不動産購入に役立つクラウドファンディングとは

「クラウドファンディング」という言葉をご存じでしょうか。「群衆(crowd)」と「資金調達(funding)」を組み合わせた造語で、インターネットを利用して不特定多数の人から事業や商品開発への出資を募ることです。
これまで事業や商品開発のための資金は、金融機関などに相談し融資をしてもらうのが一般的でした。
確実に収益が見込めるもの以外は断られることも多かったのが実態ですが、クラウドファンディングでは、不特定多数の人間に対して、少額からでも資金の提供を呼び掛けられるため、プロジェクトの意義や実行する人の熱意などがうまく伝われば、直接会うことがなくても、出資してもらうことが可能です。
日本国内でも、近年広がりを見せています。

3種類のクラウドファンディング

クラウドファンディングの形態は複数あります。今回はその中から、不動産の分野でも参考になるものについて紹介します。
クラウドファンディングは、大別すると「寄付型」、「投資型」、「購入型」の3種類があります。

● 寄付型

被災地や開発途上国支援など、社会的に貢献するようなプロジェクトに対して、見返りを求めずに出資するものです。そのため出資対象となるのは、非営利団体(NPO)など、社会貢献度の高い組織の場合が多いようです。

● 金融型

個人や事業者に対して投資家が出資し、金銭によるリターンを求めるものです。「金融型」の中には「レンディング型」、「ファンド型」、「エクイティ型」の3種類の運用方法があります。
レンディング型とは、イメージとしては「融資(貸付)」に近いもので、出資者への担保や保証があったり、資金の提供を受ける側には返済義務があったりします。
エクイティ型とは、株式投資のような形で運用されるものです。そのため出資者への担保や保証がなく、資金提供を受ける側も返済義務はありません。

● 購入型

プロジェクトに賛同する人々が出資をする見返りとして、金銭以外のモノやサービスなどを受ける仕組みのものです。

クラウドファンディングが貴重建築物を守った!

この「購入型」クラウドファンディングの手法で、ある貴重な建築物を後世に残すことができたという一例を紹介します。
「個人所有でビジネスに活用している建物(旅館など)が、文化的、歴史的な価値が高いのに、ほとんど知られていない。たくさんの人に存在を知ってもらい、利用してもらって、その素晴らしさを体感してほしい。そのためには大規模な改修が必要だが、その資金も大口スポンサーもなく、このままでは建物がどんどん老朽化するだけ――」
2015年、大阪府河内長野市にある温泉旅館が、購入型クラウドファンディングで救われました。実はこの旅館、東京駅や日本銀行本店など、近代日本を代表する西洋建築物を数多く手がけた建築家の辰野金吾氏が設計した和風建築でした。辰野氏が手掛けた建物は希少な存在です。
しかし、その事実はほとんど知られることもなく、2003年に国の登録有形文化財に指定されるまでは、「知る人ぞ知る」という存在でした。
旅館には大正ロマン溢れる落ち着いた雰囲気と静謐な空間があり、天然ラドンを豊富に含む天然温泉もありました。しかし大浴場しかなく、露天風呂など利用客からの人気を集める設備を造りたくても、資金がないため結局客足も伸びないという深刻な問題に直面していたそうです。
これに目を付けた東京のある投資ファンドが、現在使われていない離れを露天風呂付き客室として改装することをインターネットで提案し、改装工事費800万円、付帯工事400万円、運転資金300万円の計1,500万円の出資(1口5万円)をクラウドファンディングで募りました。
すると、181人の出資者から資金が集まり、募集から半年で新しい客室が完成したのです。

出資者が手にしたもの

出資者はこの旅館での宿泊が無料になったり、大きな割引を受けられたりするという特典を手にしました。つまり、クラウドファンディングへの出資金でこうした特典を「購入」したというわけです。
しかし、出資家にとっての喜びはそうした特典だけではなく、貴重な文化的建築物を自分の出資金で価値を高め、そのまま埋没してしまうことから救えたという達成感にもあるように思います。
不動産投資には特別な知識や経験が求められ、プロ以外の人には敷居の高いものと感じるかもしれません。今回紹介したような希少価値の高い建築物への投資も、通常だと素人には手が出せないような分野です。
しかし、「購入型」のクラウドファンディングを利用すれば、こうした案件に投資できるようになったのです。それは社会の活性化においても、大きな前進と言えます。
クラウドファンディングは少額から参加できるので、初心者にも始めやすい投資手法です。その基本的な知識や仕組みを正しく理解すれば、あなたの不動産投資の選択肢は間違いなく増えることになるでしょう。