「不動産市場動向マンスリーレポート(9月)」に見る不動産市場の現状と今後

国土交通省が毎月公表している「「不動産市場動向マンスリーレポート」をご存じでしょうか。これは、土地など不動産の市場動向を適時、適切に把握するため、国交省が不動産関連指標などのデータを毎月収集、整理しているものです。
今回は最近の「不動産市場動向マンスリーレポート」を分析し、新築マンションにスポットを当てて、現状と今後について解説します。

新築マンションの現状

1. 首都圏のマンション供給戸数について

首都圏の新築マンション供給戸数は、2016年(1月~7月)の月間平均で5,849戸となっています。これは、2015年(1月~7月)の月間平均の5,930戸と比較すると、約1.4%の減少です。
「マンション価格が上昇し、マンション販売が不振になった」と報道されることが多くなりましたが、2010年の月間平均供給戸数の4,281戸と比較すると供給量は増加しています。最近になって急激に供給量が落ち込んでいるというものではありません。
いつと比較した場合、マンション供給量が減少したのかというと、2008~2009年のリーマンショックの時期です。リーマンショック前の10年間で最も供給量の多かった2006年の月間平均供給戸数1万439戸を、今年度の月間平均と比較すると、実に44%の供給量減となっています。
冷静に分析すると、「マンション価格の上昇による販売不振」というよりは、「いまだにリーマンショック前の状態に戻れていない」という言い方が正しいようです。

2. 大阪府のマンション供給戸数について

マンション販売が不振といわれる中、大阪では、ここ数年でマンションの供給量が増加しています。2016年(1月~7月)の月間平均供給戸数は1,432戸で、2015年(1月~7月)の月間平均供給戸数1,102戸と比べると約30%の増加です。
2006年の月間平均供給戸数2,020戸と比較すると、まだ供給量は戻っていませんが、首都圏に比べると供給量は着実に増加し、リーマンショック前の状態に戻りつつあります。
なぜ、大阪府のマンション販売は好調なのでしょうか。データから分析すると、マンション価格の影響が大きいようです。
2016年8月時点の首都圏の新築マンション単価は、81.2万円/平方メートルである一方、同年8月時点の大阪府の新築マンション単価は、66.0万円/平方メートルとなっています。
30代サラリーマンの平均年収は400万円程度です。住宅ローン審査は年収の7倍程度までと言われていますので、共働きの夫婦が分譲マンションを購入する場合、単純計算で400万円×2人×7倍=5,600万円が限度値となります。これだと首都圏のマンション単価80万円/平方メートルでは70平方メートルの分譲マンションが限界です。
さらに登記手数料や住宅ローン諸経費を考えると、首都圏のファミリー向け分譲マンションは一般のサラリーマンに手が届かない価格になってきていることが分かります。
もう一つ、大阪府の分譲マンションが好調な理由がデータから見えてきます。
2016年(1月~8月)の首都圏の分譲マンション平均価格が、5,677万円なのに対して、大阪府は3,437万円。それぞれの単価で計算すると、平均面積は首都圏で70平方メートル、大阪府では52平方メートルとなっています。2006年時点では、大阪府の販売平均面積も70平方メートルです。
実は単身用の分譲マンション販売が増加しているのです。このデータはそれを示しています。首都圏ではマンション価格上昇で、投資利回りは確実に下がっています。利回りの比較的高い関西への投資が盛んになっていることが分かります。

新築マンションの今後

首都圏のマンション価格は、これ以上大幅な上昇はないと思われます。その理由の一つは、一般のサラリーマンが、買いたくても買えない価格になってきているからです。
給与平均が上がる、もしくはマイナス金利などの金融緩和の影響で、7倍が目処と言われている住宅ローンですが、10倍程度まで貸し出すという銀行がたくさん出てこない限りは、80万円/平方メートル以上の分譲マンションを販売することは難しい状況です。今後は関西地区を中心とした投資物件の建設が加速すると思われます。
今回は、「マンスリーレポート」のデータを読み解いてみました。しばらくの間、首都圏の新築マンション販売価格は踊り場が続くと推測できます。投資の対象は首都圏から関西地区にシフトしそうな状況です。こうしたデータから冷静に分析し、市場を俯瞰してみることも重要です。