不動産オーナーなら知っておきたい! 「民泊新法」の仕組み

空室を有効活用する「民泊」は、宿泊施設不足の解消に寄与するサービスとして急速に拡大してきました。その一方で、通常のホテルや旅館との「線引き」の曖昧さ、近隣住民とのトラブル、又貸しや営利事業NGの賃貸住宅での営業など、さまざまな問題も起こってきています。
そうした状況の中、政府は2015年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に基づき、「一定の民泊サービスについては旅館業法上の適用除外とした上で必要な規制を新たに行う」として、民泊に関する新しい制度作りの検討を開始しました。
本年3月以降、「観光ビジョン」「規制改革実施計画」などで政府の検討状況が整理されてきており、6月20日には観光庁と厚生労働省による「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の最終報告書が取りまとめられました。一般にこれを「民泊新法」と呼びます。
そこで今回は、この民泊新法に規定された内容について紹介します。

民泊の位置付け

上述の最終報告書では、民泊を「住宅を活用した宿泊サービスの提供」と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させ「一定の要件」の範囲内で有償かつ反復継続するものと定義しています。この「一定の要件」の範囲内のものは「民泊新法」の規定に従い、要件を超えるものは、旅館業法に基づく営業許可が必要となります。
「一定の要件」には、既存のホテル・旅館とは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定する必要があるとして、年間提供日数上限による制限を設けることを基本としています。半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を、諸外国も参考に、既存のホテル・旅館との競争条件にも留意して設定するとしています。
国家戦略特区の特例で規定されている連泊要件(6泊7日以上)は、「1日単位」と明言されているため、規制対象にはならない見込みです。また、住宅を活用することから、原則、ホテルや旅館が立地できない住居専用地域でも実施可能としています。さらに地域の実情に応じて条例などで規制することも可能としました。

家主居住型(ホームステイ)と家主不在型

民泊新法では、民泊を「家主居住型」と「家主不在型」に大別しています。
それぞれ、住宅提供者・管理者・仲介事業者に適切な規制を課して適正な管理や安全・衛生を確保し、また行政が民泊の実態を把握できるよう報告義務や罰則などを設けることとなります。
家主居住型とは、住宅提供者が行政庁に「届出」を行うことで、住宅内に居住しながらその一部を民泊として利用させるものです。住居提供者が出張や長期休暇による不在期間中は、後述の家主不在型とされます。
住宅提供者の義務は、利用者名簿の作成・備え付け、最低限の衛生管理措置、簡易宿所並みの宿泊者1人当たりの面積基準(3.3平方メートル以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、標識掲示、苦情への対応、無登録の仲介業者の利用禁止、行政庁への情報提供義務などです。
また、マンション管理規約や賃貸借契約に違反がないかを確認する義務も課せられます。
義務に違反した場合や、感染症が発生した場合などには、業務停止処分や罰則なども課せられる方向です。
一方、家主不在型は、騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルや施設悪用などの危険性が高まり、近隣住民からの苦情申し入れ先も不明確であるとし、住宅提供者は、行政庁に「登録」した管理者への管理委託が必要です。
管理者は、家主居住型の住宅提供者に課せられる義務内容を負担し、義務に違反した場合は、業務停止命令、登録取消処分などの対象となります。

仲介事業者規制について

家主居住型・不在型を問わず、民泊サービスをインターネットなどで仲介する事業者は、行政庁への「登録」が必要とされます。
事業者には、取引条件の説明義務、民泊新法に基づくサービスであることを明示する義務、行政庁に対する情報提供義務が課せられます。これにより、無届けや登録管理者不在といった違法な民泊の情報を、行政庁は効果的に取得できます。
また、違法な民泊はサイトから削除する命令、違法と知りながらサイトに掲載した業者には業務停止命令、登録取消などの処分や罰則が設けます。

民泊新法2つのポイント

不動産オーナーの中で、民泊を考えている方、既に民泊を実施している方、逆に所有する賃貸住宅で民泊営業を店子にされては困るという方にとって、民泊新法のポイントは2つあります。

1.営業日数上限

イギリスでは年90泊以内、オランダ・アムステルダムでは60泊以内といった規定がありますが、先の検討会では、90泊~180泊の範囲という意見が多勢を占めたようです。
営業日数の問題は、民泊制度の根幹を左右する重要な問題です。特に民泊目的で新規に住宅を取得したり、賃貸住宅を転用したりする事業者にとって、営業日数の上限があまりに少ないと、ビジネスとして非効率的かつ困難です。一方であまり上限が多いと、ホテルや旅館業界からの強い反発が予想されます。
いずれにせよ、営業日数上限での採算で構わないという方は、届出をして民泊新法の規定内での営業、それ以上の採算を望まれる方は、旅館業法上の営業免許を取得することになります。

2. 条例

これまで旅館業法では、住居専用地域は宿泊施設の営業が認められていないため、簡易宿所として民泊を営業することはできませんでした。民泊新法が発効すれば、住居専用地域の多くのマンションやアパートが、民泊ビジネスに転用されると予想されます。
しかし、もし条例で民泊が禁止されてしまった場合、民泊新法は適用されず営業はできません。民泊を始めようとする場合には、当該地域の条例を必ず確認しましょう。
逆に言えば、条例で禁止されていない限り、住居専用地域のマンションでも民泊が可能になってしまうので、所有物件で民泊を実施されたくないオーナーは、賃貸契約や管理規約を確認し、転貸や民泊の禁止を明確に規定しておく必要があるでしょう。
規制改革実施計画では、2017年3月までに、民泊についての制度を実施するように閣議決定しています。また、政府は今秋の臨時国会での法制化前倒しを、観光庁と厚生労働省に指示しています。
一方で、最終報告書でも「一定の要件」の具体的な内容、管理者・仲介事業者の「登録要件」など、明確に結論が出ていない点が多々あります。急ピッチで検討が進められることに間違いはありませんが、具体的にどのようになるのか、民泊を検討されている方は、ぜひ今後の動静に注目してください。