不動産業界が注目する、2017年度の国家予算

2017年度国家予算の概算要求と税制改正の要望が8月末に出揃い、2016年11月現在、財務省は予算編成の佳境を迎えています。概算要求とは、予算成立に向けた重要な内容かつ節目です。予算の仕組みをきちんと理解し、いち早く予算や税制などの施策情報をつかめれば、不動産投資やアパート経営に活かせます。
そもそも、概算要求とは何でしょうか。そして、2017年度の不動産業界に影響を与える内容はあるのかどうかについて検証してみましょう。

国の予算と概算要求

国の予算とは、国の活動に必要な金銭の収入と支出の総合的な計画です。政府が毎年編成して、国会の審議を経て承認を受けます。国の政策や事業は、この国会の承認を得た「予算」や「法律」などに沿って進められます。
つまり、2017年度の予算書とは、政府が2017年度にどのような政策を実施していくのかを数字で表した「日本の計画書」です。
国の予算編成は、閣議了解された「概算要求基準」に基づき、各府省庁が翌年度の政策に必要な経費の見積書「概算要求書」を、8月末日までに財務省に提出します。財務省は9月から各省庁の概算要求書を検討し、必要な調整を行ったうえで、12月中旬に「財務省原案」を策定。
その後、各府省庁へ原案の内示を経てから、年内に「政府案」として閣議決定されます。年明けに政府が国会に予算案を提出し、国会審議を経て予算が成立すると、4月から予算に基づいた政策が実行されます。

国土交通省の概算要求

国土交通省は、概算要求の4本柱の一つに「地域の活性化と豊かな暮らしの実現」を掲げました。その中に「安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備」があり、そこで3つの政策を提示しています。
その中の目玉は、1,320億円を要求した「子育て世帯や高齢者世帯が安心して暮らせる住まいの確保」であり、以下のような内容になっています。
・ 民間賃貸住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度の創設
・ サービス付き高齢者向け住宅や住宅団地等における子育て支援施設等の整備の推進
・ 三世代同居など複数世帯の同居に対応した良質な住宅の整備やリフォームへの支援
・ 近居、若者支援等の地域ニーズに応じた地方公共団体と協調した金融支援制度の創設 など

また、「空き家対策の推進、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」に95億円を要求しました。既存住宅流通の市場規模を倍増(2013年4兆円 → 2025年8兆円)、リフォームの市場規模を5兆円増(2013年7兆円 → 2025年12兆円)を目標としています。具体的には、以下の内容となっています。
・ 市町村等が実施する空き家の活用や除却等の総合的な支援の推進
・ 専門家等と連携して取り組む先駆的な空き家対策に対する支援
・ 所有者情報等を活用して空き家の利活用を図る取組への支援
・ クラウドファンディング活用や空き家バンク標準化による空き家等の再生・流通促進 など

環境省の概算要求

環境省は、重点施策の2本柱の一つに「循環共生型社会の構築」を掲げました。
その中に「次世代につなげる暮らし・社会の変革による地球温暖化対策」があり、パリ協定を踏まえて、2030 年度にCO2の26.0%削減(2013 年度比)を達成するための施策の一つに、45億円を要求した「賃貸住宅における省 CO2 促進モデル事業(国土交通省連携事業)」があります。
一定の断熱性能を満たし、かつ、住宅の省エネ基準よりもCO2排出量が少ない賃貸住宅を新築、又は同基準を達成するように既築住宅を改修する場合に、追加的に必要となる給湯、空調、照明設備等の高効率化のために要する費用の一部を補助するというものです。
・ 20%以上(再エネ自家消費算入可)→ 1/2(上限額:60万円/戸)
・ 10%以上(再エネ自家消費算入不可)→ 1/3(上限額:30万円/戸)

また、「省エネ家電等 COOL CHOICE推進事業」に約99億円を要求しました。賃貸物件に関しても、次の2件が該当します。
まず、「COOL CHOICE特設サイト開設支援」では、既存の仲介サイトで省エネ賃貸専用の特設サイトを開設する際、制作費用を支給するほか、新たに仲介サイトを開設する場合も補助の対象とし、一定の上限を設けて仲介サイトの運営を支援する方針です。
もう一つ「CO2削減型マーケットの販売・サービス促進支援」では、CO2削減量に応じた賃貸物件仲介促進支援として、3星以上省エネ賃貸物件の選択によるCO2削減量(3星賃貸物件:従来型の世帯住宅より2年間で約1.2トン減)に応じ、不動産仲介事業者に、2,000円/t-CO2を支給するというものです。

予算編成には大切なヒントがある

このように、8月末の概算要求の内容が、翌春からの国の政策の基となります。
不動産投資やアパート経営の観点から2017年度の概算要求で注目する事業は、以下のものです。
● 国土交通省
「子育て世帯や高齢者世帯が安心して暮らせる住まいの確保“民間賃貸住宅を活用した新たな住宅セーフティネット制度”」
「空き家対策の推進、既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」
● 環境省
「賃貸住宅における省 CO2 促進モデル事業」
「CO2削減型マーケットの販売・サービス促進支援」
政策には助成金を伴うものも多くありますが、「知っている者勝ち、早い者勝ち」という側面が否めません。情報に高いアンテナを張っておき、対象となる制度を積極的に活用することが、不動産投資の利回りを高めたワンランク上の土地活用やアパート経営につながるのではないでしょうか。