シニアの住み替えニーズとはどんなもの?

バブルの崩壊後、「都心回帰」ブームが注目されました。最近の国勢調査によると、再びこの都心回帰が顕著になっています。その中心となるのが、単身世帯やゆとりのあるシニア世代です。アクティブシニアと言われる世代は、主に女性がけん引役となっているようです。
こうした今のシニア世代の住み替えニーズについて見ていきます。

人口の二極化と都心集中

2015年国勢調査の人口速報値によると、人口の「二極化」が一層進んでいます。東京、神奈川、千葉、などの8都県では人口の増加が見られる一方、前回調査で人口が減少していた道府県は人口の減少が続いています。
都心回帰は、バブルが崩壊し都心の不動産価格が下落した90年代後半以降に増えました。最近になって再び注目されだした理由として、鉄道の新線開通による職住近接志向と、趣味や付き合いを重視するシニアのライフスタイルの変化を指摘する声があります。
郊外の大型団地や高度成長期に開発されたベッドタウンなどは世代交代の時期を迎え、子どもたちが相次いで独立しています。残された夫婦2人では庭の手入れや住宅の管理が難しくなり、団地では古く使い勝手の悪くなった設備に不満が高まるなど、住み替えを検討する人が増えました。
例えば、東京・山手線内側の準都心エリアは、いまだに第一種低層住居専用地域が残っていて環境も良く、隠れた人気です。散歩好きの人にも魅力的なエリアとして雑誌などでたびたび取り上げられます。

「シニア・女性・アクティブ」が切り口

アート引越センターの引越文化研究所がまとめた「シニア都心回帰調査レポート」によると、シニアの4人に1人が都心に住みたいと考えています。また、男女別では、男性が20%に対し女性は29%と、女性のほうがより積極的なシニアライフをリードする姿が見えてきます。
こうした調査が示唆するように、高いポテンシャルを秘めたシニア女性市場。住宅選びも女性主導型と言われてきましたが、「シニア・女性・アクティブ」という切り口で、不動産市場を意識しなければならないようです。
設備機器メーカーやリフォーム会社などでも、アクティブシニアをターゲットにした、リノベーションの施策を取り入れています。間取り変更や可動式の壁などの組み合わせ、スケルトンリフォーム、調度品などの処分まで対応したりもしています。
マンションやアパートの老朽化している設備や機能にも配慮が必要です。例えば女性が気にする転倒骨折事故は、自宅で起きるケースが多いため配慮が求められます。郊外の2階建てを手放して、都心のバリアフリーのマンションやアパートに引っ越す理由の一つに、こうした事故や防犯の必要性を挙げる人は少なくありません。
「安全・安心」はシニア向け住宅の合い言葉です。火を使わないIHクッキングヒーター、奥の物も取り出しやすいスライド収納などはキッチンの必需品です。浴室は洗面室との床段差をできるだけなくし、自動お湯張りや追い焚き機能の他、冬の寒い浴室で起こる入浴事故を防ぐため、浴室を暖めておける浴室換気乾燥機も必要になります。
その他に、足元の保安灯や、スイッチ部分が広くなっているワイドスイッチの採用など、ちょっとした心遣いでシニアのニーズが把握できます。

「終活」ブームも後押し?

一方、都心回帰を後押ししている動きの一つに、最近の「終活」ブームを挙げる人もいます。
お墓事情は、深刻な問題です。田舎に先祖代々のお墓があるものの、「高齢でお参りができない」「近所付き合いもなくなった」など、いわゆる「墓じまい」してお墓の引っ越しを考える人は少なくありません。このため、都市部ではお墓不足が生じ、地方では墓じまい後の墓石の放置問題が発生。空家問題にも似た現象が起きているのです。
お墓の移転や新しくお墓を作る人が気にするのは、第一に立地条件です。交通やアクセスなどを考え、自分が住む所に近い場所を選ぶ度合いが深まっています。
このように、今どきのシニアの生活変化を敏感に受け止め提案する力が、不動産業界やオーナー側にも求められています。