企業寮シェア月島荘「的」シェアハウスの可能性

古い寮や社宅の処分が進んでいる一方、独身寮や社宅を改築・新築する企業もあります。2016年春、三菱電機は和歌山市に140戸の独身寮を完成し、伊藤忠商事は横浜市に360戸の独身寮の新設を発表しました。企業の狙いは、給料の右肩上がりが難しい中で、福利厚生の充実によって良い人材を集めるとともに定着をはかるほか、寝食をともにすることによる人材育成と人脈形成です。
さらに、こうした企業寮をシェアすることで、大きな器と広い人脈作りを目指す「月島荘」というサービスも注目されています。今回は、この企業寮シェア月島荘「的」なシェアハウスの可能性を探ります。

シェアハウスもコンセプト重視へ

そもそもシェアハウスとは、自分の部屋とは別に、共同利用できるキッチン、リビング、バスルームなどの共有スペースを持った賃貸住宅です。日本シェアハウスゲストハウス連盟の市場調査(2014年度版)によれば、シェアハウスは全国に2,804棟があり、そのうち3分の2が東京都に集中しています。
当初、個室は小さめなものの、賃料の割安感と敷金・礼金・保証人などが不要の物件が多いという経済的メリットによって、男女を問わず、20代・30代の若者が入居していました。
しかし、シェアハウスの認知が高まり物件も増える中で、共同住宅ならではの「交流」に魅かれて入居する人が増えているようです。運営側も、立地だけでなくサービス・設備にこだわり、充実した共同生活を訴求することで高い稼働率を保つことを狙うようになってきました。
この流れの中で、物件に特定のテーマを設けて入居者のニッチなニーズを満たす「コンセプト型シェアハウス」が、「部屋」を貸すというよりも、「ライフスタイル」を提供するサービスとして、他物件との差別化をはかっています。
例えば「562(ごろにゃ)四谷」(新宿区)の入居は、先に保護猫、次に入居者です。猫が住みやすいよう、猫仕様にリノベーションしたシェアハウスで、猫のお世話をするボランティアとして一緒に暮らします。
「SHARENEST TOYOKO」(横浜市)は、おばあちゃんコンシェルジュが週3日やって来て、入居者がリクエストした家事を行ってくれます。例えば、お掃除を週2回、料理を週3回頼めば、会社から帰ったら、きれいな部屋と手料理が待っている生活ができるのです。

企業寮をシェアする、月島荘

既存のコンセプト型シェアハウスの中で目立つのは、コミュニティ系、スポーツ・読書・音楽などの趣味系、英語などの語学の学び系といったものです。ビジネスコンセプトのものを探してみると、就活をともに目指すシェアハウス、異業種クリエイターの「ものつくり」シェアハウスなどがありました。
ビジネス、しかも入居者はもとより企業にコンセプトを訴求しているのが、「月島荘」です。この、複数の企業が利用する全644戸の企業寮は、「業種や職種、国籍、年代の異なるビジネスパーソンが、ともに『暮らし』、お互いを高めあっていく場所」を目指し、2014年1月から東京都中央区で本格稼働しました。
共用設備は、1階には大きなキッチンダイニング、ジム、大浴場、シアタールーム、スタディルーム、ミーティングルームなど大変充実しています。また、2フロア毎などにキッチンを備えたリビング・ランドリールームなどの共有空間があります。
個室は18平方メートルのワンルームにトイレとシャワー室で、ビジネスホテルの一室のようです。シングルベッド、カウンター、椅子、冷蔵庫、エアコンが備わっています。保証金は1社につき300万円(解約時全額返還)、家賃は月額10万5,000円に加えて共益料7,000円と水光熱料1万円が必要です。原則、すべての料金は契約企業から一括して支払うことになっています。給料で相殺される入居者の負担額は、企業によってさまざまです。
企業が期待する「異業種の入居者同士の交流」は、上下フロアを一つとするコミュニティ「クラスター」を中心に営まれています。クラスターリビングに集うほか、クラスター毎にフェイスブックやLINEなどもあり、時間に縛られない交流の仕掛けもあります。

月島荘「クラスター」的なシェアハウスの可能性

月島荘のような大規模メリットは難しくても、そのコンセプトは、シェアハウスのヒントにできるかもしれません。
仕事人としての学びや成長を訴求するならば、職業をより具体的に特定するのはどうでしょうか。例えば、「食」に関する仕事に携わっている人を募集します。飲食店、食品メーカー、商社、テーブルコーディネーター、栄養士などが集まれば、お互いに刺激しあえるかもしれません。「経理部」を限定募集すれば、お互いの悩みを共有し、企業会計の知識も深まりそうです。
また、企業に訴求している点に注目すれば、物件の近くの企業に「御社の独身寮を提供します」と提案します。充実した福利厚生は人材確保につながり、社員同士の共同生活は社員教育となるだけでなく、会社へのロイヤリティーを高めます。自社の独身寮に比べて初期投資もかからず、企業側のメリットは少なくないはずです。
不動産業界において、この数年ブームとなっているシェアハウス。個性化の一途をたどっていますが、今回紹介した「月島荘」のような「仕事人としての学びと成長」を核としたコンセプト型シェアハウスに若者が集まって成長していくことに手を貸せるのは、夢のある投資かもしれません。従来の賃貸住宅とは違う新しい不動産経営の可能性が開けています。