「定期借家制度」が15年たっても浸透しない理由

2000年に鳴り物入りで始まった「定期借家制度」。ところが、国土交通省の「平成27年度住宅市場動向調査によれば、導入後15年が経っても定期借家契約での入居は増えるどころか、過去最低の1.5%まで落ち込み、2015年1年間で賃貸住宅に住み替えた世帯のうち6割弱が、その名前さえ知らないという状況です。
契約期間を限定して、満了時に更新を行わない定期借家制度。そもそもどのような制度で、どうして浸透しないのでしょうか。

良質な賃貸住宅が増えるはずだった定期借家制度

従来の普通借家契約は、借主保護の観点が強い制度です。
一般的な契約期間の2年間が終了した後も、原則契約は自動更新され、貸主が賃貸物件の提供を終了したいと思っても正当事由がなければ解約できません。たとえ老朽化による建て替えなどの正当事由があったとしても、すべての入居者が速やかに退去するのは幸運な事例とされます。
定期借家制度は、2000年の「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」に基づいて導入されました。貸主の立場も尊重した制度です。自動更新がなく、1年未満の短期間でも住居を貸し出せます。いずれは建物の売却や取り壊しを希望する貸主にとっても、契約終了の目途が立ち、物件を賃貸できる制度なのです。
国土交通省としては、短期間の契約を認めることで、家主が大規模修繕などを行いやすくし、入居者に良質な住宅を提供する狙いがありました。しかし冒頭の通り、この制度は普及しているとは言い難い状況です。
国土交通省はこれに関して、「空室率の上昇で、普通借家契約を望む家主が多いのでは」としていますが、普及しない理由は良くわかっていないというのが現状です。

入居者から見た定期借家制度

入居者は、定期借家制度の特徴をどう見るのでしょうか。

・1年未満の契約

普通借家契約では嫌われる傾向の短期間退去ですが、建て替えのためや長期出張で半年間、単身赴任で1年間といった、短期間の入居希望の場合利用しやすいと言えるでしょう。

・更新がない

更新がなく、入居者の質によっても契約を終了できる貸主メリットがあるため、今までなら賃貸物件にならなかった一戸建てや分譲マンションなどの良質な物件が増えます。
転勤によるリロケーション物件には再契約ができないものの、期間限定の契約であるため家賃が比較的安く設定されているお値打ち物件があります。
また、アパート・マンション1棟丸ごとで定期借家制度を利用し、契約の終了後に貸主・借主が合意すれば再契約を可能とする賃貸物件は、迷惑行為をする人が長期間居住するリスクが低くなるメリットがあります。騒音をはじめ、周りの居住者に対して迷惑行為をする入居者は、貸主が再契約を拒めるからです。

限定される中途解約

借主の中途解約は、居住用の建物で床面積が200平方メートル未満のものについては、転勤、療養、親族の介護など、その他やむを得ない事情により借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときに限定されます。
つまり、例えば「もっと良い部屋に引っ越したい」という理由では退去できません。ただし、そもそも短期間の契約だとすれば、中途解約できないことがどれほどのデメリットになるのか、個々の感じ方によるかもしれません。

その他

本制度のその他の特徴「書面による契約」は、今や普通借家契約でも当然のことです。
また、契約書とは別の書面で「この賃貸借契約は更新がなく、期間の満了により終了する」と交付されることや、善良な入居者にとっては、期間満了の1年前から6ヵ月前までの間に「期間満了によって賃貸借が終了する旨、あるいは再契約のお知らせ」が届くことも、普通借家契約の更新時とそう変わりません。
このように、定期借家制度は貸主・借主の双方にとってメリットがあり、もっと普及してもおかしくありません。
それを阻むのは、「借り手市場」の中、そのメリットが伝わっていないために「更新できない」というネガティブなイメージが先行してしまい、避けられているからだと思われます。加えて、普通借家契約と異なる手続きへの不動産会社の不慣れさと、消極的な姿勢にもあるようです。

明確な説明と364日の定期借家制度

普通借家契約のほとんどを、再契約型の定期借家契約に置き換えて、成功しているポイントは二つあるようです。
一つは「期間満了とともに賃貸借契約は終了し、更新はありません。しかし、賃料滞納や契約違反などがなければ原則再契約をします」という分かりやすい説明を前面に出すことです。この説明で契約を取り消すような方がいれば、逆に入居後のリスクが減るかもしれません。
もう一つは「364日型」です。定期借家契約が「期間満了の6ヵ月前に家主から賃借人へ通知」を怠ると、期間が満了しても貸主は契約終了を主張できませんが、1年未満の定期借家契約ならば通知義務が適用されません。つまり家主は、ひと手間減らせる上に再契約の判断を300日経過頃まで留保できます。
さらに、全室の契約起点を4月1日にするなど同日に揃えれば、悪質な入居者は退去してもらえ、優良な入居者のみと再契約して、最新情報が入手できるというクリーンアップが効率的に行えます。起点日以外での初年度の入居期間は、185日と短くしておきます。
定期借地制度の概要や現在の普及状況などを解説しました。
定期借地制度が普及するためには、借り手にメリットをどう伝えるかにかかっています。例えば、「364日方式」と督促方法の工夫で滞納リスクに備えられるなら、家賃半月が相場の「家賃保証会社加入」が不要となる定期借家物件は、オーナーとしても魅力的なメリットを持つのではないでしょうか。