不動産投資に潜む破綻リスク「黒字倒産」とは!?

みなさんは、「黒字倒産」という言葉をご存じでしょうか。黒字なのに倒産するというのは一体どういうことなのでしょうか。
今回は不動産投資で起こってしまう黒字倒産の事例と注意点を解説します。

なぜ、黒字なのに倒産するのか

企業で言う「黒字倒産」とは、会計上の収支は黒字なのに、運転資金がなくなり、取引先に代金の支払いができなくなったり、振り出した手形が不渡りになったりしたことで、金融機関との取引が停止され会社が倒産してしまうことです。
個人の不動産投資においては、確定申告上は利益が出ているにもかかわらず、手持ちの資金が足りなくなって所有物件を売却する状態と考えてよいでしょう。
それにしても、なぜ、こうした黒字倒産は起こるのでしょうか。その原因を収支から見てみましょう。
例)築20年の木造アパート
物件価格:4,000万円(土地2,500万円、建物1,500万円)
賃料収入:360万円(利回り9%)
融資期間:15年
融資金利:2%
物件価格に対する賃料収入は、首都圏としては決して低くありません。融資期間と融資金利も、実際にある金融機関で貸し出されている条件です。しかし、これでも黒字倒産リスクはあります。

黒字倒産に至るまでのシミュレーション

上記の条件で、購入から3年目の収支をシミュレーションしてみましょう。(※税金は収入の20%、常時満室と仮定します。)
・年間の会計上収支:+16万円(賃料360万円-支払い利息66万円-減価償却費250万円-管理委託費18万円-固定資産税10万円)
・年間のキャッシュフロー:+20万円(賃料360万円-元本支払い243万円-支払い利息66万円-税金3万円-管理委託費18万円-固定資産税10万円)

会計上の収支も手元に入ってくる現金もプラスのため、一見問題がないように見えます。
さらに、購入から7年目の収支をシミュレーションします。
・年間の会計上収支:+287万円(賃料360万円-支払い利息45万円-管理委託費18万円-固定資産税10万円)
・年間のキャッシュフロー:−33万円(賃料360万円-元本支払い263万円-支払い利息45万円-税金57万円-管理委託費18万円-固定資産税10万円)

会計上は大きなプラスになりましたが、キャッシュフローはマイナスになってしまいました。原因は、建物の償却期間が完了したために、減価消却費250万円を収入から落とすことができなくなり、その分、税金が50万円以上も増加したからです。
一般のサラリーマンにとって、給料から毎月3万円近くが「持ち出し」になるのはかなり厳しいものです。それでも会計上は黒字で元本返済も進んでいるので、がんばって給与から補填する方もいます。しかし、それ以上に事態が深刻化する可能性があります。
手持ち資金がなくなれば、適切な設備交換やリフォームは行えません。新規入居者の獲得が滞れば賃料水準も維持できなくなり、賃料が下がれば、毎年の持ち出しは33万円では済まなくなります。仮に空室率20%の状態になると持ち出しは年間100万円を超え、売却か、借り換えかの選択を迫られるでしょう。
さらに、空室率が増加し賃料が下がった物件に対する金融機関の評価は、厳しいものになると思われます。売却する場合にもそれなりの価格にまで下げないと、売却できない可能性も出てきました。ただし、例に挙げた条件の場合には、元本の返済は進んでおり、残債以上の価格で売却できる可能性はあります。
都内の好立地で利回りが低い物件の場合、融資期間が長くても、減価償却完了のタイミングでキャッシュフローはマイナスになる可能性が高く、元本の返済状況次第で、売却しても負債が残るケースがあります。
例えば、物件価格4,000万円、利回り6%、融資期間30年、金利3%の条件の場合、将来的に運営が行き詰まる可能性があることは、それなりに不動産投資の経験がある方であれば気が付くはずです。年収の高い方や自宅を共同担保に入れる場合には、金融機関の融資も通ってしまうため注意が必要です。

黒字倒産とならないために

「黒字倒産」にならないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか。

1. 購入時に必ずシミュレーションを

例に挙げた融資期間15年の物件が、賃料収入以外からもキャッシュフローが生み出せているのであれば、問題はないでしょう。
しかし、そうではない場合には、金利が多少高くても、長期で融資してくれる金融機関からお金を借りましょう。利回り9%なので、融資期間30年、融資金利3%の条件であれば、キャッシュフローはマイナスにならないはずです。
また、好立地で利回りが低い物件の場合は、購入時に頭金を用意して月々の支払いを減らすことが重要です。それができないと、将来黒字倒産に陥るリスクは高まります。不動産投資では、こうしたシミュレーションを、購入前に綿密に行うことが大切なのです。

2. 減価償却完了前に借り換えを行う

黒字倒産のリスクがある物件は、減価償却が完了する前に、融資の借り換えを検討しましょう。手持ち資金を頭金として出すことで、借り換えできる可能性も高くなります。マイナスになったキャッシュフローの補填のために手持ち資金を持ち出している状態では、金融機関との交渉も困難になります。
もともとの条件は悪くない物件でも、黒字倒産が原因で売却するしかない状況に陥ることがあります。ただし、ある程度の頭金が用意できる場合や、対象物件以外のキャッシュフローで経営が回る場合には、黒字倒産の可能性がある物件でも購入が可能です。
好立地で利回りが低い物件でも、資金が潤沢で安定経営が可能であれば、一概に悪い選択というわけでもないのです。長期戦略に基づいた事業における「経営判断」の結果というわけです。
黒字倒産で不動産投資を失敗しないためには、自分の経済状況、物件の条件を照らし合わせ、シミュレーションをしっかりと行うことが重要です。
【編集部オススメ記事】
黒字で倒産? 不動産投資で注意すべきデットクロスを解説
アパート経営に失敗する人に共通する5つの理由
しくじり大家に学ぶアパート経営⑥ 「資金管理で失敗しちゃった大家さん」
不動産投資を「事業」と考えるべき4つのポイント
相続税対策に有効なアパート経営において注意すべき点はないの?