「タワマン節税」への規制、本格化。 得をするのは誰だ?

価格の割に相続税が安く済むタワーマンションを節税目的で購入する、いわゆる「タワマン節税」。相続税の節税を狙う富裕層の間で一気に注目を集めましたが、ここにきて政府は新税制の導入を打ち出し、タワマン節税に歯止めをかける動きを見せています。
タワマン節税は、本当にここで終焉を迎えるのでしょうか?そしてタワマン節税の終焉で得をするのは、誰なのでしょうか?

そもそもタワーマンション節税とは?

まずは、タワマン節税の仕組みをおさらいしておきましょう。
タワーマンションとは、高さが60m、階数が20階を超えるマンションのこと。一般的に、タワーマンションでは眺望の良い高層階に行くほど一戸当たりの価格が高く、物件によっては、たとえ同じ面積であっても、高層階の部屋の価格が低層階の2倍以上になるケースも珍しくありません。
にもかかわらず、相続税の算定基準となる「評価額」は、同じマンションであれば部屋の階数や実勢価格に関係なく、すべて一律。なぜなら、現在の制度では、相続税の評価額はマンション1棟全体の評価額を各戸の床面積に応じて分割する方式で算出されるからです。
つまり、地上30階建てマンションの1階の部屋も最上階の部屋も、床面積が同じであれば、相続税の評価額は同じなのです。となると、たとえば、70平米の部屋を5,000万円で買って相続する場合と1億円で買って相続する場合の相続税が同じなら、1億円で買う方が相続税を安く抑えることができます。もちろん、現金で1億円を相続するよりも、ずっとお得です。ここに注目した節税のテクニックが、「タワマン節税」なのです。

2,300万円の相続税が400万円で済む!?

では、「タワマン節税」をすると、いったいどのぐらい得をするのでしょうか?
タワーマンションの実勢価格と評価額には、かなり大きな開きがあることが指摘されています。たとえば2014年に国税庁が20階以上のマンションのうち売買があった343戸を対象に調査したところ、マンションの相続税評価額は実勢価格の約3分の1にとどまっていることが判明。中には評価額の7倍近い価格で売却された物件もあったそうです。
ここでは1億円を相続する場合を例にとってみましょう。現金で1億円を相続した場合、基礎控除等を考えずに単純計算すれば、約2,300万円の相続税を納めることになります。一方、1億円で購入したタワーマンションの評価額が3,000万円なら、相続税は評価額の3,000万円に対して課されるわけですから、納めるべき相続税は約400万円で済みます。
相続税を支払った後で、実勢価格で売却すれば、手数料などを差し引いてもかなりの額の節税ができることになるのです。相続税対策に頭を悩ませる富裕層にとって、「タワマン節税」がいかにオイシイ節税方法だったのか、想像に難くありません。

2018年、高層階の固定資産税評価額引き上げへ

もちろん、こういった状況を国が野放しにしておくはずはありません。政府は2016年秋、2018年以降に引き渡す新築マンションのうち、20階建て以上のタワーマンションについて、高層階の相続税と固定資産税の評価額を引き上げ、低層階の税負担を軽くする方針を打ち出しました。
詳しい税制改正の内容はまだ公表されていませんが、たとえばタワーマンションの20階は1階の10%、30階は20%増しという具合に、物件の階数によって固定資産税評価額を増減する算出方法が導入される見込みです。
予定通り評価額が見直されれば、それに応じて決められる固定資産税額および相続税額についても高層階の負担が今より大きくなります。国税庁は「著しく不適当と認められる評価額は、国税庁の指示を受けて評価する」という異例の見解も示しており、すでに実勢価格をもとに課税されたケースも報告されています。
これらの改正案を盛り込んだ新税制がスタートすれば、「タワマン節税」のうまみが激減するのは間違いないでしょう。そうすると、これまで比較的好調だったタワーマンション高層階の売れ行き自体にも、暗雲が立ち込めるかもしれません。
一方「タワマン節税終焉」の恩恵を受ける人たちもいます。これまで高層階と同じ評価額に基づいて相続税を課されていた低層階の所有者たちです。物件にもよりますが、低層階については新税制の導入で従来よりも評価額が下がり、所有者の税負担が減ることも十分考えられます。また、今後税負担の増大が見込まれる高層階の物件ではなく、税負担が軽くて済む低層階の物件の購入を希望する人が増え、低層階の物件の人気・価格が上昇する可能性も考えられます。
いずれにせよ、今回の新税制導入によって、タワーマンション市場にどのような変化がみられるのか、それが日本の不動産市場全体にどのような影響を及ぼすのか、今後の動きから目が離せません。