失敗しない出口戦略! 不動産売却時期の見極め方

不動産投資は、物件の購入後もキャッシュフローや税金、出口戦略への目配りが欠かせません。
たとえ満室稼働していても、キャッシュの流れと税金に配慮していないと、会計上は黒字なのに手元に現金がなく破綻するという黒字倒産を招く可能性があります。
また、安定した家賃収入で満足している間に、物件の資産価値が下がってしまっては、投資が成功したとはいえません。不動産だからこそ、どのような物件をいくらで購入するか以上に、いつ、どのように売却するのかという出口戦略が重要なのです。今回は、不動産を売却する時期の見極め方を探ります。

年に一度は資産の時価評価を

家賃収入から経費を差し引いた収益は、法人ならば決算、個人でも確定申告で、年に一度は損益計算書で示されます。
しかし、資産価値については、賃貸借対照表では十分とはいえません。なぜならば、帳簿上の金額と、市場価格に大きな隔たりがあるからです。減価償却された建物価格は帳簿上の数字よりもさらに低いでしょう。購入時のまま計上され続ける土地価格は、景気や近隣の状況によって変動している可能性があります。
そこで、少なくとも年に一度は資産価値の「時価」を把握しておく必要があります。購入時と同様に査定してみるのです。例えば、中古物件では大きな意味を持つ土地価格は、最新の路線価×面積÷0.8などで概算できます。
土地・建物の修正値にもとづいて資産表を継続的に検討していくと、どの物件を手放してどのような物件を購入すればいいかみえてきます。資産価値が上がっている物件を売って利益を確定するのか、逆に資産価値が下がっている物件を売って損失を最低限に抑えるのかなどです。また、この修正値を反映させた賃貸借対照表を用いると、本来の純資産も数値化できます。

3、5、10年目の節目で売却

不動産売却の時期に関しては、市場価格のほかに売却を検討すべき物件の「節目」が存在します。その節目について説明しましょう。

● 3年後

新築で購入し順調に稼働している物件ならば、買い手のローンの付けやすさを考慮すると、最初の節目になります。なお、3年に限りませんが、ローンの固定金利の期間終了時は、常に売却を考えるタイミングです。安易に次も固定金利を選んだ場合、売却に至った際は、まとまった違約金を払わなければなりません。売却の可能性がある場合は、変動金利を選択するべきです。

● 5年後

売却によって利益が出る場合、物件の所有期間が5年を越えると「長期譲渡」となり、譲渡税(所得税+復興特別所得税+住民税)は20.315%と安くなります。所有5年以下の「短期譲渡」の譲渡税は39.63%ですから、大変に大きな差です。
なお、この「5年」とは、譲渡のあった年の1月1日が起点となるので注意してください。例えば、2012年3月に購入した物件を2017年5月に売却するケースは、実際の所有期間は5年を超えていますが、譲渡年の1月1日時点では5年以下(4年10ヵ月)となり短期譲渡になってしまいます。

● 10年後

10年を超えると物件の大規模修繕が射程圏内に入ります。大きな費用を投じて大規模修繕を行い物件の保有を継続するのか、最低限の修繕で様子を見るのか、まったく行わずに売却するのかなど、いずれを選択するのか、検討すべき時期です。
また、この頃には、ローン返済における金利分の減少や減価償却費の減少により、計上できる経費が少なくなります。そのため税負担が増えて、キャッシュフローが悪化することがあります。物件単独での収支はもちろんですが、事業全体での戦略も見直す必要があります。

余裕を持って、ゆったり売却

さて、売却にあたって、適正な売却価格はあるのでしょうか。
「少なくとも損をせずに売却したい」ということは誰もが望むことであり、そのためには「取得費+譲渡費用」が最低価格です。取得費には、購入・建築代金、購入手数料のほか、設備費や改良費なども含まれますが、すでに事業所得などの必要経費に算入したものは含まれません。
建物は減価償却費相当額を差し引いた金額です。また、譲渡費用は、おもに売却時の仲介手数料です。
適正価格の一つの考え方は、この最低価格に市場動向を加味したものです。さらに、値切られることを見越して、数十万円を上乗せするのも一案でしょう。
いい物件を購入し、順調に稼働させるだけでは、不動産投資で成功したとは言えません。売却という「出口」を通過して、初めて投資が完結するのです。少なくとも年に1回は変化する不動産の現在価値を確かめながら、出口を考える必要があります。
また、上述したような物件購入後の節目も売却を検討する機会です。資金繰りに困った売り手から安く買い、余裕を持って高く売ることは、不動産投資の一つの理想ですが、同様に、資産価値が落ちていく物件を早めに売る適切な損切りも、賢明な不動産投資なのです。