賢いアパート経営のために知っておきたい「積算価格」

竣工後の物件を購入するのでなく、個人投資家自身が設計士に希望を伝えて、間取りや内装を決めた賃貸物件は、オーナーとしての「思い入れ」もひとしおです。最近は、賃貸アパートも周辺の物件とは異なる、いわば「独自性」が求められているので、設計の段階から参画する個人投資家も多くなっていると聞きます。
物件の設計が決まると、次は「その物件を、いくらで建築することができるのか」の見積もりです。その時に気を付けなければならないのが、今回ご説明する「積算価格」というものなのです。

積算価格とは?

積算価格とは、物件の設計図をもとに、建設会社や不動産会社が作成する「見積もり」です。
本来は建設業界や不動産業界で頻繁に使用される業界用語ですが、最近は、個人投資家など消費者側にも通じる言葉に変わってきました。
個人投資家が建築会社に不動産物件の建設を依頼する場合は、多くの場合、複数の会社に同時に見積もりを依頼します。いわゆる「相見積もり」です。通常、アパートの建築期間は長期間にわたります。その間の市場動向次第で、建築関連の原材料の価格が上下したり、建築人手の依頼相場が変わったりすることもあります。建築会社としても見積書を作成する段階で、先々までの市場推移を正確に織り込むのは難しいというのが実情です。そこで建築会社は、まずは概算の建設価格を作成し、投資家に提出するのです。
なお積算価格が記載された提出資料を「積算見積もり(書)」といいます。

積算価格の種類

気を付けたいのは、積算価格と一言でいっても、いくつかの段階に分かれており、その役割は異なっているという点です。

大概算 相見積時 非常にざっくりとした積算価格
概算 契約前 ある程度、細かい部分工事まで反映した積算価格
本算 契約後 部分工事ごとに価格を見積もった積算価格

建築会社は、相見積もり時に「大概算」の積算価格を投資家に提出します。そして、競合先が絞られ、契約前の段階になったタイミングで、部分工事などより細かい部分を反映した「概算」の見積もりを作成します。そのうえで、契約後、より厚みのある「本算」の積算価格を作成します。これらの名称は建設会社によって異なります。また、3段階以上に積算の種類を設定している建設会社もあります。
この本算の積算価格は、工事現場での請負会社や個人親方に業務を発注する時の価格の目安にもなるためとても大切です。建設会社の多くは、積算を担当する積算部のほかに、経営陣や営業部、工事も含めて、その積算が適正なものかを会社として判断する会議を開催しています(参加するメンバーは会社の規模や考え方によって変わります)。

「概算」の積算価格はあくまで参考に

個人投資家にとって、この積算価格との付き合い方にはいくつかの注意点があります。大概算や概算の積算価格は、建設会社同士の比較や大まかな建築価格の把握に使うものですが、個人投資家が気になる「不動産投資の利回り」にも関わってきます。
利回りとは不動産投資物件の収入を建築価格で割った値のことで、その物件の投資適性を確認するものです。一般的には10%を超えると「投資適性物件」として評価されますが、ここ数年は不動産価格の上昇により7~8%が適性相場といわれています。
利回り計算は、税金や諸費用を含む「実質利回り」と、含めない「表面利回り」があり、用途や状況によって使い分けます。利回りは下がりますが、現実性のある実質利回りに注目することをお勧めします。
この利回り計算の結果を参考に、物件の建設を判断します。当然、最初の段階では「大概算」や「概算」での利回り計算となります。しかし、この結果だけに頼るのはとても危険です。「本算」の段階になって、積算価格が「大概算」や「概算」と変わることは良くあります。「本算」の出された段階で、利回りも修正するようにしましょう。
なお、この「本算」は、利回り計算のほかに、ローンを組む金融機関でも必要になります。

物件完成後も、本算の積算価格はいつでも取り出せるように

アパートが完成し、物件引き渡しが済んで不動産運用を開始した後も、「本算」の積算価格は手元に残すようにしましょう。積算価格を記した見積書には、部分工事の材質や分量が記載されていることがあります。建築後、年月が経過して修繕やリフォームが必要となった時、リフォーム業者に積算の見積書を見せると、新築時の材質や工法を伝えることができ、円滑なリフォームの案件依頼を実現することができます。
建築物件の「積算価格」について説明しました。見積もり時(契約前)の積算価格と、契約後の積算価格とは、精度や意味合いが異なることを、おわかりいただけたと思います。
積算価格を見積書から読み解くには建築の専門知識が必要ですが、不動産投資家としてはぜひ関心を持っておきたいものです。そして物件の竣工後も、積算価格の資料はしっかりと保存しておくようにしましょう。