歴史上の人物と高度利用地地価動向から振り返る23区の歴史と今(新宿区)

街の機能や景観を高め、土地としての価値も上がると言われている「市街地再開発事業」。この再開発事業を実施するには「高度利用地」であることが条件となっています。高度利用地の最新の地価動向を記したものが「主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)」です。
地価LOOKレポートには東京都だけで23ヵ所の記載があり、その周辺にはかつて偉人が暮らしていたというエピソードを持つ街も存在します。
今回は、2016年9月下旬に公表された平成28年第2四半期のレポートを踏まえながら、多くの文豪、文化人が活躍した場所として知られる新宿区に焦点を当て、最新の地価動向や同区を愛した歴史上の人物のエピソードを紹介します。

新宿区の高度利用地「新宿三丁目」と「歌舞伎町」の最新地価動向

最初に、新宿区の高度利用地の現況と将来展望について分析します。地価LOOKレポートに記載されている新宿区の高度利用地は「新宿三丁目」と「歌舞伎町」の2地点で、どちらも商業地域です。

1. 新宿三丁目

新宿三丁目は、新宿通りを中心に百貨店、中高層の店舗ビルなどが集積する高度商業地域です。高い商業繁華性を背景とした高級ブランドの出店が目立ち、地価動向の上昇は前期に引き続き3~6%と好調なことが確認されています。
地下通路「メトロプロムナード」によって新宿駅までの徒歩移動が可能なことや、東京メトロの丸ノ内線と副都心線、都営地下鉄の新宿線が乗り入れ、接続駅となっていることなどから乗降客数が伸びている注目地区でもあります。
また、訪日観光客の増加による出店需要も旺盛で、賃貸市場は堅調に推移しています。供給物件自体が極めて少ないため、募集賃料水準の上昇傾向が続いている地域です。
高級ブランド店の集積や老朽ビルの建替えなどによる街並みの更新も進んでおり、今後もオフィスや店舗の募集賃料の上昇が見込まれることから、不動産需要は底堅く将来地価動向も当面は上昇が続くと見られています。

2. 歌舞伎町

JR山手線新宿駅の北方に位置し、西武新宿駅東側、靖国通りの北側一帯に広がる「歌舞伎町」は、映画館や遊戯施設、飲食店などの中高層ビルが建ち並ぶ繁華な商業地区です。地価動向の上昇は前期に引き続き0~3%と好調です。
2015年4月には新宿コマ劇場・新宿東宝会館の跡地に30階建ての中核商業施設「新宿東宝ビル」が開業し、訪日外国人を中心に来街者数が増加しており、訪日外国人観光客をターゲットとした街づくりを進めています。このため、ホテルや店舗を中心とした出店需要が強いという特徴を持っています。
新宿三丁目と同様、供給物件が限定的であるため、取引市場および賃貸市場とも需要超過の状況が続き、店舗賃料はやや上昇中、地価動向もやや上昇傾向にあると言えます。今後もテナント需要は引き続き強いものの、テナントの賃料負担力が限界に近づきつつあることから、賃料の上昇幅は今後縮小すると予想されています。

文豪たちに愛された新宿区

ますます賑わいを見せる新宿区ですが、新宿ゆかりの文豪や偉人がどのくらいいるかご存じでしょうか。新宿区ホームページの「新宿ゆかりの人物」には、浮世絵師や演出家、画家、小説家など30人近くが紹介されています。
中でも小説家の数は突出して多く、『吾輩は猫である』『三四郎』などを執筆した夏目漱石をはじめ、『或る女』で有名な有島武郎、神楽坂の花街を題材にした新宿とゆかりの深い作品『湯島詣』などを生み出した泉鏡花、『金色夜叉』などを執筆した尾崎紅葉、
また、怪奇文学作品集「怪談」の著者・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)、自叙伝的小説『放浪記』がベストセラーとなった林芙美子、『浮雲』で近代写実小説の先駆けとなった二葉亭四迷など、明治から大正にかけて活躍した多くの文豪が名を連ねています。
中でも夏目漱石は、誕生の地と終焉の地がいずれも新宿のため、特に新宿にゆかりの深い作家と位置付けられています。漱石の生家は高田馬場から牛込にかけた一帯の名主であり、「喜久井町」や「夏目坂」といった地名は、漱石の父が命名しました。
また漱石が職業作家として生きていくことを決意した際も、本拠地に選んだ地は生家の喜久井町に近い早稲田南町でした。

文豪や偉人にゆかりのある土地というブランドが物件の付加価値に

普段何気なく歩いているような場所も、歴史を紐解いてみればかつて偉人といわれる人が暮らしていたとうことがあるかもしれません。取り壊しが話題となった太宰治ゆかりの共同住宅である荻窪の「碧雲荘(へきうんそう)」、与謝野晶子の住居跡地にある「与謝野公園」などは、こうした例の代表格とも言えるでしょう。
こうした歴史的背景にロマンを感じ、ゆかりのある物件に住みたいと願う人々にとっては、どんな好条件の物件よりも魅力的に映るのかもしれません。
さて、投資物件において、立地や間取り、設備内容、家賃相場を吟味することはもちろん重要なことですが、他の物件と差別化を図りたいのであればプラスアルファの付加価値が必要になります。その手法の一つとして、「文豪や偉人にゆかりのある土地」という付加価値を物件に加えれば、希少性も高くなります。
今回は新宿区を紹介しました。他にも偉人たちにまつわる付加価値の高い土地や物件がないか、ご自分で探してみてはいかがでしょうか。