歴史上の人物と高度利用地地価動向から振り返る23区の歴史と今(中央区)

「文豪、水上勉邸跡地に開発されたマンション」「熱海西山町の文豪たちが選んだ閑静な住宅地に建つ高級別荘」…これらは、文豪ゆかりの地に関する不動産物件を紹介したフレーズです。
歴史上の人物ゆかりの物件が持つ付加価値は、他物件との差別化に有効な手段となるほか、購入の決め手として大きな役割を果たし得ます。
今回は、再開発事業と関わりが深い「高度利用地」の最新地価動向を記した「地価LOOKレポート」の分析を交えながら、中央区の最新地価動向と、同区とゆかりのある歴史上の人物をたどってみます。

中央区の高度利用地の最新地価動向はどうなっている?

まず、中央区の高度利用地の現況と将来展望についてです。地価LOOKレポートに記載されている中央区の高度利用地は4地点あります。「佃・月島」が住宅、「銀座中央」「八重洲」「日本橋」の3地点が商業という区分です。

1. 「佃・月島」エリア

東京メトロ有楽町線「月島」駅からの徒歩圏エリアで、建設ラッシュが続く超高層マンションと、昔ながらの低層住宅が混在する住宅地区です。都心部の湾岸エリア(豊洲、月島、晴海など)のマンション市況は、オリンピック関連施設の建設やインフラ整備の影響もあってか、成熟した感があります。このためマンション価格も横ばいで推移しています。
デベロッパーによるマンション用地の取得意欲は依然として強く、地価動向も0~3%とやや上昇。将来地価動向もおおむね横ばいとの分析結果が出ていますが、平均株価の下落や不透明な経済情勢を背景に、利便性が劣る地区を中心に資産保有を目的とした個人富裕層による分譲マンションの売れ残りが目立ってきています。

2. 「銀座中央」エリア

2016年において日本一高い公示地価を誇る銀座4丁目・山野楽器銀座本店を含む「銀座中央」は、中央通り沿いを中心に専門店や飲食店、百貨店などの高層ビルが建ち並ぶ高度商業地区です。
インバウンド消費が減速傾向にあり、店舗賃料の上昇は横ばいとなっているものの、好立地の路面店舗は募集物件が少なく、店舗需要は底堅く推移しています。取引価格も売主、買主とも強気で、従来の水準を大幅に上回るケースが目立ちます。このため同地区の地価動向は、前期よりも上昇基調を強め、6%以上の上昇が確認されました。
また、老朽化したビルの建て替えも数多く行われており、地区全体にプラスの影響を及ぼすと予測されています。将来の地価動向については、引き続き上昇との予測が出ていますが、高値感を警戒する動きも出始めており、上昇率はやや鈍化するとみられます。

3. 「八重洲」エリア

中高層の店舗やオフィスなどが建ち並ぶ高度商業地区で、東京駅に近接しているなどの立地条件からオフィス需要が強く、オフィス賃料は引き続き上昇しています。さらに当地区では、国際競争力向上を目指した複数の市街地再開発事業も計画されており、J-REITや不動産会社などの取得需要は引き続き旺盛です。
しかし、英国のEU離脱問題を契機とする株式市場の変調や為替変動リスクなどによって、オフィス賃料のさらなる上昇を見込むのが難しい経済環境にあり、投資家は慎重な姿勢を見せています。将来の地価動向は上昇率が弱まり、横ばいで推移すると予測されています。

4. 「日本橋」エリア

高層の店舗やオフィスビルなどが建ち並ぶ、東京メトロ東西線の「日本橋」駅周辺エリアです。事業会社や投資法人などによるオフィスビルの取引が旺盛で、売買・賃貸ともに前期同様、需要が強い状況にあることがうかがえます。
また、オフィスやホテルなどの開発プロジェクトも進展しています。不動産投資家の新規投資意欲の強さは今後も続くとみられており、将来の地価動向も引き続き上昇傾向が続くと予測されています。

中央区は日本近代文化発祥の地

ビジネスからカルチャーまで幅広いスポットが存在する中央区には、一体どんな歴史上の人物が関わっているのでしょうか?
『細雪』や『春琴抄』を著した近代文学を代表する小説家・谷崎潤一郎は、中央区ゆかりの文豪です。1886年に日本橋牡蛎殻町(現・人形町)で生まれ、大学生の頃まで日本橋界隈で過ごしました。現在その跡地には料理店があり、傍らには「谷崎潤一郎生誕の地」という碑がひっそりと建っています。
日本初の本格的な西洋医学翻訳書『解体新書』も中央区ゆかりの書物です。オランダ語の解剖書『ターヘル・アナトミア』を、蘭学者・前野良沢、杉田玄白、中川淳庵らが翻訳作業を行っていた場所が、中央区湊にあった前野良沢の邸宅だったのです。
また、港に隣接する築地明石町は、福沢諭吉が私塾を開設した「慶応義塾発祥の地」であり、聖路加国際病院や聖路加国際大学の所在地としても広く知られています。病院の敷地内には、『羅生門』や『蜘蛛の糸』などで知られる文豪・芥川龍之介の生誕地と記された看板も建っています。
さらに、築地駅近くの「あかつき公園」には、長崎で活躍したオランダ商館医・シーボルトの胸像があります。シーボルトは長崎ゆかりの人物と思えますが、中央区は江戸蘭学発祥の地であり、シーボルトが江戸蘭学の発展に貢献し、彼の娘・いねが築地に産院を開業した縁もあったため、この地に像が建てられたのでした。
中央区明石町一帯には、明治時代に外国人居留地が設けられたことから、公使館や領事館が置かれ、宣教師、医師、教師などの知識人たちが開いた教会や学校も数多く作られました。中央区はこうした背景のもと、西洋文化と関わりが深い文明開化の中心地として、花開いていったのです。
日本のトップ企業の本社が集積する八重洲・日本橋エリアをはじめ、流行最先端の地として愛され続ける銀座、日本の医療の原点となった築地など、中央区は今も昔も、最先端の知識が集積される地区です。
中でも日本橋周辺エリアは、将来の地価動向も、引き続き上昇が続くと予測されています。こうしたポテンシャルが高いエリアを中心に投資物件を探してみるのもいいかもしれません。