「新築区分マンションを節税用に購入」は正しい選択なのか

「新築区分マンションの購入はサラリーマンにとって節税になる」といわれます。
確かにそういう効果はありますが、その程度は個々の事例で異なり、思っていたほどの効果が得られない場合もあります。節税目的での不動産投資を検討しているならば、きちんと仕組みを知り、自分にとってのメリットを検討する必要があるでしょう。
今回は、新築区分マンションの節税効果について検証します。

節税の理由は損益通算

不動産投資が節税となるのは、「損益通算」いう異なる所得を合算することができる仕組みによるものです。諸経費のほかに、不動産投資の借入金も損益通算できます。給与所得に不動産所得のマイナス分を通算することで、課税額が圧縮できるという仕組みです。
毎月のキャッシュフローが赤字だったとしても、節税分でその赤字を取り戻せる可能性があるのです。
具体例で考えてみましょう。
【条件】
・ 3,000万円の新築マンションを借入金2,500万円で取得
・ 返済期間:25年
・ 金利:4%
【毎月収支】
・ 家賃収入:15万円
・ 毎月返済額:13万2,000万円
・ 諸経費(管理費・修繕積立金など):2万円
この条件だと、毎月2,000円の赤字ですが、給与所得と損益通算することで、赤字以上に所得税が軽減できるかもしれません。
なお、損益通算には「減価償却費」が大きく影響します。減価償却とは、建物の価値が下落した分を経費として計上できるという決まりです。実際の支出は発生せず、帳簿上で経費に算入されます。

節税効果はどのくらい?

給与所得から、不動産所得の赤字分100万円を差し引いた場合の節税効果を検証します。なお、給与所得の所得税は、以下の速算表で算出します。
【所得税の速算表(抜粋)】

課税される所得金額 税率 控除額
195万円超~330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超~695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超~900万円以下 23% 63万6,000円

例1:給与収入700万円の場合
損益通算しない場合、
(700万円×23%)-63万6,000円=97万4,000円
不動産所得を損益通算した場合、課税所得は700万円-100万円=600万円となり、
(600万円×20%)-42万7,500円=77万2,500円
となり、節税効果は約20万円です。
例2:給与収入800万円の場合
損益通算しない場合、
(800万円×23%)-63万6,000円=120万4,000円
不動産所得を損益通算した場合、課税所得は800-100=700万円となり、
(700万円×23%)-63万6,000円=97万4,000円
となり、節税効果は23万円です。

節税でありがちな失敗例は?

新築マンションでの節税は万能ではありません。上記のほかにもいくつかの注意点があります。

1. 減価償却費の節税効果は年々薄まる

減価償却費として計上できる費用は経年とともに減っていくため、損益通算の効果が薄くなっていきます。

2. 固定資産税や空室リスクは健在

損益通算に頼った節税は、固定資産税や空室リスクには適応できません。投資物件の固定資産税や一定の空室率を事前に想定し、節税効果を見極める必要があります。

3. 継続して高水準の給与所得が必要

所得税率は所得が高い人ほど高くなります。ですので、一定以上の給与所得がないと、損益通算による節税の恩恵は少なくなります。
また、借入は1年や2年といった短期間ではありませんから、継続して給与所得が高いことが望ましいです。給与の減少、転職や退職といった事態により、赤字だけが積み重なり、メリットがなくなるという事態も起こり得るのです。

4. 土地借入金の返済は損益通算できない

土地のための借入金の返済については、損益通算できるのは元本部分に限られます。一般的な返済方法である元利均等返済では、返済当初は利息の割合が多いため、損益計算の効果が小さくなることに、ご注意ください。
区分建物の購入でも、部屋の割合に応じた土地取得部分があるので、事前に確認しておきましょう。なお、建物の返済分は利子も損益通算が可能です。

売却することで解決できるとは限らない

「損益通算でメリットが大きい減価償却費が年々減るならば、数年したら売却すればいいじゃないか」と考える方もいるでしょう。ここで注意したいのは、「新築マンションは売却が難しいかもしれない」という点です。
新築マンションは、購入と同時に2割ほど価格が下がるといわれており、借入金の残債が多い時期に売却すると、売却額がローンの残債を下回る可能性が高くなります。また、借入金を完済しない限り抵当権が抹消できないため、数百万円の持ち出しが必要になるケースが多いです。
頭金を入れておけば、損切りリスクは抑えられます。しかし、「不動産投資を始めるなら、頭金を入れるよりも借入を活用してレバレッジ効果を得るべきだ」という考えもあります。頭金が最善の策とは言い切れないでしょう。
少なくとも、節税の恩恵を最大限受けたいならば、万が一に備えて「損切り資金」だけは用意しておきましょう。そうしないと、損切りしたくてもできず、毎年の赤字が生活を圧迫する恐れもあります。
さて、今回は節税目的の新築マンション投資について解説しました。もともと年収が高いような人には、節税が非常に重要かもしれません。
しかし、不動産投資では、物件からの家賃収入で利益をしっかり上げることを第一に考えるべきです。むしろ、節税のメリットは、収益が出なかった場合の「保険」として考えないと本末転倒になってしまいます。節税効果を十分に理解しつつ、収益性を重視した不動産投資をお勧めします。