どうなる? 広がる「無許可民泊」への規制網

個人宅の空き部屋に旅行者を泊める「民泊」。国内登録4万件を超えたAirbnbや、中国系の民泊仲介サイトを中心に広がりを見せています。日本では、有償で民泊を反復して行うには旅館業法の許可が必要ですが、「違法民泊」「闇民泊」が増える恐れも懸念されています。
これに対して自治体やマンション管理組合などを中心に、規制を強める動きも広がっています。

国が考える民泊の位置付け

東京オリンピックが開催される2020年には、海外からの観光客の数は4,000万人を超えると政府は見通しています。日本では既存住宅の13.8%が空き家になっており、国は「観光立国の推進、増えている空き家の有効活用という地域活性化の観点から活用を図ることが求められている」として、その中核に民泊を位置付けています。
一方、住民とのトラブルを避ける工夫も必要で、「感染症流行防止や、テロ防止など適正管理、安全性の確保や、地域住民とのトラブル防止に留意したルール作りが求められている」とも言及しています。
所管官庁である国土交通省と厚生労働省による「民泊サービス」の制度設計が2016年6月に固まり、前倒しで秋の臨時国会に提出される見通しでした。しかし既存業界の調整に手間取り、来年の通常国会に見送りになったようです。

民泊と民泊サービスの枠組みは

民泊を、国家戦略特区における「特区民泊」と、新しく国が作った用語である「民泊サービス」に分け、その法的規制を表にすると以下になります。

種類 地域 規制の枠組み
特区民泊 国家戦略特区(東京都、神奈川県、千葉県千葉市、成田市)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)、福岡県福岡市、北九州市で民泊条例を制定する自治体
(現時点で施行済みは、東京都大田区、大阪府。2016年10月施行は大阪市、年内施行は千葉市、北九州市の予定)
国家戦略特区施行令と条例を適用する。
条例は現在6泊7日以上を特区民泊としているが、実体に合っておらず、条例が「2泊3日以上」と修正すれば、365日までの営業が可能。
民泊サービス 特区民泊条例を設置しない自治体を含めて全国 「住宅を利用する民泊サービス」として2泊3日以上180日を上限とする場合「民泊新法」を適用する。新法は2017年通常国会に提出予定。許可権限は旅館業法と同じで、保健所を持つ自治体(基本は都道府県と東京都の区、政令都市、中核都市)
民泊 全国 上記規制を超えるものは、既存の旅館業法の規制を受ける

既に、早急に取り組むべき対策として、旅館業法の「簡易宿所」の枠組みを活用するとされ、2016年4月に旅館業法施行令を改正しました。
客室延べ床面積の基準をこれまでの「33平方メートル以上」から「1人当たり3.3平方メートル以上」に緩和され、さらに、宿泊者10人未満の場合は本人確認など一定の管理体制があればフロント(帳場)の設置が要らないとされました。この枠組みは、特区民泊、民泊サービスでも維持されます。

「家主居住型」と「家主不在型」に区別して規制する

国が6月に出した最終報告は、年間180日以内を「住宅を活用した宿泊サービス」、それ以上の利用は旅館業法に基づく営業許可が必要だとしました。
そして家主居住型、いわゆる「ホームステイ」の場合、匿名利用を排除するために無届けで民泊を実施した住宅提供者は罰則を受けることにしています。
一方、家主不在型の民泊の場合、住宅提供者は管理者(宅建業者)に管理を委託して適正な管理や安全、衛生面を確保することとし、その管理者が行政庁に登録し、法令違反については罰則を設けることになりました。
Airbnbなどの仲介事業者については、家主居住型・家主不在型のいずれも行政庁へ登録することにし、違法民泊を知りながらサイトに掲載している場合は、業務停止命令、登録取消、法令違反への処罰が課せられるべきだ、としています。
また、仲介事業者は行政庁からの報告聴取に応じて、必要な情報提供を行うべきだとする一方で、仲介事業者は、Airbnbや中国系(住百家、自在客、途家ほか)などの外国法人が大半であるため、法令違反業者を公表すべきだとしています。
上述のスタンスは、営業日数の制限は既存旅館業に、家主不在型民泊への管理者設置義務は宅建業者に、それぞれ配慮しながら民泊を推進しようという現実的な方向です。
当初は2016年度内に新しい法律「民泊新法」を制定する予定でした。一旦、9月末召集の臨時国会に出す方針を固めましたが、見送った背景には、「旅館業界と、空き家物件の活用に前向きな不動産業界の利害が対立している」と2016年9月19日付の日本経済新聞は解説しています。

京都市や軽井沢町では規制強化を図っています

現在、特区民泊条例が施行されているのは、東京都大田区、大阪府の2自治体です。大阪市は2016年10月施行の予定です。年内に千葉市、北九州市の2市でも施行される予定ですが、日数制限緩和に応じて条例改正の動きがあり、神奈川県もまた「可能な地域から特区活用を進めていく」方針です。
一方、国家戦略特区に入っていて、Airbnbの登録件数が東京都、大阪府に次いで多い京都市は、6月に「自治体の裁量を求める要望書」を出しました。これは住居専用地域内のマンションなど集合住宅の一室の民泊化は「認めない」という姿勢を表したものです。
また、避暑地で知られる長野県軽井沢町は、民泊を町内全域で認めない方針です。町内では騒音や風紀の乱れを懸念し、地元のホテルや旅館関係者からも反対の声が上がっていたということです。
県が許可権限を持つので、町はあくまで町としての方針や姿勢を表明しただけですが、海外でも知られた国内有数のリゾート地の姿勢は無視できないでしょう。
神奈川県も、県が積極的な一方で横浜市や川崎市は消極姿勢ですし、東京でも大田区や杉並区は積極的なものの、消極姿勢の区が多いのも事実です。
中でも台東区は、3月の議会で旅館業法施行条例を改正し、従業員を常駐させることや、フロントかそれに準じる設備の設置を宿泊施設に義務付けることにしたため、区内ではワンルームや一軒家の民泊営業はできなくなりました。
また、マンションの管理組合でも、住居を「居住以外には使ってはいけない」と規約で定めている分譲マンションが主ですが、さらに民泊ができないように規約を改訂しようとする動きがあります。
「営利を目的として、別々の相手方に賃貸する、いわゆるシェアハウス及びAirbnbに代表されるような、インターネットや、その他の方法による不特定多数の者による利用は、本マンションの住居としての静穏、平穏、安全を害する貸与とみなす」として、第三者への貸与を禁止する内容を規約に加えるところが多いようです。
このように規制が強まる中で、結局は「闇民泊」が増える可能性も否定できず、IT系会社の中には「違法民泊追放サービス」を展開しようというところも出てきています。匿名通報で、管理会社や保健所に連絡するというのです。
京都市や各種調査結果から、現状での違法民泊は、マンション、アパートが圧倒的に多いようです。旅館業法の罰則は、現状は「懲役6ヵ月以下あるいは、罰金3万円」。厳罰化して民泊新法に盛り込む可能性がありますが、果たして実効性があるのかが、今、問われています。