巨大市場となるか?空き家管理ビジネスに注目

いまや日本の総住宅数の13.5%を占め、増加の一途をたどる空き家。管理されずに放置され老朽化した空き家は、地域社会や自治体にとって大きな悩みの種となっています。一方、不動産業界では空き家の増加をビジネスチャンスと捉える動きも広がっています。
空き家ビジネスにはどんなメリット・デメリットがあるのか改めて検証してみましょう。

平成29年度予算は約80億円! 国交省が空き家利活用をバックアップ

そもそも、なぜ空き家は増え続けているのでしょうか?
まず考えられる理由は、処分しづらい条件の家が増えていること。立地条件や建物自体の状態が良い家であれば、賃貸に出したり売却したりできるため、空き家になることはありません。しかし、そうでない家は処分ができないまま放置されることになります。そうするとさらに建物の状態が悪化し、ますます処分しづらくなるという悪循環が起きているのです。
税法上の問題もあります。空き家を解体して更地にすると固定資産税の負担が大きくなるため解体を先延ばしにしている…というケースもよくみられます。また、旧法にのっとって建てられた家を解体した場合、現在の建築基準法では以前ほど大きな家が建てられないことを理由に建て替えを断念するケースもあるようです。
また、解体や管理の費用が負担できないことを理由に解体せず、放置しているケースも多々あります。
いずれにせよ、こういった空き家を放置しておくと、町の景観を損ね、ゴミの不法投棄や犯罪の温床になるばかりか、地震などの災害発生時に倒壊して周辺住民に被害を及ぼす懸念もあるため、空き家対策は各自治体にとって喫緊に解決すべき課題となっているのです。
もちろん、自治体もこの状況に手をこまねいているわけではありません。最近では主に過疎化の進む地方都市で、空き家対策に取り組む自治体の動きが活発化しています。たとえば群馬県高崎市は平成26年度から「空き家緊急対策事業」を実施、空き家の所有者が建物や敷地の管理を業者に委託した場合の費用の半額(上限20万円)を市が負担するなど、独自の取り組みを展開しています。
こういった自治体の動きの背景にあるのは、平成27年の「空き家等対策の推進に対する特別措置法」施行。同法では、新たに市区町村が空き家対策計画を策定した場合は、国と県がその計画を支援することが定められました。また国交省は平成29年度の予算で空き家対策推進費に約80億円を確保、空き家の利活用をバックアップすることになっています。

空き家管理ビジネスのメリット・デメリット

こういった動きをビジネスチャンスと捉え、動き始めた不動産業者も出てきています。国や自治体による取り組みが起爆剤となって需要が伸びることをにらみ、空き家管理に特化したサービスを打ち出しているのです。
特に熱心なのが、地域に密着した中小の不動産業者です。こういった業者が狙うのは、空き家管理を通じてさらに深く地域に溶け込み、既存の売買賃貸仲介ビジネスを活性化させること。また、空き家管理を「地域貢献」の一環として行うことによって、地域での自社のイメージアップにつなげたいという思惑もあるようです。
つまり不動産業者が空き家管理ビジネスを行うことには、次のようなメリットが考えられるのです。

◯空き家管理ビジネスのメリット

・空き家の持ち主を見込み客にできる(→管理を通じて客とコネクションができ、売買や賃貸の相談を受けやすい)
・行政の関連部署とのネットワークが築きやすい
・地域貢献に積極的な企業として地域からの信頼度が高まり、イメージアップにつながる
こういったメリットがある反面、空き家管理ビジネスには次のようなデメリットも指摘されています。

×空き家管理ビジネスのデメリット

・利益が薄い(高額の管理費を設定すると顧客が増えにくいので、管理費は安く設定せざるを得ない)
・件数が少ないとビジネスとして成り立たない
・本来のビジネス(不動産売買・賃貸)に結びつけるまでに時間がかかる、あるいは結びつく可能性が不透明
・空き家の持ち主によって事情が異なるので、画一的なビジネスモデルでは対応しづらく、持ち主一人ひとりのニーズに応じた臨機応変なサービスが求められる
確かに手間暇かかる仕事内容の割には利益が薄いので、ある程度のスケールメリットがないと本格的なビジネスモデルを確立するのは、難しいのかもしれません。その意味で「空き家管理は、大企業にしかビジネスにできない」との声も聞かれます。

気になる空き家管理ビジネスの可能性は?

ただし、空き家管理ビジネスにはもう1つの側面があります。それは、特別な資格が不要で初期費用があまりかからないため、異業種からの参入がしやすく、未経験の個人でも比較的始めやすいビジネスであることです。すでに、空き家管理を通じて地方創生・地域おこし・過疎地への移住促進等に取り組むNPOや個人事業主も登場しています。
あるNPOでは各地の不動産業者と連携、すでに全国80を超える自治体で空き家管理サービスを展開、全国に空き家情報を発信すると同時に、空き家を探す人とのネット上でのマッチング事業を行っています。こういった全国規模での空き家ネットワークが確立すれば、従来、地元地域だけで共有されていた空き家情報が全国に共有され、その分、空き家売買や賃貸のチャンスも広がっていくことが期待されています。
また、既存の不動産業者同士のネットワーク活用も進んでいます。不動産業者の多くが加盟する「全国宅地建物取引業会連合会」では、独自の空き家管理マニュアルとして「空き家管理ビジネスサポートツール」を作成、加盟する不動産業者に提供を始めました。今後、空き家情報や管理ノウハウの共有が進めば、空き家管理ビジネスに乗り出す業者がますます増加していくかもしれません。
こういった民間の動きを受けて、国土交通省では全国の自治体が運営する「空き家バンク」の一元化や、固定資産税部局による空き家オーナー情報を不動産業界に提供するための検討を始めています。一連の動きが加速すれば、空き家管理が巨大なマーケットに成長する可能性は十分にあると言えるでしょう。
では、誰が空き家管理ビジネスの勝者になるのでしょうか?
一部で指摘されているように、スケールメリットを活かして大企業がシェアを独占する可能性も、もちろん考えられます。
しかし、空き家管理は相談~管理受託から売却・賃貸等に至るまでかなりの時間と手間暇がかかることを考えると、地元自治体・コミュニティと地元不動産会社の連携が欠かせないことも事実。地元密着型の中小の不動産業者にも勝機は十分にあると言えるでしょう。実際にどちらがこのマーケットで勝者になるのかは、まだわかりません。
1つだけ確かなことは、勝者になるためには自治体・コミュニティと協力関係が欠かせないということ。積極的に地元自治体やコミュニティと交流・協力し、ゆるぎない信用を築いていくことが、成功への第1歩と言えそうです。