

● 法人住民税

法人の場合、「法人住民税」が課税されます。法人住民税は、赤字で所得がない場合でも、法人が存在するだけで課せられる税金(均等割)です。また、個人の場合よりも税務署のチェックが厳しくなり、法人税の申告と個人の確定申告(役員報酬に対する)の両方が必要です。手続も繁雑になので、税理士に支払う顧問手数料の負担も増えるでしょう。

● 売却に要する経費

個人から法人化した後、不動産を第三者に売却する場合、その流れは「個人から法人へ売却」そして「法人から第三者へ売却」という形になります。不動産の売買には、登録免許税や不動産取得税、司法書士報酬などの事務手数料が発生するため、その費用負担も念頭に置いておきましょう。

● 消費税の納税義務

もし個人が「消費税の納税義務のある事業者」に該当する場合は、不動産の物件を個人から法人へ売却する時に、建物にかかっている消費税を納める必要があります。例えば、建物価額が5,000万円であれば400万円の消費税を納めなくてはなりません。法人化する場合は、個人が消費税法上の「納税義務のある事業者」に該当するかどうかを確認しておきましょう。
不動産投資家が法人化した場合、多くの税金上のメリットがある一方、法人を立ち上げることで新たな事務手続きや税金も発生します。法人化によるメリットとデメリットをよく比較し、どちらが得かを慎重に判断した上で決断してください。また設立する場合は計画的に手続きを行い、税理士などの専門家への相談も事前にしておきましょう。
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