「不動産市場動向マンスリーレポート」にみる不動産投資の過熱状況

ここ数年、不動産の価格は上昇し、不動産投資の過熱ぶりが報道されることも多くなりました。
今回は、国土交通省から発表されている「不動産市場動向のマンスリーレポート」を分析し、首都圏における不動産投資の状況について解説します。

新設住宅着工戸数について

首都圏の新築分譲マンション供給戸数は、2016年(1~9月)の月間平均で5,567戸です。これは、6年前の2010年の月間平均4,281戸と比較すると、3割以上の増加となります。
また、新築分譲マンション以外の貸家(アパート、1棟賃貸マンションなど)の供給戸数は、2016年(1~9月)の月間平均で1万2,214戸。こちらも2010年の月間平均である9,193戸と比較すると、3割以上増加しています。
このように2010年と比較すると、分譲マンション・貸家共にその供給戸数は増加しています。しかし過去15年間の供給ピークである2006年と比べると、分譲マンションは約半分に減少、それ以外の貸家についても1割程度の減少となっており、供給戸数だけで見ると、過熱しているというほどの数値ではないことが分かります。
ただし、リーマンショック前の数値と比較すると、「貸家」の供給戸数は同じ水準まで回復しています。その点では、不動産投資が近年の供給戸数の増加を牽引しているといえるでしょう。

不動産価格指数について

2016年8月時点で、首都圏(南関東圏)の不動産価格指数は以下の通りでした。
【2010年の指数を「100」とした不動産価格指数】
・ 住宅地:105.1
・ 戸建て住宅:97.0
・ マンション:127.8

これらの指数を見ると、マンションだけが大きく値上がりしているように見えますが、この指数はあくまで実際の取引価格をサンプリングして算出している数値であり、単位面積当たりの価格指数ではありません。
別途マンション市場の分析もあり、首都圏の取引平均面積は70平方メートルで、2010年とほぼ変化はありません。しかし、賃貸を目的としたアパートや1棟マンションでは、1戸当たりの面積を小さめにして販売価格を抑えている物件も出てきていますので、不動産価格指数をそのまま鵜呑みにしないほうが良さそうです。
いずれにしても、バブル期のように不動産価格が2倍、3倍となっているわけではないので、こちらも不動産投資が過熱しているというほどの数値ではありません。不動産価格上昇の理由は、不動産需要の高まりという面よりも、東京オリンピックに向けたインフラの整備や復興支援の本格化による、人材不足・資材高騰が原因と考えられています。

不動産投資が過熱していると言われる理由

供給戸数も「過熱」といわれるほど急激に増えてはおらず、不動産価格も需要の高まりによるものではないのに、なぜ、「不動産投資が過熱している」ということが各方面で言われているのでしょうか。
その理由の一つは、国内銀行の不動産向けの新規貸出金が大きく増えていることでしょう。
2016年9月時点の年間新規貸出金額は、9兆6,390億円となっています。このままのペースだと、年間12兆円程度になる見込みです。これは、2010年の新規貸出金額と比較すると、実に1.5倍の金額となります。
2016年に入ってからマイナス金利政策が実施されて、銀行は融資を積極的に行っています。金利も低く、審査も一時期より緩和されています。銀行から1億円の不動産融資を受けた年収400万円台のサラリーマンも出てきているようです。

現在の融資条件での注意点

現在の低金利下では、1億円を借りても支払利息は年間200万円程度です。しかし、人口の減少による空室率の上昇や今後の金利上昇を考えると、金融機関が貸してくれるからといってどんどん融資を受けるのは危険です。
「金利が上がれば不動産価格も上昇するから、売却すれば利益が得られるだろう」と思っている方もいるかもしれません。しかし前述の通り、現在の不動産価格の上昇は建築費用などの増加に伴う部分が大きいといえます。そのため、2020年の東京オリンピックが終わって復興支援も収束に向かった場合、景気回復による金利上昇があっても本当に不動産価格も上昇するかどうかは不透明です。加えて、人口減少で入居者の獲得競争となった場合、賃料低下の可能性もあります。

将来リスクを考慮した不動産経営を

「不動産市場動向のマンスリーレポート」に見られる供給戸数の増加や不動産価格の上昇は、「過熱」と言われるほどの水準ではないでしょう。銀行の不動産投資に対する貸出金額が大きく増加していることから、借入比率の高い状態で、不動産投資が行われていると推察できます。
将来的な人口の減少や金利の上昇があった場合、借入率の高い状態だと賃料の低下や支払利息の増加が経営を圧迫します。常に財務状況を確認しながら、将来リスクを考慮した借入と不動産運営を心がけましょう。