FinTechの次は“Real Estate Tech”。不動産テック企業の登場で何が変わる?

金融市場に比べ圧倒的にデジタル化が遅れていると言われてきた不動産市場。しかし近年では金融業界におけるFin Techの動きと同様に、不動産業界においても“Real Estate Tech (ReTech)”と呼ばれる不動産テック企業が登場し、注目が集まっている。
Real Estate Techの登場によって、不動産業界にはどんな変化が起きているのでしょうか?また、日本の不動産市場に変化は期待できるのでしょうか?

ベンチャーキャピタルも注目! Real Estate Techとは何か?

ここ数年、金融業界とテクノロジーの融合=Fin Techが、世界中で話題を呼んでいます。そして、最近、Fin Techに続く新たなイノベーションとして注目を集めているのが、不動産×ITの Real Estate Techとも呼ばれる不動産テックです。
欧米ではすでに Real Estate Techビジネスが大いに盛り上がりを見せていて、毎年3月にフランスのカンヌで開催される世界最大の不動産見本市MIPIMでは、2015年と2016年の2年連続で「 Real Estate Tech」がメインテーマに掲げられたほどです。 Real Estate Techビジネスの最先端を行くアメリカでは、2013年以降、 Real Estate Techビジネスを展開するベンチャー企業への投資額が急上昇しています。
これらの Real Estate Tech企業が得意とするのは、不動産に関するオープンデータ活用ビジネス、空き家や遊休地のシェアサービス、ビックデータを活用した不動産市場分析サービスなど、テクノロジーの力を最大限に生かしたサービスです。そして、ビジネスをけん引するプレイヤーのほとんどはIT業界出身者。昔ながらの保守的な不動産業界の枠や商習慣にとらわれない、自由な発想から次々と生み出される Real Estate Techビジネスの存在は、既存の不動産業界にとって1つの脅威となりつつあるのです。

ベンチャー企業の成功に見る Real Estate Techの可能性

Real Estate Techの代表格と言われるのが、今や全米トップの不動産検索サイトに成長したZillow社です。
Zillow社が不動産業界に起こした最大のイノベーションは、それまで業界内部に隠されてきた情報をオープンデータ化したこと。同社は全米1億件以上の物件情報を有し、そしてその物件に関するあらゆる情報(現在の推定価格、過去の価格の推移、過去の売買履歴まで)を一般に公開するサービスを展開。不動産市場の透明性を飛躍的に高めたことによって、ユーザーの圧倒的な支持を集めることができたのです。
また、同じくアメリカのSmart Zip社はテクノロジーを駆使してビッグデータを解析、今後半年から1年以内に売りに出されると予想される不動産の情報を不動産事業者向けに売り出すサービスを展開。従来のアナログ的な不動産マーケティングの手法に一石を投じたことで、大きな注目を集めています。
これらの Real Estate Techの登場は、不動産取引をより低コストで迅速にすることを可能にし、不動産関連業務を大幅に効率化するなど、従来では考えられなかったイノベーションを起こしているのです。

Real Estate Techは、日本の不動産業界を変えるか?

海外での Real Estate Techの台頭を受け、世界でも際立って不透明とされる日本の不動産市場でも日本版 Real Estate Techビジネスが次々に誕生しています。
特に目立つのは不動産会社を通さず売主自らネット上で物件を売り出す「おうちダイレクト」(Yahoo!不動産×ソニー不動産)、無店舗型不動産仲介サービス「Nomad.」(イタンジ)など、スマホアプリ系のビジネス。このほか、スマートフォンで家の鍵を開けられるスマートロック関連のビジネスも成長を遂げています。
こういった現状を見て日本版 Real Estate Techを「単なるネットマッチングサービスではないか、単に仲介のIT化に過ぎないのではないか」と考える向きもあるかもしれません。しかし、こういったビジネスが成熟していけば、日本の不動産市場にも破壊的なイノベーションをもたらす可能性は十分考えられます。
なぜなら、先のアメリカ・Zillow社の例にあるとおり、ネット上で多くの情報が公開されればされるほど、不動産業者と消費者との間にある「情報の非対称性」が解消され、業界側の優位性が縮小していくからです。
さらに日本ではオープンデータ活用の波も、 Real Estate Techの成長を後押ししています。国土交通省による不動産取引価格情報や不動産価格指数の公表など、官民によるオープンデータの整備が進みつつあり、すでにこれらのデータを活用した投資意思決定や都市開発事業を行う企業が出始めています。今後、こういったオープンデータをより効率的に活用する Real Estate Techが登場すれば、日本の不動産市場はよりオープンかつフェアで透明性の高い市場になっていくと分析する専門家もいます。
いずれにせよ、情報の囲い込みで収益を得て来た従来の不動産業者にとって、日本版 Real Estate Techの登場は1つの脅威となることは、間違いないでしょう。日本版 Real Estate Techは不動産市場に今後どのような変化を起こすのか。不動産投資にはどのような影響を与えるのか。変化の波に乗り遅れないためにも、引き続き Real Estate Techの動向から目が離せそうにありません。