4年ぶりに市場規模が増加! 今話題の「私募不動産ファンド」とは

不動産事業には、実物の不動産を所有して賃貸収入を上げる以外に、複数の投資家から集めた資金を使って不動産を運用し、その利益を投資家に分配する仕組みがあります。これを「不動産ファンド」と呼びます。
有名なものは、上場している「J-REIT」でしょう。上場していないファンドは「私募不動産ファンド」と呼ばれます。三井住友トラスト基礎研究所は、この私募不動産ファンドの資産規模が4年ぶりに増加したと9月に発表しました。

バブル崩壊の後始末のために不動産の証券化が進んだ

もともと不動産ビジネスとは、現物不動産を購入して賃貸収入を稼ぐものでした。しかし、1960年代にアメリカで小口の資金を集める仕組みの「REIT(Real Estate Investment Trust、以降リート)」が生まれました。1970年代にオーストラリアでもスタートし、日本やヨーロッパに広がりました。
日本では1990年代のバブル崩壊後、不良債権処理のために不動産の流動化に向けて制度作りが進みました。制度は二つありました。一つは、特定目的会社(SPC)を作って資産の流動化を行う「不動産特定共同事業」。もう一つは、投資信託に関する法律を改正し、不動産を証券化して上場する仕組みです。JAPANの「J」を付けて「J-REIT」と呼ばれ、2001年9月に東京証券取引所に上場されました。

私募は大口資金を集めるため、市場規模「大」

J-REITは市場に上場する「公募」の商品であり、投資家を募って資金を集めるのは「私募」と呼ばれます。後者はJ-REITに比べて高い利回りを期待できる一方、基本的に3〜5年以上の保有が原則のため、国内外の機関投資家や個人富裕層といったプロの投資家が対象になり、市場規模は大きくなります。
J-REITと「私募ファンド」の違いは以下の通りです。従来は大口だけが対象だった私募ファンドにも新しい風が吹いているようです。

私募不動産ファンド

J-REIT(公募)

上場の有無

非上場

上場

不特定多数者の購入の可否

不可能だったが、風向きが変わってきた

投資信託として可能

投資期間

一般的に3~5年以上

任意の期間

現金化

行いにくかったが、変わる可能性はある

投資信託並みに行いやすい

年利回り

高め

3.74%(2016年11月現在)

現状市場規模

15.5兆円(2016年6月末時点)

11.2兆円(2016年11月現在)

投資家保護

金融商品取引業の規制対象

上場投資信託なので厳しい保護

関係法令

会社法、資産流動化法

投資信託法

一般社団不動産証券化協会(ARES)のまとめでは、私募ファンドが保有する不動産資産はオフィスが最も多く、次いで住宅、商業施設、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設などの順になっています。成熟した日本の不動産マーケットを背景に国内外の大型資金を招き入れているため、J-REITよりも市場規模が大きくなっています。日本のリート市場規模はアメリカに次ぐ世界2位です。すでにリートの発足で先行したオーストラリアを抜いています。

証券化という仕組みを使用

J-REITも私募不動産ファンドも、「証券化」という手法で資金を調達する仕組みは同じです。
都心の一等地にあるオフィスビルは、1棟で数十~数百億円します。投資家や企業が単独で投資するのは簡単ではないため、売り買いしやすいよう1口1億円や5,000万円の小口化した証券として販売するのです。
私募ファンドでは、まず不動産を所有するための『投資ビークル(乗り物)』を作ります(具体的には、合同会社やSPCなど)。次に、この『乗り物』の株式や持ち分を保有することを目的とした、一般社団法人を作るのが一般的です。
対象不動産は、もともとの所有者が親会社や資産運営を代行する「アセットマネジメント(AM)」会社です。仮にそこが潰れたとしても、投資家を守る「倒産隔離」になる仕組みになっています。

専門家が多く関わる

証券化には複数の専門家が関わります。アセットマネジメント会社は、金融庁への登録を義務付けられた投資運用業か、投資助言・代理業の資格が必要です。テナントの管理やメンテナンスなど、不動産管理には「プロパティマネジメント(PM)」会社が関わり、他にも信託銀行や法律事務所、会計・税理事務所が関与します。普通の不動産を売買する場合と違うのは、アセットマネジメント会社という存在です。
現在約60銘柄を揃えるJ-REITは、J-REIT運営会社がマネジメントをします。私募ファンドはリターンを大きくするために、自己資金だけでなく金融機関からの借入を活用する仕組みを取り入れます。
たとえば、1億円の資金で利回りが10%の不動産を購入して貸し出せば、毎年1,000万円が粗利益となります。一方、手元の1億円と5%の金利で借りた1億円を合わせた2億円で同じ利回り10%の不動産を運用する場合、賃貸収入2,000万円から金利500万円を引いた1,500万円の粗利益になります。
このような借入金を活用した利益増大策を「レバレッジ効果」と呼び、私募ファンドがJ-REITよりも人気が高いのは、このレバレッジ効果のおかげです。そして、これをマネジメントするのが、アセットマネジメント会社です。
私募不動産ファンドについて解説してきました。この他にも、リートを私募化した「私募リート」や、私募不動産ファンドをクラウドファンディングで行う方式も注目されています。
2010年に野村不動産が私募リートの運用を始めて以来、三菱地所、三井不動産などの大手デベロッパーも相次いで参入し、2016年現在では14社が取り組んでいます。また、クラウド型私募不動産ファンドは2015年に始まったばかりですが、クラウドファンディング自体が2015年で363億円市場規模(2016年8月 矢野経済研究所発表)にまで成長してきました。今後、クラウドファンディングと不動産の融合は、さらに注目されることでしょう。