「専業」大家になる前に、無料の公共職業訓練

不動産投資の規模が順調に大きくなり、「サラリーマン大家」を卒業して、大家に専念できる可能性が見えてきた場合、会社を退職して「専業大家」という道もありますが、さらにスキルアップをしてから専業になる道もあります。
一つの方法は、会社員退職後に失業保険を得ながら、大家業に役立つ公共職業訓練を受講し、その訓練を活かしたパートタイム労働者として働きながら、経験を積むというものです。失業保険とあわせてパート代が入るので収入面が安定する上、専業大家の生活リズムを徐々に作っていく点においてもメリットがあります。
今回は、こうした専業大家になる前に踏むステップを探ってみましょう。

公共職業訓練の魅力的なコース内容

公共職業訓練とは、就職に必要な技能および知識を習得するための訓練を実施する公共事業です。雇用保険を受給している求職者は原則無料(テキスト代は実費)です。また、在職労働者や高等学校卒業者などを対象に、高度な技能・知識を習得するための訓練も実施しています(原則有料)。
例えば、東京都の職業訓練(都立職業能力開発センター)の科目案内を見ると、大家のスキルアップに役立つ科目がいくつもあります。
「住宅リフォーム科」は、集合住宅のリフォームに必要な「施工」、および「施工管理」に関する知識と技能を身につけられるという、実技主体の訓練が魅力です。
「ビルクリーニング管理科」は、ビルなどの建物を美しく保つと同時に、ビルクリーニングやメンテナンスの知識と技能とマネジメントについて学ぶ訓練で、自主管理に役立ちます。いずれも期間は6ヵ月で、授業料は無料です。
また、東京都の民間委託訓練の中には、座学(3ヵ月)と企業実習(1ヵ月)を組み合わせた、委託訓練活用型デュアルシステムがあります。2016年11月に開校する「不動産ビジネス総合科」は、「資格の学校TAC」での宅建やFP受験も見据えた授業に加えて、「不動産会社で勤務する実習によって、不動産業界の顧客をサポートするスキルを身につける」とあります。
宅建やFPを持っていない人、不動産業界をより理解したい人にお勧めです。このコースも無料です。

金銭的なメリットも大きく、他にもさまざまな利点が

公共職業訓練には、金銭的なメリットもあります。失業保険の給付制限を免除されるために、自己都合で退職しても3ヵ月間も待たずに、すぐに給付金がもらえるうえに、職業訓練が失業保険の給付期間を超える場合は、訓練修了まで給付が延長されます。
例えば、38歳の人が15年間働いた会社を自己都合で3月末に退職した場合、失業保険をもらうには、通常は3ヵ月間の給付制限を経て、7月から120日間支給されます。
しかし、事前に申し込んであった職業訓練を4月から半年間受講する場合は、4月から受講終了の9月末まで、つまり、本来の給付期間よりも60日長い、180日分が支給されることになるのです。この給付金に加えて、1日500円の受講手当や、訓練校までの交通費も受け取ることができる職業訓練もあります。
また、失業保険を受給するためには、28日毎の失業認定日にハローワークで職員と面談をして活動状況などを報告する必要がありますが、公共職業訓練中は失業保険の受給手続きを訓練校側が代行してくれるので、訓練と大家業に専念できて時間も有効に活用できます。
何より、共通の目的を持った、幅広い年代の学びの場は新鮮で刺激的です。おまけに、受講生はリフォーム、ビル管理、不動産会社などで働こうとしている人たちなのですから、今後の大家業のパートナーに出会えるかもしれません。

訓練を活かしたパートで修業

上述の職業訓練はもちろん実践的な内容ではありますが、あくまでも訓練です。その訓練を活かしたパートタイム労働で実地に経験を積むことによって、さらなるレベルアップが可能となります。特に、ビル管理のパートには需要があるようです。
当然ですが、採用する企業にとって、パート労働者は正社員に比べて求める人材のハードルが高くなく、年齢や経験などに比較的寛容です。時給は決して高くありませんが、お金をもらって修行ができると考えれば、ありがたい処遇です。フルタイムのサラリーマンとは異なり、労働時間や責任権限が限られているため、サラリーマンにない自由度もメリットです。
サラリーマン大家から専業大家に円滑に移行するにあたって有用な選択肢として「公共職業訓練」についてご紹介してきました。公共職業訓練による失業保険へのメリットや、訓練後のパートタイム労働の収入を考慮して退職時期を考えることが大切になります。
すべての人の不動産投資に正解がないように、兼業から専業への「転身」の進め方にも、さまざまな選択肢があります。これを機会に、不動産投資は自分にとって何のためなのかを見直してみるのもいいかもしれません。